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2024/12/06 特集記事

氷上のニューヒロイン 上薗恋奈

 「フィギュアスケート王国・愛知」にまた一人、新しいヒロインが誕生した。
 14歳でありながら、シニア選手に勝るとも劣らない表現力を備える上薗恋奈選手だ。
 宇野昌磨さんを育てた樋口美穂子さんの秘蔵っ子としても注目を浴びる彼女が、“今”にかける想い、今シーズンの目標について語った。

卓越した表現力を備えた
フィギュア王国・愛知の新星

 「Age is just a number(年齢なんてただの数字にすぎない)」。彼女の演技を観ていると、そんな言葉を思い出す。
 フィギュアスケート界に彗星のごとく現れた上薗恋奈選手。2022年の全日本ノービス選手権のノービスAで優勝すると、ジュニアデビューを果たした昨シーズンには、初めての国際大会となったジュニアグランプリ(JGP)シリーズのトルコ大会でいきなり表彰台へ。続いて出場したポーランド大会では早くも初優勝を飾っている。その後も快進撃は続き、JGPファイナルで銅メダルを獲得。世界ジュニア選手権でも銅メダルに輝いた。
 さらに最年少13歳での出場となった全日本選手権では合計得点を自身初の200点の大台に乗せ、実力者揃いのシニア選手を抑えて表彰台まであと1・49点に迫る4位に食い込んでいる。
 「全日本選手権では最終グループに入ることができて、練習や試合ができたのはすごく勉強になりました。シニアには上手な選手がたくさんいて、スケーティングや音の取り方が全然違い、自分の演技に生かせる部分が多く見つかりました」と、上薗選手は振り返る。彼女が脚光を浴びた理由は、中学1年生で全日本4位という実績だけではない。大人顔負けの妖艶な表情や、長い手足を生かした細やかな振り付け、一瞬で氷上を自分の色に染め上げる抜群の表現力に多くのスケートファンが魅了されたからだ。演技中は彼女が中学生であることを忘れてしまう。
 上薗選手がジャンプなど確かな基本スキルと圧倒的な表現力を兼備しているのは、伊藤みどりさんや浅田真央さんら多くのトップスケーターを輩出したグランプリ東海で育ったこと。そして宇野昌磨さんを育て、指導者であると同時に振付師の顔を持つ樋口美穂子さんに師事していることとは無縁ではないだろう。
 「フィギュアスケートをしていて楽しいと感じるのは、スピードを出して滑って、綺麗で気持ちのよいジャンプが跳べたときです。ただ、ジャンプは重要ですけど、それだけでは人を感動させる演技にはなりません。美穂子先生には観ている人に感動を与えることを大事にするようにと教えていただいています。フィギュアスケートの魅力はあの大きなリンクを独り占めして、たくさんの人に演技を観てもらえるところ。目標としている浅田真央さん、羽生結弦さん、キム・ヨナさんのように、何か一つでも観ている人の心に響くものが届けられる選手になりたいです」。

憧れの浅田真央さんが演じた『鐘』に挑む

 愛知県北名古屋市出身の上薗選手がフィギュアスケートを始めたのは5歳のとき。愛知では年始の恒例行事となっているアイスショー「名古屋フィギュアスケートフェスティバル」を家族で観に行った際、浅田真央さんから手を振ってもらったことがきっかけだ。「私も真央さんのようになりたい」と、スケート教室に入ったという。「始めた頃はとにかく楽しくて。ここまで大きな大会に出られるとは想像していませんでした。小さい頃はどんどんスピードを出して転んで、どんどんジャンプを跳んで転んでの繰り返しでした。でも楽しい気持ちの方が大きくて、痛いのはもう慣れちゃった感じですね」。
 練習熱心で、休むのは試合が終わった次の日だけ。年末年始も休みは大晦日と元日のみ。フィギュアスケートだけでなく、体操や新体操、ダンス・バレエ、ピアノなどに親しんできたことも表現者としての彼女の素養になっている。
 昨シーズンの躍進を受け、ますます注目が高まる今シーズン。上薗選手はさらなる高みを目指して“難題”に挑んでいる。フリースケーティングで、目標でもある浅田真央さんが2010年のバンクーバーオリンピックで銀メダルを獲得した名プログラム、「セルゲイ・ラフマニノフの『鐘』」を演じているのだ。14歳には滑りこなすのが難しい曲だが、それでも上薗選手は、「憧れの真央さんが演じた曲ということですごく嬉しいです。とても難しいですが、美穂子先生がこの曲を私にくださったことには意味があると思うので、しっかりと滑りきりたいです」と、前向きに取り組んでいる。
 このプログラムで表現したいのは「希望」だという。「前半は戦争や戦うイメージで、後半は自分の希望や夢に向かって、それを掴むことをテーマに踊っています。真央さんとは違う、自分の『鐘』を表現できるようにもっと練習したいと思います」。
 今シーズンのJGPシリーズはチェコ大会、スロベニア大会共に4位となりファイナル進出を逃した上薗選手。「悔しい気持ちはあります。でもまだ全日本ジュニア選手権が残っているので、そこでJGPシリーズで出しきれなかった演技をしっかりと見せて、全日本選手権に行けるように頑張りたいです。今の課題はスピンです。綺麗に早く回れるように練習していきたいと思います。それから、指先までしっかりと綺麗に見せることや、間の取り方、音の取り方など表現の部分ももっと勉強していきたいです」と、悔しさをバネに飛躍を誓う。
 2025年には、名城公園の北園に誕生する「IGアリーナ」でGPファイナルが開催される。「地元愛知県で大会が開催されることはすごく嬉しいです。来年のJGPシリーズに出場できるように、オフシーズンも含めてこれからしっかりと練習したいです。まだ完全に成功していないのですが、トリプルアクセルも練習しているので、成長した自分を見せたいです」と、大会を心待ちにしている。
 「皆さんに感動していただける演技ができるように、そして自分の演技が世界中の人に届くように」。14歳の新星の挑戦は、まだ始まったばかりだ。

PROFILE
上薗恋奈
うえぞの れな。2010年6月生まれ。北名古屋市出身。5歳の頃からフィギュアスケートを始め、後にグランプリ東海にて樋口美穂子さんに師事。現在は樋口さんが立ち上げたLYSフィギュアスケートクラブに所属。2023年にジュニアグランプリファイナル3位、2024年には世界ジュニア選手権3位に輝き、未来の女王候補として注目を集める。趣味はピアノ演奏、メイク、ショッピング。『クレヨンしんちゃん』の大ファンでもある。


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