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  • 【フットサルの楽しみ方】 第2回

  • 2015/10/15
  • サッカーとフットサルは似て非なるスポーツである。ゆえに、サッカーとは違う見方をした方がより楽しめる。フットサルの魅力をお伝えするこのコラムの第2回では、サッカーとの比較や関連に触れつつ、フットサルの見どころをいくつか紹介してみたい。

    まずは技術だ。前回も少し触れたが、フットサルの基礎中の基礎である技術に“足裏トラップ”というものがある。昔のサッカー選手たちが、ミスが増えるため、コーチから「やってはダメ」と口酸っぱく注意されていた、あのトラップである。

    フットサルのボールはローバウンド使用であまり弾まないため、相当に強いパスでも足裏で触れてしまえばピタッと止めることができる。20m×40mのコートの自陣か敵陣で展開されることがほとんどのフットサルの試合は、10m×20mの狭いスペースに9~10人がひしめく接近戦。それゆえに一つのコントロールミスはボールを失うこととほぼ同義で、足裏トラップはミスを減らし攻撃を円滑に進めるための不可欠の技術となっている。

    そして足裏で止めたボールをそのまま足裏で動かす“なめる”という技術が生まれ、フットサルブラジル代表のレジェンドであるファルカンの“ファルカンフェイント”のようなドリブルテクニックも数多く派生してきた。足裏に始まり足裏に終わる、とまでは言わないが、フットサルを語る上でまず触れなければいけないのが、足裏トラップなのだ。ボールを足裏トラップで止めた次の瞬間、何ができるかでその選手の能力はわかるといってもいいだろう。

    近年ではこの足裏トラップがサッカー界での地位を向上させ、今や基本的な技術として認められるまでになった。これにはかつてバルセロナで活躍したロナウジーニョをはじめ、ブラジル人スター選手たちの活躍の影響が大きい。彼らの華麗なボールさばきは、フットサルの技術を応用したものだからだ。

    現在は中国リーグで活躍するブラジル代表のロビーニョなどは、ファルカンを師匠と公言しているほど。身近なところで言えば名古屋グランパスの田中マルクス闘莉王(ブラジル出身)のプレーにも、フットサルのエッセンスが感じられる。

    実はブラジルでは子供の頃、フットサルに似たサロンフットボールからプレーを始める選手が多く、そこからサッカーの道に進む者、フットサルの道に進む者という流れが確立されているという。今後の日本でも、この育成の流れが生まれれば両競技の発展につながるのではないかと思う。

    次に戦術。狭いコートでスピーディーな展開、ゴールは一つとなれば、自ずと戦術は多様化し、細分化していく。同様の特性を持つ種目であるバスケットボールでは、選手の動きをある程度決めてシュートチャンスを生むセットプレーが非常に発達しているが、フットサルもそうだ。

    以前、名古屋オーシャンズの北原亘が言っていたことには、「チームで50パターン、僕は日本代表でもプレーするので、そこでも50パターンはありますね」。流れの中でのセットプレー、サイドからのキックインでのセットプレー、コーナーキック、そしてフリーキック。トップクラスの選手たちはそれらの選択肢を状況によって使い分け、その中でも変化をつけて試合を優位に進めているわけだ。サッカーにおけるセットプレーとは主にコーナーキックとフリーキックのパターンのことを指すため、フットサルにおける細分化ぶりがわかると思う。

    試合終盤、ビハインドを追う中でGK(ゴレイロ)をフィールドの選手に交代させ、5人全員で攻める“パワープレー”もその一つ。最近ではパワープレーをボールキープの目的で使うチームも現れ、その用途も幅広くなってきた。フリーキックなどでのトリックプレーも、サッカーに比べてボールコントロールが安定しているために効果は高く、強豪との対戦における切り札としての破壊力も抜群である。

    セットプレーもパワープレーも共通して言えるのは、どこかに狙いどころ、崩したいところがあり、そのための選手の動きやボールの動きがあるということ。得点から逆算されたそのコース取りはどこだと考えながら見ていれば、試合観戦の見どころも増えていくはずだ。

    ここに書いたのはほんのさわりのそのまた一部分。フットサルの技術と戦術はさらに何十倍も奥深い。しかし目の前で展開される試合にこういった要素が存在することを理解していれば、フットサルはもっと面白くなる。

    (スポーツジャーナリスト 今井雄一朗)
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