日本一のチームから世界へ羽ばたく
横山智那美が見つめる先
中学時代から目標は「常に日本代表」
将来の目標をバスケットボール選手に定めたのは小学生の時だった。 大阪府出身の横山智那美選手は、4歳上の姉の影響で小学2年生からバスケを始めた。地元大阪にあるバスケの名門・大阪薫英女学院中学校に進学し、「常に日本代表を目指す」ことを目標に全国大会などで活躍。個人でもU16日本代表選手に飛び級で選出されるなど、順調に階段を登っていった。
大阪薫英女学院は高校も全国トップレベル。今年夏のインターハイでは準優勝を飾っている。そのままエスカレーターで進学していたとしても、横山選手は高校屈指のプレーヤーとして注目を集めていたことだろう。だが、桜花学園高等学校の井上眞一監督に誘われると、「日本一のチームで、日本一のプレーヤーと切磋琢磨したい」と親元を離れ、あえて厳しい場所でバスケをする道を選択する。
悔しさを糧にして更なる成長を果たす
桜花学園高等学校は言わずと知れた高校女子バスケの強豪校。横山選手は、2年生の冬のウインターカップで全国大会通算70度目の優勝という偉業を達成している。しかし3年生となり迎えた夏のインターハイでは、高校女子バスケ界に君臨する女王が3回戦で敗れるという波乱が起きた。4大会連続の頂点を目指した桜花学園だったが、接戦の末、優勝した京都精華学園高等学校に終了間際、逆転負けを喫した。キャプテンの横山選手は、「相手がどうこうというより自分たちが流れを崩れてしまったので、そこが一番悔しい。粘り強さが足りなかった」と自責の念にさいなまれた。
「日本一」に人一倍のこだわりを持つ横山選手にとって、「自分のキャリアの中でも最も苦しい時期だった」という。しかし、座右の銘にしている「本当に競争心がある人っていうのは、悪い状況の時こそコートに出て練習するものさ 」という言葉で自らを奮い立たせて体育館へ向かい、悔しさを打ち消すように練習に没頭した。
学校を離れ、海外遠征を経験したことも気分転換となり、次へ向かう刺激となった。8月上旬にオーストラリアのNBAグローバル・アカデミーで開催された「バスケットボール・ウィズアウト・ボーダーズ・キャンプ・アジア2022」。八村塁選手(ワシントン・ウィザーズ)、角野亮伍選手(シーホース三河)、富永啓生選手(ネブラスカ大学)らも高校時代に参加した若手の登竜門で現役NBA、WNBA(アメリカの女子プロバスケリーグ)の選手、コーチなどから指導を受けた。
アジアの各国から選出された18歳以下のトッププレイヤーとチームを組み、実戦練習を行う。自分の特徴を理解している仲間とのプレーとは異なり、サバイバルの中で、自分を表現する必要性を痛感する。「とりあえず自分をアピールしないと周りの選手に自分を評価されなくて、ボールも回ってこない。それは初めての体験でしたね。でも、もらったチャンスを絶対に掴みたかったので、自分からリバウンドも飛び込んでボールを奪いにいったり、シュートを決めて周りの選手に信頼されてボールをもらったり。アピールすることができたかなと思います」。その言葉の通り、アピールに成功した横山選手はガールズ ディフェンシブMVP、ガールズ オールスターズに選出された。
U18日本代表として出場した今年9月の「FIBA U18女子アジア選手権大会2022」でも横山選手はアシスト王、オールスターファイブを受賞。「アジアでは戦える手応えを得たので、次は世界の選手と戦いたいという新しい目標ができました」と笑顔を輝かせる。
高校生活の集大成、ウインターカップへ
今年度より新設されたリーグ戦「U18日清食品トップリーグ」で、桜花学園高等学校はインターハイで敗れた京都精華学園高等学校戦を含む7試合に全勝し、初代王者に輝いた。残すタイトルは12月23日(金)から始まる「ウインターカップ2022」だ。「一番はウインターカップで優勝すること。このチームでできる最後の大会なので、3年生はやり残したことがないように必ず優勝したいと思っています。目標に全員で向かう準備はできています」と自信をにじませる。個人としても、「次のステップに向けて自信をつけて高校を卒業したい。将来世界のチームの中で戦いたいので、まずは日本代表に入ることが目標です。自分が日本代表のエースになるくらいの気持ちで頑張りたいです」と意気込む。
自身が掲げる理想像について、「みんなに目標とされる選手になりたいです。観ている人に“自分ももっと努力しよう”という向上心を与えられる選手になりたいと思います」と語る横山選手。そのために、これからもあくなき向上心で高みを目指し続けていくことだろう。
PROFILE
よこやま ちなみ。2004年生まれ。大阪府出身。小学2年生からバスケットボールを始める。名門・大阪薫英女学院中学校を経て桜花学園高等学校に進学。エースやキャプテンとしてチームを牽引し、1年・2年時にはインターハイ制覇に大きく貢献。現在は高校生活最後の大会となるウインターカップ2022制覇に向けて、日々練習を重ねている。U18日本代表としても、FIBA U18女子アジア選手権大会2022などで活躍。
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