ハンドボール「リーグH」始動!
ハンドボールの新時代到来
9月6日、ハンドボールの新リーグが開幕した。その名も「リーグH」。
世界でもトップのリーグを目指して始動した「リーグH」とは、どんなリーグになるのか。
前身の日本ハンドボールリーグからの変更点や、新リーグの見どころについて紹介する。
世界トップレベルの白熱した試合が展開
9月6日に行われたジークスター東京対ゴールデンウルヴス福岡のオープニングマッチで新たな一歩を踏み出した「リーグH(エイチ)」。ハンドボールの頭文字を取って「H」と名付けられたが、そこには地域とともに歩む(ホーム)、希望をもって進む(ホープ)、「英知(エイチ)」を集め成長するといった意味も込められている。
参加するのは、前身の日本ハンドボールリーグと比べ、男子が1チーム増の14チーム、女子は変わらず11チーム。新リーグでは地域密着を掲げ、それぞれのチーム名にホームタウンとなる地域名を入れることになっている。愛知県内に本拠地を置くのは「豊田合成ブルーファルコン名古屋」「大同特殊鋼Phenix TOKAI」「トヨタ車体ブレイヴキングス刈谷」「HC名古屋」の男女4チーム。全国で最もチーム数の多い地域となっている。
新リーグ結成の目的の一つが競技力の向上だ。選手の競技力を世界トップレベルまで引き上げるとともに、次世代を担う人材の育成も視野に入れている。そのための取組が試合数の増加だ。来年5月まで行われるレギュラーシーズンでは、女子が2回戦総当たりから3回戦総当たりに変更。1チームあたり10試合も増えることになる。男子もチーム数が増えたことに伴い2試合増える。
また、6月に実施されるプレーオフへの進出チーム数が、男子は上位4チームから6チームに、女子は同4チームから5チームに変更となった。これにより、力のあるチーム同士の白熱した試合が多くなることも期待される。
オールスター戦など新たな取り組みを実施
リーグHになって新たに行われるのがオールスター戦だ。各チームのスター選手が勢揃いし、最高峰のプレーを披露してくれることだろう。魅力ある試合を開催することによって、ハンドボールファンの拡大を目指している。
また、リーグ戦と並行してカップ戦も実施。リーグ戦では出場機会の少ない若手選手の起用を積極的に促していく。若手選手に実戦経験を積む場所を与えることで、リーグ全体、ひいては日本ハンドボール界全体の選手層の底上げを図っていく。
リーグHが目指しているのはアジアナンバーワン、世界でもトップレベルのリーグになること。ダンスや音楽などの分野と連携して試合会場を盛り上げるなど、エンターテインメント性を高めていくという。
目まぐるしく攻守が入れ替わるスピーディーな試合展開、選手同士が体をぶつけ合う迫力あるゴール前での攻防、スカイプレーに代表されるダイナミックかつアクロバチックなプレー……。
「空中の格闘技」とも呼ばれるハンドボールは、ヨーロッパではサッカーに匹敵するほどの人気スポーツ。リーグH開幕をきっかけに一度会場へ足を運んでみてはいかがだろうか。ハンドボールの魅力が味わえるはずだ。
ハンドボール王国・愛知の実力
20世紀初頭にヨーロッパで生まれた(諸説あり)ハンドボール。世界で約400万人がプレーしていると言われている。同じボールスポーツのバレーボール(約5億人)やバスケットボール(約4.5億人)と比べると少ないが、国際ハンドボール連盟には210もの国・地域が加盟するなど、ワールドワイドなスポーツだ。
特に盛んなのはヨーロッパである。東京2020以前のオリンピック4大会の男子ハンドボールではフランス、デンマーク、スウェーデン、アイスランドとすべてヨーロッパの国々が決勝に進出。今夏のパリオリンピックでも、ヨーロッパ勢がメダルを独占した。パリ・サンジェルマン(フランス)やFC バルセロナ(スペイン)など、サッカーファンならお馴染みの世界有数のサッカークラブがハンドボールチームを保有していることからも、ヨーロッパでのハンドボール人気が伺える。
一方、日本国内に目を移すと、日本ハンドボール協会への競技登録者数はおよそ9万5千人。そのうち75%を中高生が占めている。都道府県別で見ると、最も競技人口が多いのは愛知県だ。競技登録者数は1万2578人で2位の東京都(7079人)と比べて、2倍近くにもなる。(2017年の数値)
愛知県でハンドボール人口が多い一つの理由が、1950年代に桜台高等学校のハンドボール部監督を務めていた稲石さん(故人)の存在。同校をインターハイ5連覇に導いた名将の下から多くの指導者が育ち、愛知県内の中学や高校で次々とチームを作ったことが「ハンドボール王国・愛知」の礎となっている。2024年の登録チーム数は高校男子が132チーム、女子が107チーム、中学生男子が99チーム、女子が75チームにまで増えている。
国内最高峰のリーグHからジュニア年代までの各年代に受け皿となるチームがあることも、愛知県でハンドボールが盛んな理由の一つに挙げられる。リーグHの男女25チームのうち、4チームが愛知県を拠点とするチームだ。男子ではリーグ最多の優勝回数18回を誇る大同特殊鋼Phenix TOKAI、2020年からリーグ4連覇中の豊田合成ブルーファルコン名古屋、パリオリンピックの日本代表を多数輩出したトヨタ車体ブレイヴキングス刈谷といずれ劣らぬ強豪揃い。女子のHC名古屋も岡田邦裕氏を新たなGMに据え、着実に地力をつけてきている。
