中国の伝統武術が
誰もが楽しめるスポーツに
太極拳は中国に古くから伝わる武術のひとつ。円の動きを基本にゆっくり伸びやかに動くので、激しい運動は苦手という人でも気軽に始められると人気の生涯スポーツです。下半身が鍛えられ、バランス感覚を養えるほか、神経系や消化器系、呼吸器系の働きも向上させることができるといいます。
そのせいか日本全国に愛好家が多く、その数はなんと150万人もいるのだとか。みなさんも、太極拳愛好家の方々が早朝の公園に集まってポーズをとっている姿を見かけたことが、一度はあるのではないでしょうか。
このように健康を維持するための健康体操のような役割を持つ一方、オリンピック種目入りを目指す国際競技スポーツとしての一面を持ち合わせているのが太極拳。
2026年に愛知・名古屋での第20回大会の開催が決定しているアジア競技大会では、1990年から正式種目として採用されています。果たして競技スポーツとしての太極拳は、どのようなルールで行われているのでしょう。おそらく、詳しく知らないという人がほとんどなのでは。
一説によると、中国に古くから伝わる武術は数百にものぼると言われています。国際武術連盟ではその中から、やわらかくゆったりした動きの「太極拳」、跳躍技などダイナミックに体を動かす「長拳」、気合いを入れて力強い動作をする「南拳」の3つを現代にマッチした競技スポーツとしてルール化。広く普及させるため国際大会などを開催しています。
日本では「武術太極拳」という名称を用いて普及が進められ、現在国内に7万人の競技者がいると言われています。
次に実際の武術太極拳の競技内容をご紹介しましょう。試合形式は次の2つに大きく分けられます。
・套路(とうろ)競技=演武型の個人競技。各種目の形や姿勢、動きにより採点基準があり、その合算点数によって順位を競います。第7回の空手編で紹介した「形」をイメージしてもらえると、分かりやすいと思います。套路で行われる種目は太極拳・長拳・南拳の3種目。特に長拳では、剣、刀、槍、棍棒などの武器を使うのが特徴です。
・散打(さんだ)競技=空手で言うと「組手」に当たる、相手と闘う対抗性の競技です。日本で競技会は実施されていないため、国内に散打の競技者はほとんどいません。
武術太極拳は、子どもから高齢者まで、年齢性別問わず楽しめるのが特徴のひとつ。各地で教室や講習会が行われているほか、JOCジュニアオリンピックカップや全国健康福祉祭(ねんりんピック)などの大会も行われ、その競技者の輪は確実に広がっているようです。
冒頭でも述べたように心と体の健康にもよく、しかも誰もが気軽に始められるので、日頃運動不足で「何かを始めたいけど、いきなり激しいのは無理」などと考えている方にもおすすめです。
愛知県太極拳協会では定例の太極拳教室を開催中。興味のある方はぜひホームページから問い合わせてみてください。また、4月8日(土)、9日(日)には、愛知県武道館にて「第25回JOCジュニアオリンピックカップ武術太極拳大会」が開催されます。入場無料なので、ぜひ観戦しに行ってみましょう。
(ライター : 鶴 哲聡)