「強くて愛されるチームを作りたい!」
中日ドラゴンズ・井上一樹新監督が就任会見で決意を語る
大勢の記者やカメラマンに期待の大きさを感じる
来季から中日ドラゴンズの陣頭指揮を執る井上一樹新監督の就任会見が10月10日に中日ビルで行われた。鮮やかなドラゴンズブルーのネクタイを締めて会見に臨んだ新指揮官は「持ち前の“チームを明るくする”という長所を前面に出しながら、いいチームを作っていきたい」と決意を表明。3年連続で最下位に沈んだチームの再建に意欲を見せた。
普段は窺い知ることのできない会見の様子と合わせてリポートする。
井上新監督の就任会見が行われたのは今年4月に新装オープンした中日ビル内のカンファレンスルーム。会場にはひな壇が設置され、その後ろには金屏風に球団旗。いかにも記者会見場という雰囲気に。
用意された記者用の椅子は約50脚。会見が始まる30分以上前には、その全てが埋まる盛況ぶり。中には、朝の人気情報番組のメインキャスターにドラゴンズ応援番組の女性MC、テレビやラジオで何試合も実況を行ってきたベテランアナウンサーの姿も。新監督への期待の高さが伺えた。
定刻になり、井上新監督が、吉川克也・球団社長と大島宇一郎・球団オーナーとともに登壇。ひな壇前に陣取っていた新聞社や雑誌社のカメラマンが一斉にシャッターを押す音とフラッシュの光が記者会見の雰囲気をさらに盛り上げた。
まずは吉川社長が挨拶。「2021年から2年間、阪神タイガースのヘッドコーチを務め、大山選手や近本選手など昨年の優勝メンバーの大半を育てた。彼は(阪神優勝の)影の功労者だと思っている。球団としてしっかりサポートするので、優勝を目指して取り組んでいただきたい」と期待感を示した。
続いて大島オーナーが「2年連続で最下位だった二軍を優勝争いまで引き上げた実績がある。若手とのコミュニケーションもしっかり取れ、モチベーターとしての能力はとても高い」と評価。球団初となる、二軍監督を直接一軍監督へ昇格させた理由を述べた。
井上新監督はやや緊張の面持ちで次のように決意を語っている。
「最初に言わなければならないのは、立浪(和義)前監督が3年間かけて蒔いた種がやっと芽を出し始めたということ。チーム力をさらに上げる責務があることを肝に銘じて取り組みたい。責任は重大だと思っている」。
質疑応答では明るさだけではなく厳しさも打ち出す
挨拶の後は質疑応答に。こうした会見では、持ち回りで現場を取り仕切る幹事局があり、その局の担当者が代表質問を行うことになっている。この日は中京テレビ。若手実力派の岡田健太郎アナウンサーがマイクを握った。
岡田「監督就任を決断された理由は?」
井上「歴代監督の名前を見ると圧倒的な知名度のある方ばかりなので、僕で良いのかとの思いはあった。リスペクトしている立浪さんが原石を磨き続け、育ててきたチームの財産である選手たちを他の方に持っていかれるくらいなら、自分が受け継ぐのが一番スムーズだと考えた」
岡田「新監督の目には、今のドラゴンズはどのように映っていますか?」
井上「勝つ喜びをわかってもらえたら。仮に個々の能力が他チームより劣っているのなら、束になって底上げすることによってチームの戦力が上がると僕は信じている」
岡田「ファンにメッセージを」
井上「勝つことにこだわり、なおかつファンに愛されるドラゴンズを発信できるよう先頭に立ちたい。チームが残念な負け方をした時は僕が矢面に立つという決意はある。頑張りたい」
代表質問の後は各社からの質疑応答。井上新監督が様々な質問に歯切れよく答えた。
「選手は若手からベテランまでいるので、それぞれの性格に合わせて対話をしていきたい。それで人との絆が生まれる」
「強いチームになるために選手には和を乱すなと言いたい。僕の言ったことは徹底してほしい。みんなと一緒の矛先を向けない選手は必要ない。そこら辺を意識させたい」
「明るい雰囲気の、より愛されるドラゴンズを作るのが僕に与えられた使命」
「現役時代にピンキー(ピンクのリストバンドを装着)をしたのは星野仙一監督にアピールするためだった。今の選手には許される範囲で個性をどんどん出してほしい」
質問が一通り終わった後はフォトセッション。
井上新監督は腕を組んだり、こぶしを握ったり、カメラマンのリクエストに応じて様々なポーズを決めてくれた。(ちなみに翌日の中日新聞の1面を飾った写真はこの時に撮影されたもの)
これで会見は終わり、というわけにはいかず、最後に記者たちに囲まれて取材に応じた。いわゆる「囲み」と呼ばれている取材である。
井上新監督は「もう疲れた」などと言いながら、記者たちの質問に真摯に向き合った。
「評論家時代に星野さんから『もう一度ユニホームを着て盛り上げろ』と言われたことは今でもきちんと覚えている。星野さんのような人間力やパフォーマンス力はないが、選手を思いやる気持ちは近づけるようにやっていきたい」
「小技や足を絡めた野球を好きだという自負はある」
いつもの人懐っこい笑顔は少なく、終始緊張した表情を見せていたのは、責任の重さを感じていたからかもしれない。記者たちの質問に真摯にかつ前向きに答える井上新監督なら、持ち前の明るさでチームを変えてくれるはずと、期待をもたせてくれる会見となった。
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