原点を取り戻し、王座奪還 三浦璃来&木原龍一ペア

ミラノ・コルティナ2026冬季オリンピックまで半年を切った。
昨シーズンの世界選手権で2年ぶり2回目の優勝を果たし、金メダル候補の筆頭に挙げられるフィギュアスケートの三浦璃来&木原龍一ペア。新シーズンに向けてカナダで練習を続ける2人に、地元で開催されるグランプリファイナル、そしてオリンピックへの意気込みを聞いた。
「120点です」。
2年ぶりに世界選手権チャンピオンの座に返り咲いた三浦璃来&木原龍一ペア。2024-25シーズンを振り返り、木原選手は「シーズン通して怪我をしないことを目標にしていたので、怪我をしなかったという点で120点です」と評価した。
主要国際大会を全て制し、日本選手初の年間グランドスラムを成し遂げた2022-23シーズン。輝かしい一年から一転、一昨年は木原選手がシーズン序盤に腰椎分離症を発症し、長期にわたり欠場が続いた。
復活のシーズンとなった昨シーズンはグランプリシリーズ第1戦・スケートアメリカで優勝。順調なスタートを切ったかに見えたが、実はシーズン前半戦はフィギュアスケートを楽しめていなかったという。
「2年前に僕が腰椎分離症と診断されて、復活のシーズンだったので、どうしても怪我をしたくないという思いがありました。また、『より良いものにしなければいけない』という思いを強く持ち過ぎていて、そこまで悪くない内容でも、自分たちを追い詰めてしまいました」。(木原選手)
自分たちを見直すきっかけになったのは、木原選手の母からの一言だった。「全日本選手権の試合後の表情を見ていた母から、『あなたたち、お葬式みたいね』と言われて、自分たちの原点である楽しむことができていないことに気がつきました。それから、もっと楽しもうと考えが変わりました」と木原選手は振り返る。
全日本選手権から2カ月後に行われた四大陸選手権までに「気持ちを作り直せたことが、シーズン後半に繋がった」と三浦選手もうなずく。

強みの「スピード」で勝負する
今シーズンは、来年2月にミラノ・コルティナオリンピックを控える重要な、シーズンだ。ショートプログラム(SP)は、ガラリとイメージを変えてクールな一面を魅せた、昨シーズンの『Paint It Black』を継続する。
「ただ継続するのではなく、組み込んでいる技をルールに合わせて変更しているので、つなぎの部分も変えています。昨シーズンはつなぎの部分でリフトが減速していましたが、その要素を取り除いて、今までセーブしていたスピードが出るようになっています。昨シーズン以上のインパクトを残せるように練習しています」(木原選手)と、プログラムをバージョンアップさせている。
フリースケーティング(FS)は取材時点では明かされなかったが、「新しいことに挑戦するよりは、自分たちの得意なスタイルで勝負したいと考えています。自分たちの良さであるスピードを100%、120%出せるようなプログラムになっています」と木原選手。りくりゅうペアの強みである疾走感あふれるプログラムが期待できそうだ。
さらに、トレードマークでもある笑顔も戻ってきそうだ。「昨シーズンはSPもFSも笑わないことを意識していたのですが、今シーズンはスピード感と笑顔で滑っている姿を皆様にお見せできたらと思っています」(三浦選手)と、自分たちらしさを取り戻した2人が、再び世界を魅了する準備を整えつつある。
目指す場所に向けて、一戦一戦ベストを尽くす
オリンピックの2カ月前には、7月にグランドオープンしたIGアリーナで「グランプリファイナル」が開催される。とりわけ、愛知県出身の木原選手は地元凱旋を楽しみにしている。「地元で開催される機会はそれほどないと思うので、もちろん出たいです。けれども、まずはグランプリシリーズの2戦でしっかりと成績を残さないとその舞台に行き着くことができません。毎試合毎試合ベストを尽くすということを目標にしていきたいと思います」。
最後に、ミラノ・コルティナオリンピックへの意気込みも聞いた。
「オリンピックは自分たちが目指している最も大きな舞台。そこに(メダル候補という)今までにない立場で挑戦をさせていただけるのは、過去の自分たちには全く予想できていなかったですし、たぶん過去の自分に話しても信じてくれないと思います。それをプレッシャーと捉えるのではなく、常に挑戦していく楽しさ、嬉しさ、素晴らしさを忘れずに頑張っていけたら、必ず自分たちが求める結果がついてくると思っています」。(木原選手)
「今シーズンも『怪我なく』を目標に掲げて、経験豊富な、本当に心強いパートナーと2人で、いい結果を残せるように、1日1日悔いのない練習を続けていきたいです」。(三浦選手)
グランプリファイナル、そして世界最高峰のオリンピックへ。覚悟を胸に、2人は新たなシーズンを駆け抜ける。
PROFILE
みうら りく。2001年12月、兵庫県生まれ。 2022年北京オリンピックで、ペア7位に入賞した。翌シーズンには日本人初となる年間グランドスラムを達成。
きはら りゅういち。1992年8月、東海市生まれ。2014年ソチオリンピックから3大会連続出場。2022-23シーズンには日本人初となる年間グランドスラムを達成。
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