名城大学女子駅伝部 密着レポートvol.4
王座奪還へ――選手たちが語る「もう一度強くなる決意」

名城大学女子駅伝部が迎えた新たなステージ
2024年、駅伝界を席巻してきた名城大学女子駅伝部は、大きな転換点を迎えた。7連覇を果たしてきた秋の「全日本大学女子駅伝対校選手権大会」(以下、全日本大学女子駅伝)、6連覇を果たしてきた冬の「全日本大学女子駅伝対校選手権大会」(以下、富士山女子駅伝大会)。両大会で敗北を喫し、王者の座を明け渡すことになった。
「負けるべくして負けた」そう語った米田勝朗監督は、チームの再生に向けて動き出した。そして、選手たちもまた、それぞれの立場で「変わる」ことを決意している。
新キャプテンとしてチームを牽引する米澤奈々香選手と、彼女を支える副キャプテンの柳樂(なぎら)あずみ選手。2人と同じ新4年生の原田紗希選手。大学生活最後の駅伝シーズンに臨む彼女たちは、どのようにこの1年を過ごし、王者名城大学の復活を遂げようとしているのか。選手たちの言葉から、名城大学女子駅伝部が迎える「挑戦のシーズン」に迫る。
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「走りでチームを導くリーダーへ」
新キャプテン・米澤奈々香選手の決意
2025年、名城大学女子駅伝部の新キャプテンに就任した米澤奈々香選手。昨年秋の全日本大学女子駅伝ではレースの流れを左右する重要な1区を任されるも、思うような結果を出せず悔しさを味わった。「監督から『新4年生が変わらなければ、チームも変わらない』と言われ、その言葉がすごく心に響きました。昨年の悔しさを糧に、今年は本気で勝ちにこだわります」。
新キャプテンとして特に意識しているのは、走りでチームを引っ張ることだ。「キャプテンがしっかり結果を出すことで、チーム全体に良い影響を与えられる。これまでのキャプテン同様に、私も最大限の走りで引っ張っていきます」。

練習だけでなく普段の生活の中でも「見られている」という意識を強く持つようになったという。後輩にとって模範となる行動を心がけ、チームの士気を高めることもキャプテンとしての役割のひとつだ。特に宮古島での合宿では、新4年生を中心に声を掛け合いながら走行距離を増やし、負荷をかけることで例年以上に質の高い練習を積んだ。
また、メリハリをしっかりつけるためのコミュニケーションも重視している。「昨年のチームはすごく仲が良かったので、その絆は大事にしたいです。一方、厳しい場面に直面したときでも『もっと強くなるんだ』という意識を持ち続ける必要があります。そのためにも直すべき部分はチームでしっかり話し合い、結束を深めていきたいです」。
今年のスローガン「走りで魅せる!王座奪還!」を胸に刻み、米澤選手自身も飛躍を目指す。「春の個人戦で代表を勝ち取ることを目標にしています。4月からのトラックシーズンでは5000メートルでしっかり結果を出し、年間を通して良い走りができるようにしたいです」。
キャプテンとしての責任を背負いながら、自らの成長にも貪欲に挑む米澤選手。その覚悟が、名城大学女子駅伝部を再び王者の座へと押し上げる鍵となる。

「4年間の学びと成長を証明する」
柳樂あずみ選手の決意
副キャプテンを務める柳樂あずみ選手は、最終学年を「後悔のない1年にする」と意気込む。「私たちの学年は全国レベルの選手が多く、『やればできる』と言われてきました。でも、それを実際の結果に結びつけられるかどうかは自分たち次第。今年はその力を証明する年にしたいです」。
特に意識しているのがメンタル管理だ。メンタルコンディションは身体以上に大切だと語る。「私は気持ちの波が激しいタイプです。常に100%を求めるとバランスを崩すことがあるので、80%くらいのコンディションを維持できるよう努めています」。

