愛知県振興部スポーツ振興課
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“成長の階段に終わりはない”
女子ソフトボール界のスピードスターが生きる道

自他共に認める俊足を活かし、「出塁率No.1」を目指す

 新型コロナウイルス感染拡大の影響により、3月からの前半戦が中止となっていた日本女子ソフトボールリーグが、9月5日(土)に後半戦が開幕を迎えた。「今まで当たり前にできていたことができなくなった中で、ソフトボールをできる喜びと感謝の気持ちを持って開幕を迎えました。ソフトボールを通じて、ワクワクドキドキや感動を伝えられるように意識してプレーしたいです」と笑顔を見せるのは、豊田自動織機シャイニングベガの江口未来子選手。ソフトボール女子日本代表の宇津木麗華監督から、「日本で一番速い」と賞されるほどの俊足の持ち主で、東京2020では代表チームの1番打者候補として期待されている。
 「私の一番の魅力は足の速さだと思うし、自分でも女子ソフトボール選手の中で一番速いと思っています。その足で相手にプレッシャーを与えるためには、塁に残らないと意味がない。今シーズンは塁に残ることを念頭に置いてやっていきたいです。チームの突破口を開く役割を果たしていければ」。自身の武器に話が及ぶと、自然と言葉に力が込もった。
 遡れば、ソフトボールとの出会いも自慢の俊足がもたらした。「小学校の運動会で私が走っている姿を見た父兄さんが、“ソフトボールをやらない?”と誘ってくださって、スポーツ少年団のソフトボールチームに入団しました」。小学6年生の時にソフトボールの全国大会に出場し、小学生の日本代表に選ばれたことで、「ソフトボールを極めたい」という気持ちが芽生えたという。決めたら一直線。稲沢市立稲沢中学校、東海学園高等学校のソフトボール部で研鑽を積み、高校3年生の全国高等学校女子選抜大会で優勝。高校卒業後は地元愛知を拠点とするデンソーブライトペガサスに入団した。

自身を見つめ直すことで精神的な成長を遂げる

 U19代表、U24代表に招集されるなど、順調にソフトボールのキャリアを積んでいるように見えた江口選手だったが、2016年、「成長の限界を感じて」現役生活にピリオドを打つことを表明する。「これ以上伸びないだろうと、ソフトボールにおける成長の限界を自分自身で勝手に決めてしまって……。自分を成長させるために新たな世界に行ってみたいと引退を決意しました」。
 奇しくもそんな折、江口選手の俊足を見込んだ日本代表の宇津木監督からラブコールが届く。「初めて日本代表に選出されたことで、自分で勝手に限界を決めてしまうのではなく、代表チームという新たな場所で成長するという選択肢もあるのではと考え直しました。日の丸を背負うという重さを感じながら、一度しかないチャンスにチャレンジしてみようと、ソフトボールへ戻ることにしたんです」。
 上野由岐子選手、山田恵里選手らスター揃いのチームに加わった当初は、周囲のレベルの高さに圧倒された江口選手。「劣等感じゃないですけど、何をしていても自分に自信が持てなかった。4年後のオリンピックのメンバーにもきっと選ばれないだろうなと、そこでも勝手に思ってしまいました」と明かす。しかし、金メダルを目指すメンバーと共に過ごすうちに江口選手のマインドは劇的に変化していく。「人と比べたり、競ったりするのではなく、自分にフォーカスを向けるように変わりましたね。それまでは、自分自身が楽しまないと観ている人もつまらない。だから“楽しくソフトボールをやろうぜ!”というタイプだったんですけど、日本代表として世界のトップチームを相手に戦う中で、壁にぶつかりながらも色々なことにトライしていくことの中に楽しさを見出すようになりました。今はソフトボールをより深いところで楽しめていると実感しています」。
 2018 JAPAN CUP 国際女子ソフトボール大会。1番打者に起用された江口選手は、2試合連続でホームランを放つなど躍進。優秀選手賞を獲得し、一気にブレークを果たす。「ものすごく緊張していたんですけど、その緊張感の中で、楽しむ気持ちを持てたことが結果に繋がりました。ソフトボール人生で最高の瞬間でしたね」と誇らしげに笑う。さらに2019年5月に行われたアジアカップでは盗塁王に輝くなど、機動力を活かした“スモールソフトボール”に取り組む日本代表で、俊足巧打を武器に東京2020スタメンの座へと近づいていった。

1日1日を大事に取り組んだ先にある理想の道

 東京2020でソフトボールは3大会ぶりに正式種目に復帰。日本代表は初めて金メダルを獲得した北京オリンピックに続く “五輪連覇”を期待されている。しかし、突如として世界中を襲った新型コロナウイルス感染拡大は、スポーツ界にも大きな打撃を与え、目標としていた東京2020も延期に。新型コロナウイルス感染拡大の影響で思うように練習ができない日々は、江口選手にソフトボールについて、人生について考える時間を与えた。
「これまでは日本代表のメンバーに選ばれなきゃという気持ちだけが強すぎました。でも、このコロナ禍に『選ばれることを目標にしていては、その先の金メダルまで行くことはできない。今自分がやるべきことに対してどれだけ頑張れるか。自分の理想に近づくために細かい目標をたくさん置いて、1日1日に取り組んでいくことが大事だ』と考えるようになりました。そうやって取り組んでいった結果、日本代表のメンバーに選ばれて、金メダルという道につながったら嬉しいですね」。 いかにも「今を生きる」を座右の銘とする江口選手らしい境地だ。2019年に豊田自動織機シャイニングベガに移籍し、今シーズンは3試合を終えて打率4割超、出塁率5割という活躍を続けている江口選手。「足の速さももっともっと追求したい。バッティングでは長打も打てて小技もできるのが目標ですが、特に小技を中心に、もっとバットと打球をコントロールできるような能力をつけたい」と目を輝かせながら理想を語る。今を積み重ねた先には、どんな未来が続いているのだろうか。理想に向かって日々邁進する江口選手の今後に注目したい。

PROFILE
えぐちみきこ。1991年生まれ。愛知県稲沢市出身。小学4年生よりソフトボールを始める。東海学園高等学校3年生の時には春の全国高等学校女子選抜大会で優勝を経験。2009年にブライトペガサスに入部し、2019年にはシャイニングベガに移籍。ソフトボール女子日本代表の1番打者最有力候補として大きな期待が寄せられている。

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2020 / SUMMER vol.25

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