SPORTS JOURNALIST’S COLUMN
愛知県のチームや選手を追いかけている 各スポーツのスペシャリストが、独自の視点でその近況を語る
SOCCER ランゲラック
©N.G.E.
窮地を乗り越えたグランパス“All for NAGOYA”で上位進出へ
ポテンシャルはある。だけど結果には結びつかない−−。2019年の名古屋グランパスは、そんなチームだった。
序盤は首位争いを演じていたグランパス。特に、ホームでは5試合連続無失点での5連勝と圧倒的な成績を収める。ところが、主力のケガなどで歯車がズレ始めると二度と元に戻らず、徐々に順位を落としていった。
そして、最終的には13位と残留争いに巻き込まれる悔しい結果となった。チームを最後尾から鼓舞し、決定的なピンチを何度も防いだ守護神のランゲラックは、勝てない日々を思い悩み眠れない夜もあったという。しかし今は、その経験さえ糧にしなければいけないと考え方を変えたという。「メンタルは確実に鍛えられたよ。でもね、逆に考えれば我々はその窮地を乗り越えたんだ」。オーストラリア代表GKは、ポジティブに次のトライをするべきだと語る。
新シーズンに向け、グランパスでは少しずつ改革が進んでいる。昨秋にマッシモ フィッカデンティ監督が就任し、それまでの超攻撃的サッカーから堅守速攻スタイルへの転換を目指しているのだ。その中で元日本代表の阿部浩之や稲垣祥など、攻守で献身的に走れる選手を補強。相馬勇紀やマテウスなど期限付き移籍をしていた選手も戻り、スピードのある攻撃が期待できるようになった。
そして何より楽しみなのは、昨季はケガで苦しんだ青木亮太と渡邉柊斗だ。驚くほど高い技術を持つ2人が完全復活できれば、練習からチーム全体のレベルが上がる。ランゲラックは、「クオリティの高い選手が揃い、監督も環境もサポーターもいい。後は全員がひとつになって、どういうチームを作るかにかかっている」と語る。 ポテンシャルだけでなく結果を出す。今季のグランパスには期待だらけだ。
PROFILE
ランゲラック。
1988年生まれ。オーストラリア・クイーンズランド州出身。22歳でドイツの名門ボルシア・ドルトムントに入団。オーストラリア代表として、2014年のワールドカップブラジル大会に選出された。名古屋グランパスには2018年に移籍。1年目はJ1リーグ全試合出場、昨季は33試合に出場した不動の守護神。
文=斎藤孝一
1965年愛知県刈谷市生まれ。(株)ダブルボランチ代表。サッカー新聞『エルゴラッソ』グランパス担当。『月刊グラン』や『Goal』、日本サッカー協会公式webサイト、Jリーグ公式webサイトなどにも寄稿している。スポーツライターのほか、フリーのTVディレクターとしても活動中。
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