そんな柳樂選手の支えになっているのは、同級生や家族の存在だという。「落ち込んだときに話を聞いてくれる仲間がいるだけで元気になれるし、また頑張ろうと思えます。自分が頑張ることで家族や親戚が喜んでくれるのも大きなモチベーションです。辛いことも多いですが、結果を出したときの喜びを考えると勇気が湧きます」。
副キャプテンとして、細かな気配りや積極的なコミュニケーションを大切にしながら、強いチームの支えになりたいと話す柳樂選手。学業との両立についても、新入生へのアドバイスをするようになった。「1年生のときは授業と練習が重なり大変でしたが、今は余裕ができました。新入生には、うまく両立するコツを伝えたいです」と話す。
最終学年として迎える集大成のシーズン。柳樂選手は、自身の成長とともに、チーム全体をより高いレベルへと引き上げることを目指している。これまでの経験を活かし、副キャプテンとしての責任を果たしながら、チームメイトとともに「走りで魅せる」と誓う。「今年はワールドユニバーシティゲームズ(学生を対象にした国際総合競技大会・旧ユニバーシアード)があるので、まず1500mで自己ベストを更新し、駅伝のための力をつけるのが目標です。私にとって最後の駅伝シーズンなので、チームの力になれるよう全力を尽くして、見ている人に感動を与えられるような走りをしたいです」。

「ラストイヤーをストイックな姿勢で貫く」
原田紗希選手の決意
原田紗希選手は、昨年の全日本大学女子駅伝の後、初めて大きな挫折を経験した。「全日本大学女子駅伝が終わったあと、怪我の療養を兼ねて宮崎県の実家に短期間戻りました。しかし、練習に身が入らない時期が続いてしまい、結果的に中途半端な状態で富士山女子駅伝大会に出場することとなりました。今思えば、怪我のせいではなく気持ちの問題。甘えていたんです。悔しいというより、当然の結果だと感じました」。現在は、身体の回復に努めながらも、まだ思うように動かないもどかしさを抱えている。
「次のシーズンが始まるのに、まだ足の調子が思わしくなくて、正直もがいている状態です。でも、最後のシーズンだからこそ、悔いのないように一つひとつの大会を大切にしたいと思っています」。今年は、日々の生活習慣にも特に気を配る。「全日本大学女子駅伝の後に生活を乱さないことを意識しています。駅伝は日々の積み重ねがすべて。1日たりとも当たり前のことを崩さないよう心がけています」。

ハーフマラソンにも複数回出場している原田選手の強みは長距離だ。「長い距離を任されることが多いので、その役割をしっかり果たしたいです」。長距離を走っているときは何を考えているのかと問うと、「レース中は無心で走る」との答えだった。「走りながら考えが浮かぶときは、記録が伸びません。できるだけ何も考えずに、目の前の1歩1歩に集中するようにしています」。
また、個人的な目標として「10キロ区間への挑戦」も挙げた。「これまで富士山女子駅伝大会では長い区間を走ったことがないので、ぜひとも挑戦したいです。2年前に登り区間を走ったときに納得できる走りができなかったので、そこもリベンジしたいです」。
「まだまだ自分の可能性を広げていきたい」と、卒業後も競技を続ける意思を固めている原田選手。その覚悟を持った姿勢は、チームの底力を引き上げる原動力となるだろう。

チームの変革を担う米澤選手、副キャプテンとして支える柳樂選手、新たな境地を目指す原田選手。それぞれの役割を果たしながら、「王座奪還」という共通の目標に向かって進んでいる。「もう一度、日本一の座を掴み取る」その挑戦は、すでに始まっている。

PROFILE
米澤奈々香
よねざわ ななか。2004年2月生まれ。静岡県出身。仙台育英学園高等学校を卒業後、名城大学に入学。高校時代から数々の大舞台で活躍し、2023年のU20アジア選手権では5000mで優勝、1500mでも3位と結果を残した。

PROFILE
柳樂あずみ
なぎら あずみ。2003年5月生まれ。富山県出身。筑紫女学園高等学校を卒業後、名城大学に入学。2022・2023年の富士山女子駅伝1区で1位を記録し、大会連覇に貢献。名城大学の復権に欠かせないキーマンの一人。

PROFILE
原田紗希
はらだ さき。2003年10月生まれ。宮崎県出身。小林高等学校を卒業後、名城大学に入学。入学当初から大きな期待を寄せられ、2023年のワールドユニバーシティゲームズのハーフマラソンに日本代表として出場した。
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