SPORTS JOURNALIST’S COLUMN
愛知県のチームや選手を追いかけている 各スポーツのスペシャリストが、 独自の視点でその近況を語る
BASEBALL 与田剛
©中日ドラゴンズ
低迷に重ね、増える故障者 それでも未来を見据えて歩む
「すべての責任は、監督である私がとります。だから、ミスを恐れず思いっきりライバルや敵にぶつかってほしい」。中日ドラゴンズの与田剛監督は、常にこの言葉を口にしている。常勝チームからの転換期を経て、低迷期、さらには増え続ける主力の故障……。そんな中、チームは新しい勝利の形を模索している。
自分が監督の時に、なぜこんなに試練が多いのか。勝てるチームの指揮を執りたいと愚痴もこぼしたくなるところだが、シーズンが始まって2カ月、与田監督の冒頭の言葉と言動にブレはない。日替わりのように目まぐるしく変わるオーダーもその表れ。プロ野球は首脳陣も分業制、野手のことに投手コーチが口を挟むのは不協和音の始まりともなりかねない中で、与田監督は打順を決めるにも、担当外のコーチの意見に耳を傾ける。つまり、投打の逆の立場から見て、どの並びが嫌なのかを聞いて取り入れ、最終判断と責任は自分がとる、という一貫性だ。
もうひとつのチーム改革、積極的な走塁についても同じことが言える。チーム盗塁数がセ・リーグトップクラスというだけでなく、ビシエドなど中軸の打者も「単打を二塁打にしよう」、あるいは「できるだけ三塁・一塁のチャンスで相手を揺さぶろう」と、スキあらば先の塁を狙う。当然、無謀だと結果論で叩かれがちだ。ただ、この先の浸透度は大きいと、工藤隆人外野守備走塁コーチは断言する。「与田監督は、ミスを恐れては進まない。そうでないと、“次の場面で一歩目が出なくなるから”と言ってくれている。この一言で、コーチも指示を出しやすいし、選手を勇気付けますね」。
さあ、ケガ人が戻り、根尾昂選手ら新人が頭角を現す頃、どんな野球が待っているのか、未来形で実況中継していきたい。
PROFILE
よだ つよし。
1965年生まれ、千葉県出身。1989年、ドラフト1位指名で中日ドラゴンズに入団。現役時代は150km/hを超える剛速球を武器に活躍。2019年より中日ドラゴンズ監督に就任。
文=宮部和裕
CBCアナウンサー。CBCラジオ「ドラ魂キング」(毎週水曜午後4時放送)ほか、ドラゴンズ戦・ボクシング・ゴルフなどテレビ・ラジオのスポーツ中継を担当。元「少年ドラゴンズ」会員。山本昌のノーヒットノーランや、岩瀬の最多登板記録の実況に巡り合う強運。早大アナウンス研究会仕込の体当たりで、6度目の優勝ビール掛け中継を願う
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