リーグHのトッププレーヤーたちのプレーを間近に見られるチャンスが多いのも、ハンドボールを始めようとしている子どもたちにとっては大きなこと。新リーグ移行に伴い、リーグHの各チームは下部組織を保有することになっており、次代の日本を代表する選手の育成にも期待がかかる。リーグH開幕を機に愛知のハンドボール熱がますます高まることを期待したい。
愛知4チームの注目選手
トヨタ車体ブレイヴキングス刈谷
23 吉野樹
PROFILE
生年月日/1994年7月
出身地/埼玉県
身長/183cm 血液型/O型
出身校/明治大学
ポジション/レフトバック
経験豊富なビッグシューター
肩の強さとジャンプ力を活かしたパワフルなシュートが魅力。2017-18シーズンは新人ながらゴールを量産し、最優秀新人賞を受賞した。その翌シーズンにはチームの初優勝に貢献し最高殊勲選手賞に輝いている。日本代表としてパリオリンピックや世界選手権に出場するなど国際経験も豊富。頼れる存在だ。
豊田合成ブルーファルコン名古屋
19 石嶺秀
PROFILE
生年月日/2000年11月
出身地/沖縄県
身長/180cm 血液型/B型
出身校/東海大学
ポジション/ライトバック、ライトウィング
サイドを制圧するイケメンシューター
2022年に加入した左腕からのシュートが持ち味のサイドプレーヤー。チームではライトウィングやライトバックを担当し、サイドからゴール前へと鋭く切り込んでいく。日本ハンドボールリーグが2023年に実施した「JHLイケメングランプリ」で初代王者に輝くなど、甘いマスクで女性ファンに人気。
大同特殊鋼Phenix TOKAI
20 可児大輝
PROFILE
生年月日/2000年4月
出身地/愛知県(春日井市)
身長/186cm 血液型/B型
出身校/明治大学
ポジション/レフトバック、センターバック
初代得点王候補の若き司令塔
春日井市出身の若き司令塔。2023-24シーズンにチームに加入すると、持ち前のシュート力でチームの中心へと成長した。奪ったゴールの数は159。得点王、フィールド得点王、最優秀新人賞の個人タイトルを獲得した。今シーズンは厳しいマークが予想されるが、それを吹き飛ばす活躍を見せてくれることだろう。
HC名古屋
14 井桁晴香
PROFILE
生年月日/2000年12月
出身地/愛知県(名古屋市)
身長/161cm 血液型/O型
出身校/筑波大学
ポジション/ライトバック
名古屋生まれのゴールゲッター
2023-24シーズンは新人ながらリーグ4位の113得点をマーク。チームの中心選手として存在感を発揮した。地元名古屋市の出身。2年目となる今シーズンは、得意のフェイントからのシュートを武器に、チームの得点源として、昨シーズン以上の活躍に期待がかかる。コートネームは「ハルカ」。
愛知の4チーム
トヨタ車体ブレイヴキングス刈谷
練習拠点:豊田市
創部:1967年
優勝回数:日本ハンドボールリーグ1回/日本ハンドボール選手権2回/全日本社会人ハンドボール選手権4回
チーム名の由来:ハンドボール界の勇敢な王者になりたいとの思いが込められている
豊田合成ブルーファルコン名古屋
練習拠点:稲沢市
創部:1975年
優勝回数:日本ハンドボールリーグ4回/日本ハンドボール選手権5回/全日本社会人ハンドボール選手権1回
チーム名の由来:小柄ながら俊敏な動きで勇猛果敢に攻撃するファルコン(隼)のようなハンドボールを目指す
大同特殊鋼Phenix TOKAI
練習拠点:名古屋市南区
創部:1964年
優勝回数:日本ハンドボールリーグ18回/日本ハンドボール選手権14回/全日本社会人ハンドボール選手権18回
チーム名の由来:1976年に4大大会制覇を逃した時、「不死鳥のように蘇ろう!」との思いからその名が付いた
HC名古屋
練習拠点:名古屋市瑞穂区
創部:1967年
優勝回数:日本ハンドボール選手権1回(ブラザー工業ハンドボール部時代)
チーム名の由来:地元になじみがあり、地域に根付いた女子チームを目指していくとの思いが込められている
Schedule — 9月後半のホームゲーム —
9月21日(土)
トヨタ車体ブレイヴキングス刈谷 vs トヨタ紡織九州レッドトルネードSAGA
会場:名古屋市枇杷島スポーツセンター
9月21日(土)
HC名古屋 vs プレステージ・インターナショナル アランマーレ富山
会場:名古屋市枇杷島スポーツセンター
9月28日(土)
豊田合成ブルーファルコン名古屋 vs 安芸高田わくながハンドボールクラブ
会場:豊田合成記念体育館エントリオ
9月28日(土)
トヨタ車体ブレイヴキングス刈谷 vs アルバモス大阪
会場:スカイホール豊田
9月29日(日)
大同特殊鋼Phenix TOKAI vs ゴールデンウルヴス福岡
会場:東海市民体育館
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