名古屋の格闘技界をリードする!
老舗格闘技用品専門店と総合格闘技道場の挑戦

愛知県内の格闘家や格闘技マニアの間で「名古屋の格闘技の聖地」と呼ばれている場所があることをご存じだろうか?
その名は「公武堂MACS」。多くの若者や観光客で賑わう大須に自社ビルを構える格闘技用品専門店だ。ビル1階の店舗では格闘技関連のグッズやアイテムを販売し、2~3階では元プロの格闘家である坪井淳浩さんが主宰する総合格闘技道場「グラップリングシュートボクサーズ名古屋(GSB名古屋)大須MACS」で多くの人が汗を流している。
まさに、名古屋の格闘技文化の発信基地と呼べる場所だ。
格闘家からマニアまで垂涎の品揃え
インバウンド向けに武具も充実した公武堂MACS
柔道着に帯、剣道の面と竹刀、ボクシングのリングシューズにグローブ……
今年で創業丸53年を迎えた公武堂MACSの店内には、あらゆる格闘技で使用するアイテムが所狭しと並べられている。それだけではない。武道の奥義を指南するものやボクシングやプロレスの名勝負を収録したDVDも充実のラインナップ。プロアマ問わず、日々鍛錬に勤しむ格闘家から、観戦を楽しむ格闘技マニアまで、格闘技好きが足繁く通わずにはいられない店舗となっている。
最近ではインバウンドの需要を見越して刀や鞘などの武具や、人気アニメ『鬼滅の刃』のグッズも取り揃えるなど、新しい顧客の開拓にも積極的に取り組んでいる。
もちろん、単に格闘技関連の商品を販売しているだけでは「格闘技の聖地」と呼ばれることはなかっただろう。
インターネットのない時代には東京で行われた格闘技の大会の結果を店頭にいち早く掲示するなど、昔からこの地方の格闘技ファンに向けて様々な形のサービスを提供してきたことが、多くのファンの心を掴んだと言えるだろう。また、現在でも愛知県内で格闘技イベントが開催される際には大会のスポンサードをしたり、チケットを販売したりするなど大会運営に協力をしている。

GSB名古屋を主宰する坪井淳浩さんは
若き日の魔裟斗と拳を交えた元プロの格闘家
公武堂MACSビルの2~3階と名古屋市緑区で総合格闘技道場GSB名古屋を運営する坪井さんは、公武堂の創業と同じ1972年生まれの格闘家だ。20歳の頃にシュートボクシング(パンチやキック、投げ技の他、立った状態で関節技をかけることが認められた総合格闘技)のジムに入門してプロのライセンスを取得。そこから約20年間、国内外の様々なリングに立ち、戦いに挑んできた。


本人は「タイトルに縁のない中途半端な選手だった」と謙遜するが、1998年10月には後にK-1世界王者に輝いた魔裟斗選手と対戦。5ラウンドの判定負けとなったが、若き日のカリスマを大いに手こずらせるなど、確実にその名をリングに刻んできた。
そんな坪井さんがGSB名古屋を設立したのは2005年のこと。現役活動を続けながらジムでの指導に乗り出すことにした。
現在の会員数は2つのジムを合わせて250人ほど。小学生から大人まで幅広い年代の男女が通い、総合格闘技の技術を習得する「グラップリングクラス」、ブラジリアン柔術のテクニックを磨く「柔術クラス」などに分かれて、それぞれ汗を流しているという。
講師陣も充実。日本シュートボクシングの現バンタム級チャンピオンでRIZINをはじめ、日本やアジア圏のリングで活躍を見せる佐藤執斗選手や、今年8月のワールドマスターズで3位になるなど日本トップレベルの黒帯柔術家として世界も注目を集める加古拓渡選手などが、基本スキルはもちろん格闘家としての心構えなども指導してくれる。




成熟した格闘技文化を目指して
名古屋ファイトフェスなどの興行を運営
ジム経営と並行して坪井さんが力を入れているのが、格闘技イベントの運営だ。後進を育成して格闘技人口の底辺を拡大することの必要性を感じ、アマチュアの格闘家が集う場所を提供しているという。
「月に2回ほど、アマチュアの選手に広く門戸を開放して、流派を問わず誰でも参加できる練習会を開いたのがきっかけです。空手家やボクサーなど様々な競技に取り組んでいる人が参加してくれました。中には関西や北陸といった遠方から来てくれる人もいたほどです」。
坪井さんがこうした取り組みを始めた理由は、選手たちのモチベーションをアップさせたいという思い。
「アマチュアといえども、ステップアップする場所がないと選手のモチベーションは上がりません。格闘技を広めていく市場を作りたいと思って、この20年ぶれずに続けてきました」。
坪井さんの思いから始まったのが、今も定期的に続いているアマチュアの格闘家が集まるイベント「名古屋ファイトフェス」だ。若宮大通公園の若宮広場などにリングを設置して行われるストライキングチャレンジ(安全面に配慮したアマチュアのシュートボクシングの大会)である。
参加する選手は小学生から大人まで幅広い。女性のアマチュア格闘家も参加し、1日で100試合近くがマッチメイクされる一大イベントだ。楽しみにしているファンも多く、毎回数百人の観客が訪れるという。

「名古屋ファイトフェスをもっと広めていきたいと考えています。例えば、商店街の盆踊りとコラボして地域活性化に繋げても良いのではないかと思いますし、アジアから選手を呼んできて草の根の国際交流イベントを開催するのも面白いのではないかとも考えています。格闘技にはどうしても野蛮なイメージが付き纏ってしまいますが、きちんとしたルールや仕組みを作ることで一つの文化として成熟させることができると信じて取り組んでいます」。
名古屋ファイトフェスのほかにも、シュートボクシングのプロ興行のプロモートも行っているという坪井さん。持ち前のアイデアとバイタリティを発揮し、名古屋の格闘技文化を支えていってくれることだろう。
【GSB名古屋主催の格闘技イベントの予定】
名古屋ファイトフェス25
日時:2025年11月9日(日)
場所:若宮大通公園若宮広場(名古屋高速高架下)
内容:アマチュア格闘家のための野外格闘技イベント。小学生から大人まで腕に自信を持つ猛者たちが集まる。
ヤングシーザーカップセントラル38
日時:2025年11月23日(日)
場所:ホテルプラザ勝川(春日井市)
内容:プロの格闘家による大会。地元出身の竹野元稀(風吹ジム)が最後の勇姿を見せる。

https://www.nagoya-fightfes.jp
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2025 / vol.47
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