全国9カ所を転戦する全日本ラリー選手権の最終戦はここ愛知県で開催されます。
それが、平成26年10月31日(金)から11月2日(日)まで開催される「新城ラリー2014」!
この開催にちなみ、様々な方からモータースポーツという切り口で語っていただくインタビューをお届けしています!!
第3回を数える今回のゲストは、レーシングドライバーの井原慶子さんです。
世界を舞台に F3、世界選手権、ル・マンなどさまざまな国際レースで活躍。2012年には日本人初、世界女性初で耐久レースの世界最高峰WEC世界耐久選手権にフル参戦!2014年にはアジア女性初の完走を果たした世界最速の女性ドライバーという偉業を成し遂げています。
そしてつい先日行われたアジアンルマンシリー ズ第2戦日本ラウンドにおいて、中国人男性ドライバー2名と共にOAKレーシング(フランス)より参戦し、世界 女性初で 見事総合優勝を果たしました!!さらには車を通し教育や社会貢献などにも取り組まれており、まさにモータースポーツ界を代表するスーパーウーマン!力強い信念と努力、行動力に溢れた井原さんに車やモータースポーツに関しての色々なお話を伺います。
【プロフィール】
■井原慶子さん(いはら けいこ) レーシングドライバー
■生年月日:1973年7月4日生 レース歴16年目。
■出身地:東京都 法政大学経済学部卒業。
■特技:超高速安全運転、異文化コミュニケーション、モーグルスキー、テニス、水泳
■資格:モータースポーツJAF国際B級ライセンス、小学校英語指導者資格、
ネバダ州立大学ピラティス指導資格 スキーSAJ1級
高校ではモーグルスキーの選手として活動。
学生モーグルスキー大会で入賞した実績を積み、モーグルスキー大会の合宿費用を捻出するため大学在学中にモデル業を始め、1997年~1998年には、NTTイメージレディ、1998年にはF1ベネトンレースクイーン・グランプリに選ばれる。(5000人を越える応募者の中から)
レースクイーンとして訪れたサーキットでモータースポーツの迫力に取り憑かれ、自らも出場したいという意識が強く芽生える。当時、井原は普通自動車免許すら持っていなかったので、普通運転免許証を取得するべく自動車教習所に通い、その後もメーカーのインストラクターや技術スタッフから、走行法やモータースポーツの心得を習得していった。
20代半ばで普通自動車運転免許を取得後、遅咲きながら25歳の時にフェラーリ・チャレンジでレースデビュー。その後、FIA公認国際レースで女性初のポールトゥウインを達成。海外を拠点に F3、世界選手権、ル・マンなど国際レースで世界50か国を転戦。数々の国際レースで日本人女性初の入賞を果たす。
2012年には、カーレースの世界最高峰シリーズWEC世界耐久選手権に唯一の日本人かつ女性として通年参戦。4度の入賞を果たし、日本人女性として初の世界選手権ポイントを獲得する。レース活動のかたわら、教育、交通社会環境改善への取り組みや、日米リーダーシッププログラムのフェローとして国際会議や社会貢献活動にも参加。
2012年9月には、「世界で活躍し『日本』を発信する日本人」として日本国政府・内閣府国家戦略大臣より表彰される。
慶應義塾大学大学院メディアデザイン研究科特別招喚准教授就任。経産省自動車有識者会議メンバー。
2008年6月14日7歳年下のエネルギー科学者・本島厳と結婚。2012年には、日本人初、世界女性初で耐久レースの世界最高峰WEC世界耐久選手権にフル参戦。2013年同シリーズドライバーズランキング22位、女性では最高位を獲得し、世界最速の女性ドライバーとなる。
2014年8月静岡県の富士スピードウェイ先日行われたアジアンルマンシリー ズ第2戦日本ラウンドにおいて、中国人男性ドライバー、デイビッド・チェン選手、ホーピン・タン選手と共にOAKレーシング(フランス)より参戦し、世界 女性初で見事総合優勝を果たす。
■井原さんが車を好きになられたのはいつからですか?またきっかけは何ですか?
