aispo! 10周年特別対談 楢﨑正剛 × 寺本明日香
スポーツの過去、今、未来へ
長年にわたり名古屋グランパスの、そして日本代表のゴールを守ってきた楢﨑正剛さんと、体操女子日本代表のエースとして2大会連続でオリンピックに出場した寺本明日香さん。愛知県で活躍し、過去に『aispo!』の表紙を飾った2人が創刊10周年を記念し、愛知のスポーツの過去・今・未来について語り合った。
『aispo!』10周年を機に
始めて対談を行う2人
『aispo!』は今年で発刊10周年を迎えます。2017年には、楢﨑さん(第12号)と寺本さん(第15号)に表紙を飾っていただきました。
楢﨑:2017年は名古屋グランパスがJ2で戦っていた年ですね。
寺本:楢﨑さんのお顔の表情が今とは少し違いますね。
楢﨑:違いますか?
寺本:選手の顔をしています。
楢﨑:確かに。プレー中の写真なので、今とは違ってスポーツ選手の顔をしていますね(笑)。
寺本:私はリオデジャネイロオリンピックの翌年で、この時はまだ大学生でした。
(※以下、★の箇所までは本誌と同内容)
『aispo!』ではこの10年間でさまざまなスポーツ、アスリートをご紹介してきました。この10年間で印象に残っているスポーツの大会や出来事はありますか。
楢﨑:この10年間でいえば、2017年は大変でした。グランパスが初めてJ1から降格した年で、1年で復帰できなければずっとJ2にいるんじゃないかという危機感がありました。当然ほかのチームは一泡吹かせてやろうと挑んでくるので、J1の経験があっても簡単には勝てません。選手もガラリと変わり、降格した悔しさを感じた選手が数人しか残っていないという難しさもありました。昇格をかけたプレーオフに勝利し、1年でJ1復帰を決められて、ほっとしたことを覚えています。すごく印象に残っている年です。
寺本:自分のことではないのですが、2017年頃からフィギュアスケートの大会をよく観に行くようになりました。同級生の大庭雅選手の応援がきっかけで、全日本選手権やNHK杯、グランプリシリーズも観に行きましたね。
楢﨑:それにしても、記念すべき第1号の表紙がグランパス(田中マルクス闘莉王選手)なんですね。
今後、どんな選手を『aispo!』で取り上げてほしいですか?
楢﨑:私は地元で育った選手を取り上げてほしいと思います。思うように結果が出せていなかったり、まだ広く知られていない人もいますが、そんな選手にこそ注目してほしいですね。
寺本:私も同感です。特に愛知で育った体操の若い選手たちのことをもっと知ってほしいです。
引退後は共に後進を
育てる指導者の道を歩む
寺本:スポーツ界も10年経つと、かなり世代交代が起きていますね。私は2012年のロンドンオリンピックでは代表チームの最年少でしたが、2016年のリオデジャネイロオリンピックでは最年長でキャプテンになっていました。キャプテンとしてどうあるべきか色々と考えるようになって、自覚が芽生えていった10年でした。
楢﨑:サッカーも選手の入れ替わりが激しいです。私は1999年にグランパスへ移籍して、先輩たちについていこうと頑張っていたら、あっという間に一番在籍年数が長くなっていました。寺本さんと同じで、気持ちの準備ができていないうちにキャプテンを任されることになって……。でも20年も同じチームにいられたことは本当に珍しいことなので、とてもありがたいことだと感じています。
楢﨑さんは2019年に、寺本さんは2022年に現役を退きました。引退後はどのような活動をしていますか?
楢﨑:名古屋グランパスの育成部門であるアカデミーの指導者になりました。育成に携わりたいという自分の思いもあり、とてもやりがいを感じていました。現在はトップチームの「アシスタントゴールキーパーコーチ」をしています。また同時に、「日本のゴールキーパーが世界で活躍できるような手助けをしたい」という思いから、日本のレベルアップに貢献できる活動とグランパスの広報やホームタウン活動などに携わる「クラブスペシャルフェロー」という役職を新設していただき、後進の育成にも携わっています。
寺本:私は現役を終えた直後は燃え尽きてしまったというか、体操が嫌いになっていました。「焼肉屋さんをやりたい!」なんて考えていたり(笑)。ですが、至学館大学とご縁があり、2022年の9月から体操競技部女子の監督兼コーチを、翌年から体育科学科の助教を務めています。指導経験がゼロの状態でスタートして、最初は自分が教わってきた方法で指導を行っていたのですがうまくいかなくて……。現場で選手1人1人を見ながら、指導法を確立している最中です。
楢﨑:サッカーの場合は指導者のライセンス制度があり、現役を続けながら受講していました。指導者講習で学んだ知識はありましたが、やはりプロの現場で自分自身が指導を受けてきたことも役に立ちましたね。また、自分の子どもがサッカースクールに通っているので、そこのコーチが小さい子どもたちを教えている現場を見る機会もありました。そうしたさまざまな経験を生かしながら、そこに自分なりの考えも加えて指導しています。
(★ 以下、本誌記事の続き)
夢と希望を与えてくれる
スポーツの力
愛知県はサッカーや体操以外にも多様なスポーツが盛んで、“スポーツ王国・愛知”と称されるほどですが、お2人はどのようなイメージを持たれていますか?
