大舞台でも物怖じしないハートの強さ
20歳のシューター・平下愛佳に注目!
世界最高峰の舞台で堂々の日本代表デビュー
鮮烈な代表デビューだった。今年9月に行われた「FIBA女子バスケットボールワールドカップ2022」(W杯)の初戦・マリ戦。チーム最年少の平下愛佳選手は、3ポイントシュート5本を含むチーム最多の17得点を挙げて勝利に貢献した。中京テレビの『アス友』で、“バスケ芸人”の麒麟・田村裕さんが「初舞台がM-1で、そこで優勝するくらいとんでもないこと」と例えた活躍について、「自分は初出場だったので、最初は多分全く警戒されていなくて。渡嘉敷来夢選手などにディフェンスが寄っていたので、自分がノーマークになるパターンがすごく多くありました。合宿中からシュートの調子が良かったので、自分のタイミングで打てば入るかなと思って、(シュートを)打っていました」と、平下選手はこともなげに振り返った。
大舞台でも緊張なし。「周りがどれだけ騒いでいても自分のリズムを崩さない。思い通りにいかない時も最終的に自分のリズムに戻れるところがすごい」と、トヨタ自動車アンテロープスの先輩である馬瓜ステファニー選手と山本麻衣選手も絶賛する大物ぶりを発揮する平下選手。W杯は1勝4敗Group Bの5位で予選ラウンド敗退に終わったが、世界最高峰の舞台からかけがえのない財産を持ち帰ってきた。「今まで日本でやってきた自分のプレーは無駄じゃなかったと思えました。3ポイントシュートはすごく武器になるし、これからも自信を持ってやっていけると感じました。最後の方は3ポイントを警戒されてなかなか打てなかったので、今後はドライブなどいろいろな得点の絡み方をしていきたいです」
クイックリリースで放つ3ポイントシュートが新たな武器に
愛知県長久手市出身の平下選手は、小学3年生の終わりに地元のミニバスチームに入団。本格的にバスケに取り組むようになったのは、クラブチーム「ポラリス」に入った中学生からだ。顧問として全国中学校バスケットボール大会に何度も出場した経験を持つ大野裕子コーチの下、日本一を目標に毎日バスケに明け暮れた。中学2年生の時に全国ジュニア選手権大会で優勝。「全国大会の優勝を経験したことで、高校でも全国レベルでやりたい」と強豪・桜花学園高等学校へ進学する。
全国からトップレベルの選手が集まる桜花学園で、平下選手は1年生から先発に起用され、3年生の時にはキャプテンとしてチームをインターハイ、国体、ウインターカップの3冠に導いた。基礎を徹底的に磨き、「高校生では感じられないようなプレッシャーの中で3年間過ごしたことで、メンタル的にも強くなった」と話す。また、高校1年生の時にはU16日本代表に初選出された。U16アジア選手権、U17、U19世界選手権を経験し、「身長の大きい選手に対して、日本のスピードは世界でも通用する。外国の選手と戦うのも楽しいな」と感じ、日本代表で活躍したいという新たな夢を抱いたという。
Wリーグ19-20シーズンに、アーリーエントリーでトヨタ自動車アンテロープスに加入。憧れの存在だった水島沙紀さん(19-20シーズンに引退)、栗原三佳さん(20-21シーズンに引退、現サポートスタッフ)と共にプレーすることで多くを学んだ。「高校まではゆっくりシュートを打っていて、Wリーグに入ってからシュートを速くしたので、栗原さんの速いモーションの3ポイントシュートをお手本にさせてもらいながら練習していました」。バスケだけに集中できる環境で自主練習を重ね、シューティングの数を高校時代から倍以上に増やし、栗原さん直伝のクイックシュートを自らの武器にしていった。
昨シーズン、Wリーグ3ポイントシュート女王に輝いた三好南穂さん(現サポートコーチ)の存在も、思い切りの良いプレーにつながった。「シュートが入らない時でも、『どんどん打ち続ければいい』『次は入るから大丈夫だよ』と声をかけてくださるので心の支えになっていました。三好さん、栗原さんとシューターの気持ちを分かってくれる先輩がいたのは本当にありがたい環境でした」。こうした積み重ねは数字としてはっきりと表れた。20-21シーズンは1試合平均22.9 %だった3ポイントシュート成功率が、翌シーズンは42.2 %に向上。今シーズンは相手チームのマークが強まる中でも成功率38.2%(11月6日現在)と安定した活躍を見せている。「試合をしていても、速い流れの中で結構自分のシュートが打てているという感覚があります」と手応えを感じているようだ。
目下の目標であるパリオリンピックまであと2年。平下選手は、「まだまだ成長しなければいけないところがたくさんあるので、3ポイントシュートだけでなくドライブもジャンプシュートも、もっともっと磨いてパリオリンピックの代表に選ばれるように精一杯頑張っていきたいと思います。また、3連覇を目指しているトヨタ自動車アンテロープスの試合を観るため、ぜひ会場に足を運んで応援していただけたら嬉しいです」と話す。
自分のリズムを大切にしつつ、着実に成長を重ねていく彼女の姿を見届けていきたい。
PROFILE
平下 愛佳
Aika Hirashita
ひらした あいか。2002年生まれ、愛知県長久手市出身。ポジションはスモールフォワード。小学3年生からバスケを始め、中学2年の時に全国大会で優勝。桜花学園高等学校では1年生から主軸としてプレーし、3年の時にはキャプテンとしてチームを3冠に導く。Wリーグ19-20シーズンにアーリーエントリーでトヨタ自動車アンテロープスに加入。年代別日本代表を経て、2022年W杯でフル代表デビュー。
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