車を好きになった理由はレースクイーンを大学生の時にアルバイトでやっていて、それで初めてサーキットに行った時にモータースポーツを見てものすごく魅了され、それで車が好きになりました。
■レースクイーンの方も何人もいて、皆さん同じように見ていてそれでやろうって思われる方少ないじゃないですか!(笑)でも、見てすぐやっぱり・・・やりたいって思われたのですか?
そうですね〜!見た瞬間にやりたいと思いました!
■そこから車の免許自体も取りに行ったっていう風に伺ったんですけど・・・
そうですね。翌日には自動車運転免許の受付に行きました(笑)
■じゃあ本当に車自体、自分で乗ったことないのに、あぁ!これやりたいって思われて・・・
そうですね!
■へー!ではレース自体っていうのはどんなきっかけでいつから始められたのですか?
レースクイーンとして初めて行った時に、やりたいと思ってからまぁ4年位経って25歳の時に初めてレースに出ました。
■それは何のレースに出られたのですか?
それはフェラーリチャレンジというレースですね!
■そのフェラーリチャレンジもすぐに結果を出されてますよね?
フェラーリチャレンジは、その開幕戦というかデビューレースでまずは3位表彰台になって、そのあともずっと表彰台に登れていました。
■出るまで、練習とかはされていたんですか?
すごくしていました!例えばお歳暮とかお中元の宅配のアルバイトをすると軽自動車をガソリン代払わずに乗れるじゃないですか!それで、いかにスムーズにハンドルをきるとかギアチェンジをするとか、お中元とか荷物が全然崩れない様にそういうのをとにかく練習をしたりしていましたね(笑)
それと、人にレーサーになりたいんだって話をしていたら、じゃあカーメーカーがやっている安全運転のドライビングスクールがあるんだけど、そのインストラクターの応募があるから、応募してみたら?と言われて、応募してみたら受かって・・・。
まだ免許取り立てで、運転の癖がついていないという事で合格したんですけど、それからずっとカーメーカーのテストコースで毎日毎日まずエンジンはどこに載っているのかという初歩的な所から始まって、機械的な事を理論で勉強したり、あとは車の実車もかなり乗って・・・もう半年後位には時速140キロ位でドリフトできる様になりました(笑)
■多くのレーサーはやっぱり小さい頃からカートに乗って徐々にステップアップしてって言う人がほとんどだと思うんですけど、井原さんは25歳からということで年代的には結構遅い・・・?
そうですね〜!ものすごく遅いです。
■フェラーリチャレンジを経てフォーミュラだとかいろいろのられているんですが、次はこれに行きたいなとかいうような、何か明確なビジョンがあって進まれていたんですか?
そうですね。F1に乗りたいとかそういうのは全く思っていなかったんですけど、
ちょっと先のものを目標に、いつもこれに乗りたいな、あれに乗りたいなっていうのでいつも進んでいましたね。
■先ほどからお話を聞いていると、目標に対してすごい努力をされて、必ず叶えていくっていうのを感じるんですが。
そうですね。自分の頭の中にこれなりたいなって浮かんだものは、やっぱり必ずできると思っているので、頭に浮かんだものは努力してやる様にはしていますね!!
■WECの世界耐久選手権に参戦される様になって・・・ル・マンに最初に挑戦されたのはいつですか?
ル・マンは2012年ですね。
■それでは一昨年ですね。その時の結果はどんな風でしたか?
2012年も2013年もリタイアしました。2012年は走り出して1時間位で1番手のドライバーが他の車にぶつけられてしまいリタイアしてしまって、自分が乗る番はまわってこなかったんですけどね・・・
■最初ル・マンに出られた時、世界三大レースとも言われてますけど、雰囲気とか実際走ってみた時の感動みたいなものってあったんですか?
いやぁ〜!ものすごくありましたね!!やっぱり世界最高のレースだな、と感じたのが街というか「ルマン市」全体でみんなで造りあげていくレースだっていう事とか、90年の歴史があったりとか、世界中からルマン市に人が集まってきたりとか・・・。ものすごく大会としても工夫がされているんです。サーキットに来る人が50万人もいて、そういったレースで走るというのはすごく感激しましたね!!
