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2025/12/08 特集記事

シングルファーザーとして、そして一人のバスケットマンとして――並里成が辿る“原点”

初代スラムダンク奨学生としてアメリカ留学後、リンク栃木ブレックス(現・宇都宮ブレックス)、琉球ゴールデンキングス、大阪エヴェッサ、滋賀レイクスターズ、群馬クレインサンダーズと複数のクラブを渡り歩き、2024年からはファイティングイーグルス名古屋(以下FE名古屋)で活躍するプロバスケットボールプレイヤー・並里成(なみざとなりと)

小柄ながらスピードとリズムの緩急を巧みに使い分け、相手ディフェンスを翻弄する姿はアリーナに居合わせた誰しもを魅了する。

2025年10月に幕を開けた「りそなグループBリーグ2025-26シーズン」。チーム最年長となる36歳のジャーニーマンは、期待の若手を多く抱えるFE名古屋を経験豊かなベテランとして牽引している。

彼と共に歩んだ元プロバスケットボールプレイヤーで実兄の並里祐(なみざとたすく)さん、そして並里成選手と二人三脚でバスケットボールに打ち込む息子さんの存在。「並里成」という唯一無二のバスケットマンを形作ったものとは?

「ナカジツ AICHI CENTRAL CUP 2025」の試合にて

指導者としての道を歩み始めた「兄貴」の存在

「2つ上の『兄貴』が友達に誘われてバスケットボールを始めた時、僕もなんとなく付いていったというのがきっかけですね」と振り返る並里選手。「兄貴」とは三遠ネオフェニックス、熊本ヴォルターズ、佐賀バルーナーズなどでプレイヤーとして活躍、現在は熊本ヴォルターズU15阿蘇のヘッドコーチをしている並里祐さんのことだ。

「ちっちゃいときは、とにかく兄貴と喧嘩してましたね」と並里選手。喧嘩の原因について訊ねてみると「ほぼバスケットのことですね。家の中でも即席のゴールを作って遊んでいたんですが、僕が兄貴よりも負けず嫌いというのもあって、遊んでいるうちにヒートアップしてくるんですね(笑)もう、毎日っていうくらい喧嘩してましたよ。」

並里兄弟を育んだ「沖縄」という土地についても訊ねてみた。

「NBAをはじめ海外の文化を身近に感じられる土地でしたね。昔は『6チャンネル』で米国の番組を放送していて、NBAの中継も観られました。公園に行けば外国人がバスケをしていて、急遽対戦することになったり。そういう環境で育ってきましたね。」

最初に憧れを抱いたのは元NBAプレイヤーのアレン・アイバーソン。183cmとNBA選手としては小柄でありながら、通算4度の得点王に輝くなどし、バスケットボール殿堂入りも果たした伝説のプレイヤーだ。

「僕も大きなインパクトを受けて、よりバスケ熱があがりました。昔はよく彼の真似をしたものです。ただ、真似できない部分が多いのもだんだんわかってきて……。次第にオリジナルというか、『自分はこれだ』というプレイスタイルを築いていったような気がします。」

【アレン・アイバーソン選手とは?動画でチェック】

プロバスケットボールプレイヤーとして日本のバスケットボール界を盛り上げることになる、幼き日の並里兄弟。地元・沖縄ではどのような存在だったのか。

「小中学生時代は、僕よりも兄貴の方が断然優秀な選手でした。そこに『なんか生意気な2つ下の弟がいるぞ』ってことで、地元ではそこそこ有名でしたね。沖縄ではバスケで活躍するとすぐ噂になるので、『すごい兄弟がいる』とは言われていましたね。」

そんな兄の祐さんは2022年に現役引退を表明。翌年には熊本ヴォルターズU15阿蘇のヘッドコーチに就任し、指導者としての道を歩み始めた。

「兄貴は人をまとめることに長けているので、指導者向きなのかなと今になって思います。熊本という地域のためにバスケットボールを盛り上げようと頑張っていますし、今後もチームやバスケットボール界にいい影響を与えてくれると思っています。僕も兄貴もお互いにバスケットボールが大好きで、ずっとバスケに関わっていきたいタイプ。『僕らの人生=バスケ』みたいな感じになっていますね。」

