スポーツのジャンルは数あれど、フットサルほど身近でしかも魅力的なスポーツはないのではないか。
競技人口はゆうに200万人を超え、フットサルコートは深夜までオープンしていてライフスタイルに合わせたプレーが可能だ。
自分が所属している正式なチームがなくとも、友達のチームで施設ごとの「ワンデートーナメント」に参加したり、「個サル」と呼ばれる個人参加の時間帯に施設に行くことで仲間も増やせる。
コートはサッカーの約9分の1ほどで、長い距離を走ることは少なく、女性でも簡単にプレーができる点もお手軽だ。
しかも自分でやるだけでなく、観ても面白い。
ここ10年で一気に人気が高まった日本のフットサルは、その注目度と比例するようにしてレベルも急上昇。
2007年のFリーグ開幕も手伝って、“観るスポーツ”としての認知度も高まってきた。
サッカーよりもスピーディーで展開も目まぐるしく、得点も4点、5点は当たり前に入るため、初心者でもわかりやすい。
もちろん、経験者ならばそのレベルの高さが実感できるため、なおさらに面白いのは言うまでもない。
その“経験者”の範疇が、前述の通り幅広いというのもフットサルの特色のひとつだ。
ここで簡単にフットサルを、サッカーとの比較で説明しておこう。
人数は1チーム5人で試合時間は前後半20分でプレーイングタイムによる計測となる。
45分ハーフでボールがラインを割っても時計は進み続ける(ケガの治療などの時間は“アディショナルタイム”として後から追加する)サッカーとの第一の違いで、交代が自由に認められている点なども踏まえると、フットサルはバスケットボールに近い競技とも言える。
ボールはいわゆるサッカーの小学生用4号球と同じ大きさで、ローバウンド仕様であまり弾まない。
フットサル特有の技術に“足裏トラップ”というものがあるが、これでピタッ、とボールが収まるのもローバウンドならではの挙動だ。
ゴールの大きさはハンドボールのゴールと同じで、それゆえにGKのセービングにも足など含め全身を使うのが普通。
形勢逆転などを狙ってGKをフィールドプレーヤーに変えてパワープレーを仕掛けることも戦術的に確立されており、その意味ではフットサルはハンドボールに似ているとする人もいる。
ルールで言えば、オフサイドがないというのが大きな違いだろう。
サッカーでオフサイドをとらないと、相手ゴール前でFWがひたすらに待ち、それをマークするDFが増え、そこでの競り合いに勝つために大きな選手を配置し、いつしかゴール前が肉弾戦の様相に……という非常につまらない事態を引き起こす。
しかしフットサルではそれが“シュートパス”という技術と“セグンド”という戦術を生み、まるでシュートのような強く速いパスを逆サイドのゴールポスト付近で叩きこむというエキサイティングなプレーにつながる。同じ足を使ってボールを蹴る競技でも、コートの大きさとオフサイドがないだけでこうもピッチ上の事象が変わるものなのである。
また、選手がファウルをすると前後半それぞれで累積されていき、6回目のファウルからは相手に第2PKもしくは壁のないFKが与えられるという、バスケットボールでいうフリースロー(7ファウルでの)のようなルールもある。
このため、チームによっては“第2PKキッカー”や“第2PKに強いGK”がいることもある。
強いチームもファウルがかさめば相手に決定機を与えることになり、形勢が悪くなるというのはフットサルでは日常茶飯事。
必然的にファウルは減り、プレーの各所に設けられている“4秒ルール”などの時間制限も手伝って試合展開は加速していく。
フットサルのスピーディーさは、プレーだけでなくルール面からも奨励されているわけだ。
書いているだけで自分もプレーしたくなってくるフットサル。
フットサルコートの数も多く、何よりFリーグの絶対王者・名古屋オーシャンズが本拠地を置く愛知県はフットサルどころとして有名だ。
そしてご存知の通り、現在は2020年のフットサルワールドカップ招致を推し進めており、「日本のフットサル王国」としてのステータスは上がり続ける一方だ。
前置きが長くなったが、そこでもし愛知県にフットサルワールドカップが来た時に、慌てず120%楽しむためのお手伝いになればというのが当コラムの趣旨である。
次回はもう少し別の角度から、フットサルの魅力をご説明したいと思う。
(スポーツジャーナリスト 今井雄一朗)