■参戦1年目、2年目は自分とは関係ない部分で悔しい思いがあって、それで今年を迎えて、ついに完走をされて、という事だったんですが、完走の瞬間はどんな気持ちでしたか?
いやぁ〜〜〜もう本当に嬉しかったですね!!やっぱり3度目の正直で完走できて、さらに入賞もできましたし・・・そうですね。非常に嬉しかったです。
■やっぱりそれも普通のレースとは違いますか?
全く違いますね!!中には他のフォーミュラのレースで優勝した時、嬉しかった事もありますけど、そんな事とは比べものにならない位やっぱりル・マン24時間っていうのは嬉しいですし、完走したらまずお客さんが随分態度が違うんですよ!(笑)
女性ドライバーは私しか出てないんですけど、だからといってレース前は別にチヤホヤしてくれる訳ではないんです。ですが完走したものに関してはものすごく賞賛してくれるんです。もうゴールした後にドワァーっと、観客席からフェンスをよじ登って道路に押し寄せて来るんです・・・何十万人って。その人たちがみんな私の前で立ち止まっておめでとう!おめでとう!とか歌唄ってくれたりとか、もう全然違いましたね!!
■本当に他のレースとは雰囲気自体、全然違うんですね!
違いますね!違いますし、やっぱりそれだけ完走するのも難しいレースなんです。なので、やっぱり完走すると感激はひとしおという感じですね。
■先ほどから出てた例えば1つ目標にして、それを越えてっていう事でいうと、今年のル・マン24時間で完走っていうのはまた1つの目的を達した様に感じるんですけど、近々の井原さんの次の目標はありますか?
そうですね。WEC世界耐久選手権の第5戦が、今度日本の富士スピードウェイで行われるので、その時に自分としては凱旋レースですので、世界女性初で優勝したいな、と思います!!
■なるほど。世界女性初となると、またすごい話題になりますね〜!
そうですね、絶対優勝したいですね。
■では、モータースポーツ関係で、先の夢・目的は何かありますか?
やっぱりモータースポーツで世界70カ国をずっとレースで転戦してきて、いろんな国のモータースポーツや車・人の関わり方を見てきたので、できれば今後は日本でもっと車文化っていうものを成熟させていきたいと思いますし、モータースポーツ自体も自動車産業や交通社会に貢献できる様なプログラムも考えていければなぁと思います。
■井原さんにとってモータースポーツの見る魅力とは?
私が、モータースポーツに一瞬で魅了された部分というのが、やっぱり音とか、スピードとか、サーキットの緊迫感みたいなものなんですね。
やっぱり一瞬に賭けていたり、限られた時の中で技術開発をするっていう所に人間の「本気」というものが出てくると思うんですけど、それはもうレーサーだけじゃなくてメカニックとかエンジニアも限られた時間できっちり仕事をするっていう…。あとは人の命も関わってるという事で、人間の本気がぶつかり合うっていう所が見られる。これが1番のモータースポーツの魅力なんじゃないかなって思いますね。
■では、乗る魅力とは?
デビュー当時は車と自分が一体になれるという人車一体みたいな、よく人馬一体とは言いますけど。この自由自在に車を操れるという楽しさがすごく私の中では大きかったんですけど、どんどんカテゴリーが上がって今の様な世界選手権になってくると、そういった事ではなくてやっぱり世界各国から集まってくるスタッフとコミュニケーションを取って技術開発して、1つの目標を達成するという、そのプロセスがすごくやり甲斐がありますね!!それが一番の魅力でしょうか。
■愛知県の中で「新城ラリー」というラリーが行われていて、今年10月末に行われるのですが、井原さんはヨーロッパを周られていて、ヨーロッパの方だとラリーは盛んで、みなさんから愛されているっていうのを聞くのですが、ラリー自体は見られた事はありますか?
はい、あります。やっぱりイギリスとかヨーロッパのラリーでは、本当に車が通るすれすれの所でお客さんが1日中サンドイッチを食べたり、バーベキューしながら待っていて、そこの中で車が非日常的な速度で駆け抜けるわけですよね!そういったお客さんと参加している選手や団体が触れ合う部分が非常に多い事とか、あとは迫力がある、っていうのでやっぱり見ていて面白いですよね!!
