抱く理想は「自分が満足いく演技」
新体操・竹中七海のパリに向けた新たな始まり
「自分たちの演技をミスなくやり切る」ことが課題
新体操日本代表のフェアリージャパンPOLAが、新体制の下で2024年のパリオリンピックを見据え、新たなスタートを切っている。『アス友 パリ五輪まで2年!再始動SP』(7月31日に中京テレビにて放送)の収録では、フレッシュな演技を披露して番組出演者の喝采を浴びたが、その中でも注目したいのが、新チームの中枢を担う竹中七海選手だ。
新キャプテン・鈴木歩佳選手と共にオリンピックを経験した竹中選手は、若い新チームを支える役割も担う。「今までは自分のことだけを考えていればよかったのですが、これからはそうもいきません。鈴木キャプテンをサポートしつつ、一緒にチームを引っ張っていかないといけない立場なので、メンバーを盛り上げていく声かけは練習時から意識するようにしています。特に大事なのは、苦しい時、踏ん張らなきゃいけない場面ですね。“ここから頑張っていくよ”という声かけがチームを奮い立たせることに繋がるので、積極的に声を出すようにしています」と、年長者らしい頼もしさを見せる。
4月から今シーズンが始まり、すでにいくつもの国際大会を経験しているフェアリージャパンPOLA。中でも初戦のソフィアW杯は、新チームで迎える初めての国際大会とあって気を揉んだという。「新チームが世界からどう評価されるのか不安もあったのですが、総合で4位、種目別ではメダルを獲得(フープ5で銀メダル、リボン3・ボール2で銅メダル)することができ、大きな自信になりました。ただ、ミスはまだ多いですね。その後も、順位に影響するようなミスをする大会が続いたので、まずは自分たちの演技をミスなくやり切ることが課題です」と、表情を引き締めた。
中学2年生で、フェアリージャパンPOLAの練習生に
自分の演技をやり切って評価されることが、竹中選手の昔からの目標だという。「過去には納得いかない演技でメダルをもらえたこともあったのですが、全然嬉しくなかったんです。私はやはり自分で満足のいく演技ができなければダメ。勝つことがすべてじゃないんです」と、言葉に力を込める。
そんな竹中選手が新体操を始めたのは5歳の時。両親に地元のスポーツセンターに連れていかれて、いろいろなスポーツを体験した中で、ダントツに「楽しい!」と思えたのが新体操だったという。「テニスも同時期に始めたのですが、ラケットが重く、片手打ちができなくて(笑)。それから新体操一本に絞って、みなみ新体操クラブに入りました」。
みなみ新体操クラブといえば、現コーチの杉本早裕吏さんをはじめ、多くのトップ選手を輩出した新体操界の名門。3歳上の杉本コーチは、竹中選手と同じ名古屋経済大学市邨中学校・市邨高等学校であり、ずっとその背中を追って育ってきた。フェアリージャパンPOLAの存在を知ったのは、小学6年生の頃。「世界で戦う姿がカッコよくて、自分もそこに入って踊りたい!」と強く感じた竹中選手は、早速オーディションを受験。一度目は落ちたが、中学2年生で練習生に合格。「あの時は奇跡が起きたと思いました。それまではそんなに成績が良かったわけではなかったので。母と泣いて喜んだのをよく覚えています」。
合宿生活に入った竹中選手は、練習生を経て代表入りを果たす。その後は上京し、さらには5名の出場メンバーにも選ばれて、昨年憧れのオリンピックの舞台に立った。しかし、予選で大崩れしたチームは決勝でも精彩を欠き、総合8位という結果に終わる。「ミスなくやり切る」という思いを一層強くすることになった、苦い経験だった。
表現の参考にするのはフィギュア、ダンス、音楽
新体制になり、コーチという立場から選手たちを見守ることになった杉本コーチは、竹中選手の強みを「真面目で努力家」「持って生まれた美しさ」と評する。その評価を「素直に嬉しい」と受け止める竹中選手は、「もともと一つひとつの動作を丁寧にやることが得意なんです。この動きをどう表現したらより美しく見えるか極めていくのが好きだし、演技を磨くことを意識しています。ただ、丁寧にやりすぎて迫力に欠けるのが私の弱点ですね」と自身のパフォーマンスについて話す。目下目標とするのは、「きれいと迫力の両立」。その体現者として挙げるのが、フィギュアスケートの羽生結弦さんだ。「彼を観ていると、きれいと迫力は両立できるんだと励みになりますね。フィギュアスケートのほかによく観るのは、ダンス動画。ジャンルを問わず、インスタグラムを観まくって止まらなくなることも(笑)。新体操は音と動きをマッチさせることが大事なスポーツなので、音楽もよく聴きます。単純に好きということもありますが、時にはジャズを聴いてみたり、いつものパターンにならず、刺激を入れるように工夫しています」。
今年から採点基準が変わり、芸術面の評価が加わった新体操界。より表現力が重視される中、竹中選手の「美しい演技」に寄せられる期待は大きい。まずは今年9月に行われる世界選手権でのメダルを獲得、そして2024年のパリオリンピック出場枠の獲得に向けて、演技に磨きをかける猛練習の日々が続く。
たけなか ななみ。1998年生まれ。愛知県名古屋市出身。トヨタ自動車・みなみ新体操クラブ所属。5歳で新体操を始め、中学2年生で受けたオーディションでフェアリージャパン POLAの練習生(強化選手)に。高校1年生でフェアリージャパンのメンバーに選出。東京2020には団体のメンバーとして初めてオリンピックの出場を果たす。167cmの長身と長い手足を生かした美しい演技を武器に新チームを引っ張る。愛称は「ななみん」「ななみ」。
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