名城大学女子駅伝部 密着レポートvol.9
託されたもの、引き受けるもの――2026シーズンの新体制が歩み出す

2025年10月の全日本大学女子駅伝は3位、12月の富士山女子駅伝は4位。悲願として掲げてきた王座奪還を果たすことができなかった。それでも、止まっている時間はない。卒業を控えた4年生が名城の価値観を言葉にし、新キャプテンを軸に新体制が動き出す。悔しさを胸に、2026年シーズンを担う選手たちは、すでに次の一歩を踏み出している。

卒業を控えた4年生が語る、名城らしさのかたち
名城大学女子駅伝部の一時代を築いてきた4年生。王座奪還を目標に掲げて戦った最後のシーズンを終え、この代が何を大切にし、何を後輩に託そうとしているのかを聞いてみた。
表現は違えど、普段の関係性と練習への向き合い方こそが、名城の強さを支えてきたという認識が共通していた。4年間で大事にしてきた名城らしさについて、彼女たちの言葉は驚くほど同じ方向を向いている。
「練習ではピリッとした空気で集中し、普段はみんなで仲良く和気あいあいと過ごす。そのメリハリが名城らしさ」(米澤奈々香選手)
・「常に王座としての姿勢を崩さないこと」(柳楽あずみ選手)
・「笑顔」(上野寧々選手)
・「仲の良さ」(石松愛朱加選手・大河原萌花選手)

自世代の強みについても「とにかく強い絆」「常に明るさが絶えない」「元気」「仲の良さ」「勝負強さ」と、自然と声が重なる。原田紗希選手は、この世代を「良くも悪くも個性が強くて、我が強い」と表現するが、互いに遠慮せずぶつかり合いながら、高い目標に向かって進んできた4年間だったことが伝わってくる。
後輩たちに受け継いでほしいことについては、それぞれ表現は違うものの「王座奪還という目標を掲げ続けてほしい」「仲の良さを大切にしてほしい」と、指し示すのは同じ方向だ。
今年、実業団に進む選手は4名。米澤奈々香選手は前キャプテンの谷本七星選手が所属するJP日本郵政グループ女子陸上部へ、原田紗希選手は天満屋陸上競技部へ、石松愛朱加選手はスターツ陸上競技部へ、大河原萌花選手は三井住友海上女子陸上競技部へと進む。彼女たちはいずれも、「結果だけでなく、日々の姿勢や積み重ねが自分を支えてきた」と振り返る。名城での4年間で培った価値観が、競技人生の確かな軸になっていくのだろう。

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新体制を導くスローガンと新キャプテンの姿勢
2026年、名城大学女子駅伝部は新体制で歩み出す。掲げたスローガンは『貫く信念~強い名城、私が創る~』だ。
このスローガンに込めた「信念」とは、どんな状況にあっても駅伝二冠を目指す気持ちを忘れず、日々の言動や行動で示し続けること。そして、悔しさを胸に刻みながら、前へ進み続ける姿勢を指す。
「強い名城」は、三つの力から成り立っている。明確な目標を持ち、継続して練習を積み重ね、一人で走り切る力を育てる「走力」。学年や立場を越えて信頼し合い、このチームで優勝したいと思える関係性を築く「団結力」。そして、思いやりや挨拶、自立、凡事徹底を大切にする「人間力」。この三つが、今年の名城の土台だ。
新キャプテンとしてチームを導くのが瀬木彩花選手だ。瀬木選手は、リーダーに就くまでの迷いを率直に語る。「去年の駅伝シーズンは思うようにいかず、どちらの駅伝ともメンバー外で自分に自信がなくなり、“強い名城”のキャプテンを本当に任せてもらっていいのか、という不安が正直すごくあったんです。でも先生から『今、一番必要なのはプレッシャーに勝つこと』と言われました。ここで逃げたら自分は変わらないと思って、引き受けることを決断しました」。