■新城ラリーも今年、その様な大会を目指していろいろな努力がされています。井原さんが思うラリーを観る上での魅力とは?
ラリーだと、選手が乗り込む前のエリアなんかも結構見に行きやすいですし、そういった所で緊張感を持ってドライバーが乗り込む所とかコ・ドライバーの方々がいろいろチェックしたりだとか、人が一生懸命やっている所もすごく見やすいですし、その後の実際の「走り」という所では、他のサーキットのスポーツと比べてすごく身近に接する事ができて、信じられない運転テクニックを間近で見られるので是非そういった所を見てもらいたいなと思いますね。
■最後に井原さんが今後「新城ラリー」に出られる可能性は・・・!?
新城ラリーは、一応、委員として一緒にこれから盛り上げていくという方向で参加させてもらいたいと思っているんですけど、今年FIAのウーマン・イン・モータースポーツという活動をしていまして、そこに足立さやかさん(コ・ドライバー)に参加しもらっているんですね。なので、今年は足立さやかさんの応援に行きたいなと思っているんです!やっぱり女性コ・ドライバーが全日本のトップで戦っているっていうのは非常に格好良いですし、やっぱりそういった方が居て、初めてドライバーさんが安心して運転できるという事があるので、女性のコ・ドライバーの足立さやかさんに是非注目してもらいたいと思いますし、自分もまずは応援に行って勉強してから目指したいと思います!はい(笑)もしかしたら新城ラリーはコ・ドラに憧れて、コ・ドライバーとして参戦するかもしれませんね(笑)
■わかりました!(笑)今日はどうもありがとうございました。
【参考:略歴】
◆1999年 - フェラーリチャレンジ(優勝3回、ポールポジション3回)/フェラーリ世界戦inイタリア(120台中12位、国別対抗戦2位)MVP of The Year受賞
◆2000年 - イギリス・フォーミュラ・ルノー参戦
◆2001年 - フランスF3参戦(SIGNATURE-RENAULT)入賞4回
◆2002年 - AF2000参戦 参戦レース全戦表彰台獲得・2勝/AF2000世界戦マカオGP(3位)
◆2003年 - フォーミュラBMWアジアシリーズ(Team Yellow Hat)(シリーズ3位・シリーズ全戦表彰台)
◆2005年 - イギリスF3選手権・チャンピオンシップクラス(Carlin Mortorsports)入賞7回
◆2006年 - イギリスF3選手権・チャンピオンシップクラス(Carlin Mortorsports)入賞4回
◆2008年 - アストンマーチンアジアカップ チャリティーゲスト参戦
◆2009年 - フォーミュラ・ル・マン・カップ <Rd.3> (Exagon Engineering/Oreca FLM09) 入賞
◆2012年 - WEC世界耐2013年久選手権参戦シリーズ7位・入賞3回 (Gulf racing middle east/Lola NISSAN)
WEC世界耐久選手権参戦入賞5回(OAK RACING/Morgan NISSAN)入賞5回
ドライバーズランキング22位、女性世界最高位
◆2014年 - WEC世界耐久選手権参戦第3戦ルマン24時間レース日本人最高位総合14位で完走。 日本人最高位・アジア人女性初でクラス9位入賞。(3年連続参戦)
◆2014年 - アジアンルマンシリー ズ第2戦日本ラウンドにおいて、中国人男性ドライバー2人と共にOAKレーシング(フランス)より参戦し、世界 女性初で総合優勝 。
<近況>
2014年6月にミュンヘンで行われたFIA(国際自動車連盟)スポーツカンファレンスウイーク世界評議会において世界のトップ女性ドライバーとして登壇した。その他、2014年は、電気自動車であるBMWiシリーズの日本でのスポークスパーソンを務めている。
<その他>
•2010 単行本『崖っぷちの覚悟』出版
•2013 FIA「Women in motosport commision」の委員に選定され、議会に参加する
•TV、雑誌、新聞など 出演多数。
現在は、全国各地での講演会でも活躍中。
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外部リンク