東京オリンピックの新種目 3x3
日本バスケットボール界一丸でメダルを勝ち取る
日本バスケット史上初の快挙! U23 3x3ワールドカップで初優勝
日本バスケットボール界で新たな歴史が刻まれた。2019年10月2日から6日まで、中国・蘭州市で開催された「FIBA 3×3 U23 ワールドカップ2019」で、女子日本代表が初優勝。男女全カテゴリーを通じて、日本バスケット史上初となる世界一の称号を手にした。
2月22日(土)に放送された『アス友』では、トヨタ自動車アンテロープスに所属する3×3女子日本代表候補の3選手が、3×3のプレーを披露。キャプテンの三好南穂選手は“目隠し”の状態でシュートに挑戦し、「手の感覚だけで決められる」という本人の言葉どおり、見事シュートを決める場面も。その技術の高さを見せつけると共に、3×3の魅力を大いに伝えてくれた。
W杯ではチームの中心として活躍し、大会MVPを獲得した山本麻衣選手。「(準優勝だった)前回はほとんど経験がない状態で出場したのですが、今回はW杯までに色々な大会で経験をしていたので、気持ちに余裕があった。機動力と2ポイントシュートを生かすという日本の戦い方をしっかり理解した上で大会に臨めた」と胸を張る。同じく優勝メンバーの馬瓜ステファニー選手も、「ほかの国もレベルアップしてきた中で、日本のバスケをすることができて、世界一になれたことはすごくよい経験だった」と自信を深めた。
5人制と3x3の“二刀流”で東京オリンピックを目指す
ストリートシーンで発展してきた3x3は競技としての歴史は浅いが、世界の競技人口が40万人を超え、世界大会には180以上の国と地域が参加するほどの人気を誇る。東京2020オリンピックの新種目として採用されたのを機に各国が強化に乗り出し、競技レベルもこの1、2年で急激に上がっている。日本は「東京でのメダル獲得」を目標に掲げ、5人制から3x3の適正を持つ選手を招集するなど、他国に先駆けて本格的な強化を図ってきた。その成果が早くもU23W杯優勝という形になったことは、自国開催のオリンピックへの大きな弾みとなった。
同じバスケットボールとはいえ、5人制と3x3は似て非なるスポーツだ。ボールやコートのサイズ、ルールも大きく異なり、両立は簡単なことではない。今年2月に行われた第7次強化合宿に参加した3×3女子日本代表候補選手は9名全員が5人制を主戦場する選手だが、プレー歴の浅さを補うため、Wリーグや大学リーグの中断期間を利用して合宿を重ね、チーム力と3x3での経験値を高めている。
馬瓜選手が3x3を始めたのは2018年の夏。5人制の代表として参加していたジャカルタのアジア競技大会で、怪我をした選手の代役として3x3に緊急招集されたことがきっかけだった。「突然呼ばれたので、あたふたした部分があった」と苦笑するが、182cmの身長と手足の長さを生かしたリバウンドやドライブを武器に5人制では銅メダル、3x3では銀メダルの獲得に貢献した。「自分の好きな1on1が自由にできるし、(試合中はコーチがベンチに入らないので)自分たちで考えてプレーすることが自分のスタイルに合っていて楽しい」と3x3に魅力を感じ、3x3で東京2020を目指すことに。
3x3の経験は5人制にも生かされていると、馬瓜選手は続ける。「外国人選手と戦う機会が増えたので、当たりの強さを経験できる。3x3は5人制よりファウルが取られにくいので、逆にファウルを使っていかに相手を止めるかなど、経験すればするほど色々と見えてくるので、自分のプラスになっていると感じています」
チーム一丸でオリンピック予選を勝ち抜き、東京2020への切符を掴む
東京2020の3x3出場枠は男女各8チームと狭き門だ。もともとは男女共に開催国枠での出場が内定していた日本が、FIBA(国際バスケットボール連盟)の通達により開催国枠が男女のいずれか1枠に削減。その後、男子の開催国枠での出場が決まり、女子は3月18日(水)からインドで開催されるオリンピック予選(OQT)に出場し、自力で出場権を勝ち取らなければならなくなった。
20チームが出場するOQTは、5チームが4グループに分かれて予選ラウンドを戦い、各グループ上位2チームがノックアウト方式の決勝トーナメントに進出。3位以上のチームがオリンピックの切符を手にすることができる。日本は予選ラウンドでオーストラリア、ウクライナ、イラン、トルクメニスタンと対戦する。
最大の山場となるのは「オーストラリア」だと3人は口をそろえる。「3x3の強化が遅れたのでFIBAランキングは(22位と)低いですが、出場した大会はすべて勝っているので、やはりレベル的にはオーストラリアが一番高い。」と三好選手は言い添える。(※2020年2月20日時点)
実際に、ランキングでは7位と上位の日本だが過去4回対戦していずれも敗戦。直近では2019年6月に行われたFIBA 3x3 ワールドカップ2019で、延長戦の末に16-18で惜敗している。
7次合宿でも、仮想オーストラリアとして男子選手を相手に入念に対策を行った。馬瓜選手は、「オーストラリアに勝たないと出場権はない。でもそれを超えたら、オリンピックの金メダルに繫がっていくと思う」と士気を高める。
9人の候補選手で行われている合宿はチームの強化を図ると同時に、OQT、そしてその先のオリンピックメンバー入りを懸けたサバイバルの場でもある。予備登録メンバーは6人、コートに立つことができるのはわずか4人だ。5人制の代表としてリオデジャネイロオリンピックに出場した三好南穂選手は、「リオの時は控えメンバーだったので、今回は3×3の主力として戦いたい。OQTでしっかり勝って、2ポイントシュートを武器に代表に選ばれたい」と言葉に力を込める。馬瓜選手が、「普段5人制のチームにいる時間も3x3のことを考えながらレベルアップして、まずは代表に選ばれることを目指し、オリンピックに出られるようにがんばりたい」と言葉を重ねれば、山本選手も、「小さくても“日本のバスケット”ができるということを世界に見せたいので、まずは代表に選ばれてOQTで活躍し、東京2020出場権獲得に貢献したい」と決意を語る。
日本バスケット界一丸で苦境を乗り越え、東京での頂点を目指す。
まうり ステファニー。愛知県東郷町出身。ポジションはセンターフォワード。昨夏のアジア競技大会では5人制に加え急遽3人制に出場し、銀メダル獲得に貢献。以降、3×3に本格的に参戦。
やまもと まい。愛知県名古屋市出身。ポジションはガード。桜花学園高等学校で1年生から司令塔を任され、2年時に“高校3冠”を達成。「FIBA 3×3 U23 ワールドカップ2019」では大会MVPを獲得。
みよし なほ。千葉県出身。ポジションはガード。リオデジャネイロオリンピックに5人制の代表として出場。正確な 外角シュートが武器で、Wリーグでは3Pシュート成功率は5季連続で40%を超えている。
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