富士山女子駅伝を外から見た経験も、意識の変化につながったという。「他大学は、『4年生のために走りたい』『誰かを勝たせたい』という言葉がすごく多くて、それがチームの力になっていると感じました」。キャプテンになってからは、駅伝で勝つために何が必要なのか、チームのために自分は何ができるのかを考える時間が、明らかに増えたという。「私はエースタイプではないけれど、頑張っている姿を同期や後輩に見せて、『この人についていきたい』と思ってもらえる存在でありたいです」。
一方で、瀬木選手が重視しているのは基本の徹底だ。「去年を振り返ると、日常生活でも練習でも、まだ完璧にできていない部分がたくさんありました。ドリルやストレッチも、慣れでなんとなくやってしまっているところがある。細かい部分を一から見直して、意味を考えて徹底していけば、チームは変わっていくはずです」。その「徹底」は、生活にも及ぶ。「とても恵まれた環境で練習させてもらっていることを、当たり前だと思わないようにしたいです。ご飯を残さない、物を大切にする。そういう小さな意識が、結果的に走りにもつながっていくと信じています」。

「ひとりで抱え込まずにみんなに頼りながらやっていけばいいよ」
とアドバイスを受けたそう。
最上級生の覚悟を姿勢で示す新4年生
名城大学女子駅伝部の中核を担うのは最上級生だ。新たな立場となった心境と、その覚悟を村岡美玖選手と山田未唯選手が語る。
副キャプテンを務める村岡選手は、全日本大学女子駅伝でアンカーを任され、表彰台へと導いた立役者の一人だ。それでも本人は「狙っていたのは優勝だったので、悔しかったです」と振り返る。続く富士山女子駅伝ではメンバー入りを果たしながらも、怪我の影響で出走は叶わなかった。「あの舞台に立てなかった悔しさと申し訳なさは、今でも残っています。今年は絶対に外さない走りで、チームの優勝に貢献したいです」。そう言葉に力がこもる。
役職が決まったときの心境については「正直、自分はチームの旗振り役をするタイプではないと思っていました。でも、3年生でレギュラーとして走るようになってから、自然と責任感が生まれてきたように思います」と話す。声で引っ張るのではなく、姿勢で示す。それが自分の役割だと捉えている。「同じことをコツコツ続けたり、長いジョグを積み重ねたりするのが得意なので、日々の積み重ねで示していきたいです」。

一方の山田選手も、富士山女子駅伝を振り返り、「悔しさが一番大きい」と率直な思いを口にする。「単独走の区間で、もっと前でたすきを渡せていたら、展開は変わっていたかもしれない。そう思うと、自分の力不足をすごく感じました」。
立場の変化についての実感も大きい。「1年生のときは、先輩たちが前で流れを作ってくれて、その中で走らせてもらっていました。でも今回は上級生として、『結果を出さなきゃいけない』立場だったので、その重みを初めて実感しました」。だからこそ、最後の一年に向けた意識も変わったという。「もう一度、基礎からしっかり積み上げていきたい。前半シーズンを大事にして、駅伝シーズンで同じ後悔をしないようにしたいです」。

山田未唯選手
1年目で知った現在地と、その先の景色
エース候補として名城に加わり、1年目で駅伝の舞台に立った金森詩絵菜選手、細見芽生選手、橋本和叶選手。富士山女子駅伝を終えた3人が新シーズンに向けての意気込みを語ってくれた。
怪我で思うように走れない時期を乗り越えた金森選手にとって、富士山は大学初の駅伝で、しかも第一走者だ。「雰囲気も分からないまま、ただ走り抜けたという印象です」。強く心に残ったのは、結果よりも応援の存在だったという。「報告会で、本当に多くの方に支えられていることを実感して、胸を打たれました。次こそは、違う結果を見せたいです。日本一を目指すなら、去年と同じでは足りません。前半シーズンからしっかり走り込んで、力をつけた状態で駅伝シーズンに戻ってきます」。
細見選手は、先頭争いに絡めない位置からの単独走となったレースを冷静に振り返る。「アンカーの和叶を少しでも楽にさせたいと思って前を追いましたが、好調だった前半と比べて後半は差が詰められず、一人で粘り切る力がまだ足りないと感じました」。トラックの感覚がそのまま通用しない難しさも実感しながらも「次は流れを変えられる存在になりたいです」と意気込む。
長い上り坂を含むアンカー区間を任された橋本選手は、たすきの重みを体で知った。「すでに苦しい状況ではありましたが、グラウンドで待っている仲間を思うと、最後まで力を出し切ることができました」。一方で、上り坂の対策やロードでの準備など、課題も明確になったという。「2年生として、姿勢と走りで引っ張る存在になりたいです」。

勝ち切れなかった悔しさも、積み重ねてきた誇りもすべて抱えて、チームは次のスタートラインに立っている。

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