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ジャパンラグビートップリーグ トヨタ自動車ヴェルブリッツの感染防止対策をレポートしました
パロマ瑞穂ラグビー場で行われた
ジャパンラグビートップリーグ2021開幕戦の
“静かなる熱気”をレポート!
2月20日(土)、遂にジャパンラグビートップリーグ2021が開幕した。当初予定から1カ月以上遅れたのは、1月に複数のチームで新型コロナウイルス感染症陽性者が確認されたためだ。検査の頻度を増やすなど、感染防止対策をそれまで以上に徹底して再スタートに臨み、全16チームが一斉検査で陽性者を出すことなく、有観客での開幕戦を迎えることができた。
トヨタ自動車ヴェルブリッツのホームゲームとなる当日、会場のパロマ瑞穂ラグビー場には、試合開始の1時間以上前から観客が次々と訪れていた。ただし、チケット販売は5,000人を超えないよう制限されており、来場前からのマスク着用が呼びかけられている。口元を覆ったラグビーファンたちは、老若男女とも、会話は控えめながら瞳をイキイキと輝かせてスタジアム入口に並んだ。ソーシャルディスタンスが呼びかけられる中での入場は、係員が観客一人ひとりに吹きかけるアルコールスプレーで手指消毒を済ませ、検温を行ってからチケットのチェックという流れだ。係員はマスク、フェイスガードにビニール手袋を着用し、チケットは係員が目視確認した後に観客が自ら半券を切るなど、接触を減らす工夫が導入されていた。
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観客席では、目に付くあちこちに「観戦に関するお願い」が貼り出されていた。声を出しての応援ができないのはもちろんのこと、フラッグやタオルマフラーを振り回す行為は禁じられている。この日の試合では、チームからファンに渡される応援用のボード兼ハリセンの配布も控えられていた。観客たちは基本的には1席おきに座る。家族など2〜3人のグループはひとかたまりとなって、隣と距離を置いていた。
試合20分前には両チームの選手がグラウンドに出て、ウォーミングアップを開始。静かな観客席にまで選手たちのかけ声が聞こえてくる。10分前には選手紹介のアナウンスが流れ、一人ひとり紹介されるたびに温かい拍手がわき起こった。トヨタ自動車ヴェルブリッツのナンバーエイト、元ニュージーランド代表“オールブラックス”のキャプテンであるキアラン・リード選手や、オーストラリア代表主将でこれがトップリーグデビュー戦となる、フランカーのマイケル・フーパー選手の名が呼ばれると、拍手のボリュームは一段上がった。この両選手と東芝ブレイブルーパスの日本代表リーチ マイケル選手を合わせて、実に代表の主将3名がひとつの会場に揃うという豪華な顔ぶれだ。
そしていよいよ試合開始直前、選手たちはコート中央で円陣を組む前にコートサイドに整列し、まぶしげに観客席を見上げる。ファンも選手も、スタジアムに集うこの日を心の底から待ちわびていたのだ。
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試合開始直後からの激しいタックルに、声援を送れない観客席から声にならないどよめきが。前半開始4分、トヨタ自動車ヴェルブリッツのヘンリー ジェイミー選手によるトライで先制。トヨタが主導権を取る形で進む。前半25分、東芝ブレイブルーパスの選手が倒れるシーンがあったが、駆けつける医療スタッフや選手を運ぶ担架スタッフたちが防護服をまとって感染症予防対策をしているのは、今シーズンからの新たな光景だった。また、ハーフタイムの場内アナウンスでは、「観戦に関するお願い」のほか、万一に備えて観戦エリア・席番号を自身で控えておくよう注意喚起があった。
前半戦、会場を最も沸かせたのはヴェルブリッツのフルバック、ウィリー・ルルー選手。驚異的な脚力と変幻自在のステップを活かしたトライを決めて試合の主導権をチームにもたらした。
24対7、ヴェルブリッツのリードで始まった後半戦。開始10分、選手交代でマイケル・フーパー選手が登場すると大きな拍手がスタジアムに響く。その代名詞ともいえる得意の“ジャッカル”を決めるなど、わずかな出場時間ながらその存在感を示した。しかしその後、ブレイブルーパスはリーチ選手らが連続トライを決め、1点差まで追い上げる展開に。強豪チームの激しい追い上げを受けながらも、34対33でヴェルブリッツが開幕戦白星を手にした。
スター選手の共演、ヴェルブリッツの地元初戦勝利など、スタジアムを訪れた人々は待ちわびたこの日の試合内容に満足した様子で帰路についていく。来年の新リーグ発足を控え、「トップリーグ」として最後の1年となる今シーズンだが、今後も期待以上の熱戦が繰り広げられそうだ。
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