ガッツポーズは厳禁
心身を鍛錬し人間形成を目指す武道
いいプレーをしたり、勝利を決めたりした瞬間に、選手が誇らしげに手を突き上げるガッツポーズ。スカッと胸のすく、スポーツの名シーンのひとつです。
ただし、今回紹介する剣道では絶対に見ることはないでしょう。
なぜなら、反則となってしまうから。仮に一本をとった選手がガッツポーズをしたら、その一本は取り消しとなるそうです。
ではなぜ、剣道でガッツポーズはいけないものなのでしょうか。
それは、剣道の理念にあります。
統括団体である全日本剣道連盟のホームページに、剣道とは稽古を続けることによって心身を鍛錬し人間形成を目指す「武道」という記載があるように、剣道で重んじられているのは勝敗よりも礼節。
ですから、ガッツポーズは敗者に対する思いやりのない、礼節に欠けた行為とみなされるため一本が無効になるのです。
スポーツより武道としての要素が大きいと考えると、ガッツポーズがいけない理由がより理解できるのではないでしょうか。
ここからは簡単に剣道がどうようなルールで行われるのかを見ていくことに。
まずは道具について。剣道ではさまざまな剣道具を使います。
・竹刀:真剣の代わりに持つ竹製の刀。一般男子の場合、長さ120cm以下、重さ510g以上、太さ26mm以上などと細かい基準が設けられています。
・面:頭や首を保護するためにかぶる剣道具。顔面は面金という金属の格子で、肩から頭頂にかけては面布団で覆われています。
・胴:腹部を保護するための道具。打撃を受け止める胴台はプラスチックや竹などでできています。
・小手:手から腕にかけての部分を保護する、布製の道具。
・垂:腰などを保護するための道具。垂帯、3枚の大垂、2枚の小垂からなっています。直接攻撃されることはありません。
上記の剣道具をセットしたら、いよいよ試合開始。
試合場は9〜11メートル四方の正方形で、中心にX印が描かれています。
試合時間は5分。3本勝負が原則で、時間内に2本先取した者が勝ちとなります。
試合終了時、どちらかが1本を取っていたら、その者が勝ちに。勝負が決しない時は3分の延長戦に入ります。
そして1本の基準にも細かな決まりが。
剣道試合・審判規則では、「充実した気勢、適正な姿勢をもって竹刀の打突部で打突部位を刃筋正しく打突し、残心のあるものとする」となっています。
残心とは、有効打を決めた後も油断することなく、相手のどんな反撃にもただちに対応できる身構えと気構えのこと。
要するに、決まったからといってすぐに気を抜くようでは一本は認められないということです。
また競技規則には、試合に不適切な行為があった場合は、主審が有効打突の宣告をした後でも、審判員は合議の上、その宣告を取り消すことができるとの記載も。
冒頭で取り上げたガッツポーズは、この不適切な行為と見なされるのです。
剣道は子どもから大人まで、幅広い世代の人が気軽に始めることができる競技。とくに、礼儀作法を学んだり、精神を鍛錬したりするのには、うってつけです。
筆者の息子も、幼稚園から小学校低学年にかけて道場に通い、師範に稽古をつけてもらったおかげで、あいさつがきちんとできるようになるなど、礼儀作法を身につけることができました。
名古屋市剣道連盟に加盟する露橋少年剣道会では週に2回、中川区の露橋スポーツセンターで稽古を行っています。 少年となっていますが、親も一緒に参加できるほか、一般の練習生も募集しているそう。
このほか、愛知県内には70ほどの道場が活動をしているので、興味を持った方は、門を叩いてみてはいかがでしょう。
(ライター : 鶴 哲聡)