寺本:私はフィギュアスケートのイメージが強いですね。体操を始める前は鳥取県に住んでいて、親の転勤で愛知に来ました。両親は愛知に行くならフィギュアスケートをやらせたいと思っていたそうですが、私が鉄棒をやりたいと言って、体操を始めることになりました。フィギュアは靴のブレードが怖くて駄目でした(笑)。
楢﨑:体操も十分怖いですよ(笑)。私も「愛知県=フィギュアスケート」というイメージがありますね。あとはやはり中日ドラゴンズ。実際に住んでみても、ドラゴンズは本当に地元に根付いて、文化になっていると感じます。グランパスも自分が名古屋に来た当初よりは随分認知が上がっていますが、ドラゴンズに比べたらまだまだです。
寺本:プロ野球やJリーグ以外にも、Bリーグ、SVリーグ、Tリーグなど、色々なリーグがありますが、地域に根付いてファンが増えることによって、競技の活性化に繋がると思います。競技によっては資金面などで運営が大変だという話も聞きますので、いかに地域とよい関係を築けるかが重要なのかもしれません。
楢﨑:そのとおりです。プロスポーツは協賛してくれる企業や地域の協力があってこそ。そのためにも、スポーツが持つ魅力を知ってもらうことが大事です。『aispo!』をはじめとしたメディアで発信していただき、多くの人が興味を持ってくれるということが第一歩になるのではないでしょうか。
これから先、スポーツの振興・発展には何が必要だと思いますか。
楢﨑:競技そのものの魅力をアピールすることが大事ですし、競技間で刺激しあって、切磋琢磨していくことも必要だと感じています。また私自身、高校生の時にJリーグが開幕したことで大きな目標ができ、モチベーションが高まりました。その経験から、プロスポーツクラブは地域の子どもたちに夢を与えられる存在であってほしいと思っています。
これからの10年。スポーツの存在価値、意義はどのように変化していくと思われますか。
寺本:過去も、現在も、それに未来も、スポーツの存在価値は変わらないと思います。アスリートたちが競技に打ち込む姿やメダルを獲得する姿、勇気づけられる言葉などによって、これからも多くの人に感動を与えてくれると思います。
楢﨑:東日本大震災などの大きな災害や、コロナ禍の時もそうでしたね。スポーツには社会を元気づけるパワーがあると私は信じています。
PROFILE
楢﨑正剛
ならざき せいごう。1976年4月生まれ。奈良県出身。奈良育英高等学校を卒業後、横浜フリューゲルスに加入。1999年に名古屋グランパスに移籍し、チームの中心選手として活躍。2010年シーズンはJリーグ初優勝に貢献し、ゴールキーパーとして初のMVPに輝いた。日本代表としてもワールドカップに4大会連続で選出。2019年に引退し、現在は名古屋グランパスのクラブスペシャルフェロー、アシスタントGKコーチを務める。
寺本明日香
てらもと あすか。1995年11月生まれ。小牧市出身。小学1年生の時にレジックスポーツ・レッツ体操クラブで体操を始める。2012年ロンドン、2016年リオデジャネイロと2大会連続でオリンピックに出場。リオではキャプテンを務めるなど、長きにわたり女子体操界を牽引した。2022年の全日本選手権を最後に引退し、2022年9月より至学館大学女子体操競技部監督に、翌年4月には健康科学部 体育科学科の助教に就任した。
『aispo!』10年の歩み
愛知県内のプロ・実業団を中心としたスポーツチームや愛知ゆかりの選手、大会情報などを紹介するフリーマガジンとして2014年6月に創刊。年4回(6月、9月、12月、3月)発行、名古屋鉄道の主要駅や県内の主要施設にて配布中。県内の「みる」スポーツ情報ポータルサイト『aispo!web』ではマガジンのほか、WEB限定配信記事も公開している。
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