馬と触れ合って癒やされる
年齢や性別の差がない唯一のスポーツ!
オリンピックで唯一、人間以外の動物が出場する馬術という競技をご存じですか?(馬術など5種目の合計点で順位を決める「近代五種」にも馬は出場します)
「人馬一体」という言葉を耳にすることがあると思いますが、馬術はまさにその表現がぴったり。騎手と馬が一体となって、技やスピードを競うスポーツです。
そもそも人間と馬の関係は古く、古代より人間は長い距離などを移動する際に馬を活用していたそう。
紀元前の古代オリンピックでも、馬を用いた戦車競走が行われていたようです。馬術が近代オリンピックの種目に加わったのは、1900年の開催された第2回パリ大会。障害を飛び越える競技が行われました。
馬と一緒というだけで他の競技と比べて異色な存在ですが、歴史あるスポーツだとおわかりいただけたのでは。
その特徴について、詳しく見ていくこととしましょう。
まずは競技の内容から。オリンピックでの馬術は以下の3つの種目を行います。
<馬場馬術(ドレッサージュ)>
20m×60mのアリーナ内で、正確かつ美しく馬に演技をさせる競技。左右の脚を交差させるハーフパス、一歩ごとに脚を高く上げて進むパッサージュ、その場で足踏みをするピアッフェ、後ろの脚を中心に回転するピルーエットといった技があり、決められたプログラムの通りに演技を披露する規定演技と音楽に合わせて技を見せる自由演技の合計点で順位を争います。
馬と一緒にやるフィギュアスケートと言った感じでしょうか。
<障害馬術(ジャンピング)>
アリーナ内に設置された様々な色や形をした障害物を、決められた通りの順番に飛び越えつつ、ゴールを目指す競技です。こちらも馬場馬術と同様に採点方式で行われ、障害物を落としてしまったり、馬が障害物の前で止まってしまったり、規定のタイムを超えてしまったりすると、減点の対象となります。ちなみに障害物とは、走り高跳びのバーのようなもの。
高さは160cm、幅(奥行き)は200cmを超えるものもあるそうです。
<総合馬術(イベンティング)>
先に紹介した馬場馬術・障害馬術に加えクロスカントリーの3つの種目を、3日かけて同じ人馬で行う競技です。クロスカントリーは、自然に近い状態のコースを、途中に設置された竹柵や生け垣、水濠などの障害物を越えながら走る競技。世界トップレベルの大会では距離は6km以上になり、障害の数は40個以上にもなるのだとか。
まさに、総合力が試される競技だと言えるでしょう。
ここからは、ほかのスポーツにはない大きな特徴をお伝えしていきましょう。その特徴とは、男女別に分かれていないということ。
実は結構体力も使うのですが、基本的に運動するのは馬。
選手は馬との信頼関係を築き、的確な合図を出して上手に乗りこなすことができれば、体力で劣る女性も男性と伍して戦えるという理由から、馬術はオリンピックで唯一、男女別の種目に分かれていない競技なのです。
例えば、2016年のリオデジャネイロオリンピックの馬場馬術には、日本から男女4選手が出場。原田喜市選手45位、北井裕子選手48位、黒木茜選手50位、高橋正直選手58位という成績でした。
また、幅広い年齢層の選手が活躍しているのもこの競技の特徴。
体力よりも、経験・技術・馬との相性などが求められるからです。
1964年の東京オリンピックに出場経験のある法華津(ほけつ)寛選手が71歳という世界最高齢で2012年のロンドンオリンピックに出場し話題となったことを覚えている方も多いかもしれません。愛馬のケガのため残念ながらリオの出場は断念しましたが、2020年の東京オリンピック出場は虎視眈々と狙っているのだとか。60年近くの時を超え、2度の東京オリンピックに出場なんて夢が広がる話ですね。
ぜひ応援したいと思います。
これを読んで馬術に興味を持った人は、ぜひ尾張旭市にある森林公園乗馬施設へ。森のアカデミー乗馬教室や引き馬体験などを開催しているそうです。乗馬は、姿勢がよくなり、運動不足の解消にもつながるのだとか。何より、馬との触れ合いは心癒やされるはず。激しいスポーツはちょっと…という人に特にオススメです。
また、森林公園内には競技用の施設もあり、誰でも競技会を観覧できるようになっています。美しく勇壮な馬が颯爽と駆ける姿は迫力満点。
ぜひ、間近で体感してみてください。
(ライター : 鶴 哲聡)