愛知県スポーツ局スポーツ振興課
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進化を続ける女子バスケの新エース
赤穂ひまわりの溢れる向上心

©デンソーアイリス

新生日本代表を「プレーで引っ張る」

 東京2020で銀メダル獲得の快挙を達成した女子バスケットボール日本代表。アシスタントコーチとしてその快挙を支えた恩塚亨氏を新たなヘッドコーチ(HC)として迎え、新生日本代表チームは順調な船出を切った。
 初陣となったのは昨年10月の「FIBA女子アジアカップ」。若手主体で挑んで5連覇を達成した。今年2月に大阪で行われた「FIBA女子バスケットボールワールドカップ2022予選トーナメント」では1勝1敗の2位で終え、今年9月にオーストラリアで開催されるワールドカップ本戦への出場権を勝ち取った。
 その新チームのエースとして、日に日に存在感を増しているのが赤穂ひまわり選手だ。東京2020で不動のスターターとして活躍した23歳は、あと一歩届かなかった世界一へチームを導くため、その先頭を力強く走っている。アジアカップでは、「チーム内で代表経験が上の方だったので、これまで先輩たちがやってくれていたように引っ張っていくことを意識したんですけど、今思うとそんなに意識する必要もなかったかなと。考えなくてもいいことを考えてしまったり、立場が変わったりして、すごく大変でした」と気負いすぎて苦しんだという。それでも、チームとしては5連覇、個人としてもMVP選出と結果を残したことで自信を深めた。

 ワールドカップ予選でも、ひまわり選手の「プレーで引っ張る」という姿勢は変わらなかった。髙田真希選手、渡嘉敷来夢選手ら経験豊富な“先輩たち”が加わったことで不要な力が抜け、より高いパフォーマンスを発揮した。「やっぱり悩んだりするとダメで……。オリンピックでも積極的に攻めている時はいいプレーに繋がっていたので、ミスを減らしつつも、ミスを恐れず積極的に行かなきゃと思っています」。得意とするドライブだけでなく、3ポイントシュートも7本中6本成功と高確率に沈めて平均14.5得点をマーク。オフェンスだけではなく、平均身長が7cm以上高い相手に対して要所でのリバウンドや豪快なブロックショットで対抗し、ディフェンス面でも奮闘した。貢献度を表す「エフィシェンシー」ではチームトップ(平均20.0)。同級生の馬瓜ステファニー選手(トヨタ自動車アンテロープス所属)と共に大阪会場の大会オールスターファイブ(ベスト5)に選出された。

©デンソーアイリス


日本一に向けて「毎試合ダブルダブル」が目標

 代表戦ウィークでの中断を経て、約1カ月ぶりに再開したWリーグ2021-22シーズンもいよいよ終盤戦に突入。ひまわり選手が所属するデンソーアイリスは、就任2年目となるマリーナ マルコヴィッチHCの下「日本一」を目標に掲げ、開幕から15連勝するなど躍進を見せている。「40分通して激しいディフェンスからスティールをガンガン狙うオフェンスを、今年も継続して突き詰めています」とひまわり選手が話すように、好調を支えるのは失点数リーグ4位(平均62.8点)の堅守とリーグトップのリバウンド(平均43.2本)だ。
 特にリバウンドは髙田選手(平均9.29本)、ひまわり選手(平均7.94本)、ひまわり選手の姉である赤穂さくら選手(平均6.44本)と、トップ10に3人がランクイン。ゴール下の髙田選手やさくら選手だけでなく、外のポジションから飛び込んで奪うひまわり選手のリバウンド、そこから一気に繰り出す速攻が、デンソーアイリスの大きな強みとなっている。「私が3番ポジション(外回りのポジション)で出ることによってミスマッチが生まれるし、外の選手がリバウンドに絡むことによって絶対にセンターの負担は減ります。むしろ、リバウンドに絡まないのはもったいないじゃないですか。(リバウンドに)行かない理由がないので、そこは意識しています」。

 これまでのデンソーアイリスは髙田選手の存在感が大きすぎるが故に、大事な場面で任せてしまう傾向が見られた。今シーズンも髙田選手はリーグトップの平均20.79得点を挙げて大黒柱にふさわしい活躍を続けているが、ひまわり選手をはじめ、本川紗奈生選手ら積極的にチームを引っ張る選手が増えていることがチームの強度を高めている。「リツさん(髙田選手)がドーンと中心にいることは必ずしも悪いことだとは思っていません。ですが、おんぶに抱っこになるのは良くないので、“リツさんに頼る部分をもっと少なくしていかないと”とは思っています。去年よりもみんなが“自分がやる”という気持ちでバランス良くプレーができていると感じています」とチームの変化に手応えを感じている。
 マリーナHCからは常々「もっとリーダーシップを持ってプレーしてほしい」と求められているというひまわり選手。平均10.11得点・7.94リバウンド・2.33アシストと好パフォーマンスを見せているが、「自分のやるべきことをしっかりやれば、毎試合ダブルダブル(1試合で得点、リバウンド、アシスト、スティール、ブロックショットのうちの2つを2桁記録すること)はできるのかなと思っています」とさらりと話す笑顔が頼もしい。
 彼女のポテンシャルを考えれば十分に狙える数字ではある。しかし今シーズンはここまで得点とリバウンドの両方で2桁を超えているのは渡嘉敷選手のみで、けして簡単なことではない。それだけ高いモチベーションで貪欲に今シーズンに挑んでいることを伺い知れる。自分の役割を全うした先に日本一が待っている。そのことも重々承知している。


一過性の人気にならないためにも結果が大事

 高卒ルーキーとしてデンソーアイリスに加入し、愛知で暮らし始めて早5年が経った。プライベートでは、刈谷ハイウェイオアシスにある「天然温泉かきつばた」がお気に入りで、よく訪れるというひまわり選手。食事についても尋ねると、「寮で3食出るので、あまり愛知らしいものを食べられていないんです。でも、寮のご飯で赤味噌は良く食べています(笑)」と、愛知のグルメはまだほとんど未体験のようだ。
 そんなひまわり選手が、愛知への思いを語ってくれた。「愛知県はスポーツが盛んで、私たちのホームタウンの刈谷市だけでもバスケチームがたくさんあります。刈谷市で試合がある時はいつも満員になりますし、応援していただいているとひしひしと感じながらいつもプレーしています。特に東京2020の後は、注目していただいているのを実感しています。この盛り上がりを一過性のものにしないためにも、結果を残し続けて、もっとバスケで愛知、そして日本を盛り上げていきたいです」。
 エースとして目覚めたばかりか、リーダーとして周囲のことにも気配りを見せるひまわり選手。今後何年も女子バスケットボール界を牽引していくことが期待される彼女だが、まずはWリーグでの初優勝、そして2024年のパリオリンピックで宿敵アメリカを破って金メダルを奪取することに期待したい。

記事内のスタッツは3月4日(金)現在のものです。

©デンソーアイリス
PROFILE
あかほ ひまわり。1998年生まれ。石川県出身。デンソーアイリス所属。ポジションはスモールフォワード。小学3年生からバスケットボールを始める。千葉県の中学校に進学した後、昭和学院高等学校ではインターハイ、国体、ウインターカップで準優勝を経験。中学3年生時にU16 日本代表入りし、各年代別代表を経て、2018年に日本代表に初選出。東京2020では全試合に先発して銀メダル獲得に貢献。同年のFIBA女子アジアカップでは5連覇達成の立役者となり、MVPに輝いた。姉のさくら選手はデンソーアイリス、双子の兄・雷太選手はB1リーグの千葉ジェッツで活躍中。




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