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2022/09/19 特集記事

苦悩の日々を乗り越え、新しい目標へ
フィギュアスケーター・河辺愛菜の今

完成の限界がないことがフィギュアスケートの魅力

 幼い頃からフィギュアスケートを始め、小学生の時から国際大会で活躍。2019年には全日本フィギュアスケートジュニア選手権で優勝を果たし、2021年全日本フィギュア選手権では3位となった。トリプルアクセルの精度と将来性が見込まれて17歳で2022年北京冬季オリンピックに出場した河辺愛菜選手。代名詞となりつつあるトリプルアクセルや3回転ルッツ、3回転トウループ、コンビネーションジャンプなど、多彩なジャンプが持ち味だ。
 河辺選手がフィギュアスケートを始めたのは、かつて日本中のスケートファンを虜にした浅田真央さんの演技をテレビで観たことがきっかけだという。「華麗な演技を見て、自分も氷の上で跳んで滑ってみたいと思いました。一度リンクへ見学に行って、それから習い始めました」と河辺選手。なぜのめり込んだのか理由を尋ねると、「人によって個性があるところが魅力的だから」と答える。「ジャンプ、スピン、スケーティングのどれをとっても、一人ひとりが全く違う。ここまで来たら完成という限界がなく、自分の理想形にどんどん近づけることができる。ジャンプの調子が悪い時なら、表現力を磨くことができる。とにかくいろいろな魅力があるところが好きです」と笑顔で話す。

緊張感と焦燥感の後、再び競技を楽しめるように

 北京冬季オリンピックでは初の大舞台ということもあって納得がいく演技ができず、得意のトリプルアクセルもなかなか決まらなかったが、3回転フリップやレイバックスピンなどを成功させてSP(ショートプログラム)は15位に。一方、FS(フリースケーティング)は転倒などのミスが響いて23位と悔しい結果になった。当時の心境について河辺選手は、「オリンピックが終わった直後はとても悔しくてもっと頑張ろうという気持ちになるのと同時に、フィギュアスケートそのものが楽しいと思えていなかったです。世界選手権を控え、すぐにまた準備をしなくてはならないとは思っていたものの、大会に挑むのが怖かったのも事実です」と、緊張感と焦燥感の中で過ごしたことを打ち明けた。しかし、決してそこでは終わらない。「今はようやく気持ちが落ち着いてきて、スケートそのものも楽しめるようになりました。これからもたくさんの大会に出て実力を磨き、4年後のミラノ・コルティナ冬季オリンピックを目指して頑張りたい」と笑顔を見せる。
 また、京都府から地元の愛知県へ練習拠点を移したのも功を奏した。小さい頃からともに練習してきた横井きな結選手や、松生理乃選手と再び切磋琢磨し合えるようになったことが良い影響と刺激を与えている。「今までは必要以上に焦っていたところがありましたが、環境が変わって少しずつ自分に余裕を持てるようになりました。ジャンプも毎回跳び方が違っていたのですが、“こうやって跳んだときは一番上手くいく”と、自分自身の中で整理できるようになり、ずいぶん安定してきていると実感しています」。もちろん、技術面だけではなく表現面にも一層力を入れる。「主にコーチがプログラムの修正を行ってくれますが、最近は自分でも曲調や歌詞の意味を理解しながら表現を変更するようになりました。今シーズンは、表現面でも自信が持てるようになりたい。観ている人にも伝わるような演技ができるようにしたいと思っています」。

来年の国体に出場して地元に恩返しがしたい

 今年の春からはかつての恩師である樋口美穂子コーチに再び指導を受けることになった。「コーチからはスピードやパワー、強めの動きを伸ばしていくのがいいと言われました。柔らかい動きや演技の強弱については、今はすべて同じパフォーマンスになっているので、余韻を残すことや繊細な動きを改善していくことが課題とも言われています」と話す河辺選手。ジャンプについては“初心に戻る”ことを今シーズンのテーマに掲げる。「高難度のジャンプを跳ぶよりも、まずは基礎のジャンプを安定して跳ぶことに重点を置いて練習しています。回転の練習ではなく、スピードにのってまっすぐに跳ぶための練習に力を入れています」。さらなる成長のため、「ジャンプの練習以上に今やらなくてはならない練習が多い。今シーズンに練習した成果を来シーズンの演技で取り入れていければと考えています」と意気込みを見せる。
 6月には日本ガイシホールで行われた『ファンタジー・オン・アイス2022』にも出場し、流麗な演技を披露。こうしたアイスショーでの経験も、自分の競技での演技に生かせるという。「会場のすべてのお客様に届くような演技を心掛けるのは、アイスショーならでは。試合だと審査員にいい判定をもらえるような表現のことしか考えられないので、どうしても視線が下になりがちです。もっと視線を上げて、(表情なども)会場全体の方々に見ていただけるような魅力ある表現をできるようになりたい。アイスショーを通して、こうした力を身に着けていきたいですね」。
 来年は様々な大会で好成績を残すことはもちろん、今年は拠点を変えたばかりなので国民体育大会に出場できないが、来年以降は愛知県の代表として出場することも河辺選手にとって大切な目標のひとつだ。「国体で結果を残すことにより地元の方々に恩返しをしたいです。地元が好きなので愛知県民の一人として勝利に貢献したいと思います」。一回りも二回りも成長した河辺選手に出会えることを期待したい。

PROFILE
河辺愛菜
かわべ まな。2004年生まれ。愛知県名古屋市出身。中京大学附属中京高等学校所属。5歳の頃からスケートを始め、中学生で濱田美栄コーチに師事するために京都府へ練習拠点を移す。2019年全日本フィギュアスケートジュニア選手権で優勝、2021年NHK杯国際フィギュアスケート競技大会で2位、2021年全日本フィギュアスケート選手権で3位に輝き、2022年北京冬季オリンピックに出場。2022年4月より地元の愛知県へ戻り、樋口美穂子コーチのもとで指導を受ける。

過去の河辺選手への取材記事はこちら


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