実は誰でも気軽に始められる
爽快感満点の生涯スポーツ
今回紹介する射撃は、銃器の発達に伴い15〜16世紀のヨーロッパを中心に世界へ広まっていった歴史のあるスポーツ。オリンピックで実施される2競技のうち、「ライフル射撃」は第1回アテネ大会から、「クレー射撃」は第2回パリ大会から、それぞれ正式に採用されています。日本での歴史も意外に古く、両競技とも大正時代には競技会が行われていたそうです。
広く一般になじみがあるとは言えませんが、種目によっては誰でも気軽に始められ、高齢になっても続けられる生涯スポーツでもあるのが射撃。
「新しい趣味を見つけたい」という人に、ぜひオススメしたいスポーツです。
ここまで読んだ皆さんは、「ライフル射撃とクレー射撃の違いって何?」と思ったのでは。それぞれの特徴を挙げて、違いを見ていくことにしましょう。
【ライフル射撃】
・使用する銃…ライフル、エアライフル、ピストル(装薬ピストル)、エアピストル
・標的…10〜50m先に固定されている
・種目…
<ライフル3姿勢(男子)>立射・膝射・伏射の3姿勢(各40発)で50m先の的を狙う
<ライフル3姿勢(女子)>立射・膝射・伏射の3姿勢(各20発)で50m先の的を狙う
<ライフル伏射(男子)>床に伏せた状態で50m先の的を狙う。発射弾数は60発
<エアライフル(男子)>立ったまま、空気の力で弾を発射するエアライフルで10m先の的を狙う。発射弾数は60発
<エアライフル(女子)>立ったまま、空気の力で弾を発射するエアライフルで10m先の的を狙う。発射弾数は40発
<50mピストル(男子)>立ったまま、ピストルで50m先の的を狙う。発射弾数は60発
<25mピストル(女子)>立ったまま、ピストルで25m先の的を狙う。発射弾数は60発
<ラピッドファイアピストル(男子)>4・6・8秒以内に各5発を撃つ速射で25m先の的を狙う。発射弾数は60発
<エアピストル(男子)>立ったまま、空気の力で弾を発射するエアピストルで10m先の的を狙う。発射弾数は60発
<エアピストル(女子)>立ったまま、空気の力で弾を発射するエアピストルで10m先の的を狙う。発射弾数は40発
【クレー射撃】
・使用する銃…散弾銃
・標的…空中に飛んでいる、クレーと呼ばれる皿状の的
・種目…
<トラップ(男女)>5つの射台を移動しながら、射台の前方15mから放出されたクレーを狙い撃つ
<スキート(男女)>半円形の射台の両端から放出されたクレーを8つの射台を移動しながら狙い撃つ
<ダブルトラップ(男子)>基本的にトラップと同じルール。2枚のクレーが同時に放出される
2つの競技を例えるなら、ライフル射撃は「銃を使ったアーチェリー」、クレー射撃は「狩猟をスポーツ化したもの」と言うことができるでしょうか。
同じ銃を使ったスポーツですが、その内容はまったく違っていることが分かります。
ライフル射撃とクレー射撃が1カ所で同時に行える施設が豊田市にあるのをご存じですか。
その名も「愛知県総合射撃場」。約25万㎡の広大な敷地の中に、100以上のライフル射撃用射座と、トラップ・スキート各2面・併用1面あるクレー射撃場を持つ、国内でも有数の規模を誇る射撃場です。(※「愛知県総合射撃場」では装薬ピストルは撃てませんのでご注意ください。)
大きな大会が行われることもあるので、観戦に行くのもオススメです。
「すぐにやってみたい!」と思う方もいるかもしれませんが、銃規制の厳しい日本では、競技用の銃を保有するには、各都道府県の公安委員会の許可を得なければなりません。もちろん、申請をすればそれで終わりというものではなく、面接での人物評価や学科や実技の試験など厳しい審査が科されるのだとか。
また、銃本体や弾の価格は高額らしく、費用面でのハードルも高いそうです。
それでもぜひチャレンジしてみたいという人には、国体競技にもなっているビームライフル(光線銃)をオススメします。
公安委員会で許可を得る必要がなく、子どもから大人まで、誰でも楽しむことができるからです。
先に紹介した愛知県総合射撃場では一般が1時間150円、学生は同100円と安価に体験が可能。手ぶらでOKなので、一度足を運んでみてはいかがでしょう。悩みごとや嫌なことが吹き飛んでしまうぐらいの爽快感が味わえるそうですよ。
筆者に射撃の魅力を教えてくれたのは、以前に取材で話を聞かせていただいた山本浩二さん。2014年国民体育大会のクレー射撃成年トラップ団体に愛知県代表として出場し、見事に優勝した選手です。
日本一になった山本さんが本格的に競技を始めたのは、なんと結婚後。新婚旅行先のハワイで体験しすっかり射撃のとりことなったのがきっかけだったそうです。
初めて出場した国体で優勝を飾った時の年齢は48歳。2016年国体にも出場し個人5位になるなど、50歳を超えてなお第一線で活躍しています。
体力をあまり使わないので、山本選手のように年齢を重ねても競技ができるのも射撃の魅力のひとつと言えそうです。
なにより、成人になってやり始めて、50歳を前にして日本一になるチャンスのある競技なんてそうそうあるわけではありませんよね。
あなたも日本一を目指して、ぜひ始めてみませんか。興味のある方は、愛知県総合射撃場までお問い合わせを。
(ライター : 鶴 哲聡)