現在所属するFE名古屋では若手選手からも慕われる並里成選手。自身も「一生バスケットボールに携わっていたいか」と尋ねてみると、「一生関わっていくんだろうなと思っています。年齢を重ねるごとにどんどんバスケが好きになっていく。昔は『自分だけ上手くなればいい』という感じでしたが、最近は後輩たちに自分の経験や技術をシェアすることを求められることも多く、そこにやりがいを感じたりもします」とのこと。

「人に伝える」ことの難しさを感じる場面も多いと話すが、試行錯誤を繰り返しながら伝えることができた際には大きなよろこびを感じるという。指導者としての先輩でもある兄・祐さんの存在は、将来的にも並里選手をよい方向へ導くことになるかもしれない。

「僕らの人生=バスケ」とお兄さんのことを語る

「人としてちゃんと」並里家の教育方針

話題を息子・タイラーくんのことに移すと、普段から朗らかで饒舌な並里選手のギアがまた一段上がった。実は、小学5年生の男の子を育てるシングルファーザーとしての顔も持ち合わせているのだ。子育てをしながらシーズンを戦い抜くということは、並大抵の苦労では済まないはず。

「小学5年生になるので、ある程度は自分でできるようになりましたし、僕が迎えに行く時間とかお互いが帰る時間とかを合わせているだけなので、さほど大変さは感じてはないです。一日が終わると『やりきった』という感覚があって、それが心地良いんです。暇よりはいいかな。」

タイラーくんと ©FE NAGOYA

並里選手のFE名古屋への移籍とともに愛知県に移り、本格的にバスケットボールに取り組み始めたというタイラーくん。

「沖縄のバスケットボールのレベルが高いというイメージはあると思うのですが、実は愛知のバスケットボールのレベルもかなり高いんです。」

愛知県の小中学生の競技レベルが高いことも、FE名古屋への移籍を決めるひとつのきっかけとなったと話す。

「息子のバスケットボールに対する理解力も日に日に高くなってきて、親子で深い話ができるようになりました。『バスケのスイッチが一段階上がった』と感じます。」

休みの日も二人でバスケの練習をしている

父親と同様、アスリート街道を邁進するタイラーくんの成長や活躍にも今後注目が集まるところだ。オフの日は親子でどのように過ごしているのかが気になり訊ねてみると、返ってきた答えは一言「ラップ」だった。

「僕自身、沖縄時代から音楽が好きでバスケと音楽は一体のように考えていました。僕の影響かどうかはわからないんですけど、息子も音楽好きで。ラップの歌詞を見ては、『深いね~』なんて言いながら、ふたりで目を見合わせています。」

「もし音楽の道に進みたいと言い出したら?」と聞いてみると「いや、それだけは!バスケットに行ってほしいです(笑)」と慌てる並里選手。最後にひとりの父親として、愛する息子にどのような成長をしていってほしいか、訊ねてみた。

「息子には『人としてちゃんとしろ』って言っています。バスケットボールは人と人がやる競技なので、それだけは忘れないでほしい。」

どんな質問にも真摯に答えてくれる並里選手の言葉だけに、とても深みを感じた。

楽しそうに息子・タイラーくんの話をする、並里選手

2024-25シーズンは全試合にスターティングメンバーで出場するなど、FE名古屋の司令塔としてなくてはならない存在となっている並里選手。B1昇格から4シーズン目となる今季は、体制も新たに悲願のチャンピオンシップ進出を狙う。才能に満ちた若手たちが躍動する新たなFE名古屋においても、中心にはいつも「並里成」の姿がある。

チームを牽引する36歳のベテランから、今後も目が離せない

PROFILE
並里成
なみざとなりと。1989年8月生まれ。沖縄県出身のPG(ポイントガード)。実兄は元プロバスケットボール選手の並里祐。滋賀、琉球、群馬などを経て2024年にファイティングイーグルス名古屋に加入。卓越したボールハンドリングと広い視野を武器に、チームの攻撃を自在に操る司令塔として活躍、リーダーシップにも優れ、ベテランとしてチームを牽引している。

ファイティングイーグルス名古屋の情報はこちら


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