Bリーグ史上最年少デビュー
“逸材”河村勇輝の挑戦

「自信がなかったら挑戦してない」
「自信がなかったら挑戦してない。でもそれは、B1でプレーが通用するという自信ではなく、どんな壁にぶつかっても挑戦し続けるという自信です」。2019年度、福岡第一高等学校をインターハイとウインターカップの2冠に導いた河村勇輝選手。特別指定選手として加入したB1リーグの三遠ネオフェニックスへの入団会見では、澄んだ眼差しでしっかりと前を見つめ、言葉に力を込めた。
高校生活最後の公式戦となったウインターカップの決勝。10得点、13リバウンド、11アシストと、3部門で2桁を挙げるトリプルダブルを達成して有終の美を飾った高校No.1ポイントガードは、「日本一など、高校の成績は過去の栄光にすぎない。それをすべて忘れて、しっかりプロの立場でゼロからスタートしよう」と背番号「0」を選び、大学進学までの約2カ月間、プロの舞台で研鑽を積むことを決意した。
三遠ネオフェニックスは、シーズン半分の30試合を終えて3勝27敗でB1リーグ中地区最下位と苦しいシーズンを過ごしていた。河村選手は「成績が思わしくない状況で、チームが変わることが大事。その中で自分が何かひとつでもチームが変わる要因になれればという思いがある」と語り、「チームを10勝させる」と宣言した。

B1最年少出場となる18歳8カ月23日でプロデビュー。最年少得点も更新
入団会見で鹿毛誠一郎GMが河村選手の出場を明言していたこともあり、翌日の1月25日に豊橋市総合体育館で行われた千葉ジェッツ戦には、高校生B1リーガー誕生の瞬間を見届けようとバスケットボールファンが開場前から長い列を作った。
第1クォーター残り時間3分41秒、3,036人の観客が待ち望んだ瞬間が訪れた。大歓声の中、プロのコートに立った河村選手は、日本代表司令塔の富樫勇樹選手とマッチアップ。同クォーター残り46秒には、フリースローを2本沈めてB1最年少得点記録を塗り替えると、終了間際にはファストブレイクから千葉ジェッツのコー・フリッピン選手と大倉颯太選手の間を割ってレイアップを沈めて観客を魅了した。
「高校生、特別指定選手という立場ではあったのですが、ひとつの目標、夢でもあったBリーグの舞台に立てたことはすごく嬉しかったです。でも、それよりチームの勝利に貢献したいという気持ちの方が強かったので、試合に出た時は嬉しさをかみ殺して、どういうプレーをすれば勝てるかを考えました」。
衝撃的なデビュー。だが驚くのはまだ早かった。その翌日の千葉ジェッツとの第2戦で21得点。先発出場した新潟アルビレックスBB戦では、第4クォーターに4本の3Pシュートを決めるなど24得点をマーク。高校3年生とは思えない圧巻のプレーでチームを牽引し、勝利を手にすることができなかったが、一時は77-79の2点差まで迫った。
高校時代はほぼ負け知らず。プロの舞台で「一勝する難しさ」に直面した河村選手は、その時の気持ちを「戸惑い」という言葉で表現した。「自分は何をすべきかが少し見いだせない状況が何試合かありましたね。24得点でも勝ち星が取れなかった。自分が点を取っても勝てないっていうことは、どういうことをすればチームの勝利に貢献ができるか。パスをして先輩方の得点をアシストするプレーをした方が勝てるのかとか、色んなことを考えました」。その言葉を裏付けるように、4試合目となる宇都宮ブレックス戦では、得点は10点にとどまったものの7つのアシストを記録。しかし初勝利には結びつかなかった。それでも、
「結論的には、あまり意識しすぎずに自分らしいプレーをしようと考えました。点を取ったり、ディフェンスをがむしゃらにやったり、速い展開に持っていくとか、自分のバスケットのスタイルを出そうとプレーしていたら、段々勝利に貢献できるようになってきました。チームメイトとのコミュニケーションもたくさんとりましたし、ポイントガードとしての責任感や役割は勝利を呼び込むようなプレーにあると考えているので、チームスタイルにしっかりとアジャストしながら、自分のプレースタイルをしっかりと出すことを心掛けました。ここ最近はそれができるようになってきているかなと思います」。
2月16日の名古屋ダイヤモンドドルフィンズ戦。福岡第一高等学校の井手口孝監督が見守る中、河村選手はプロ9試合目にして待望の初勝利を手にした。

目標は「日本を背負うポイントガード」
対戦したチームの中から最も印象に残っているポイントガードを訊ねると、「富樫勇樹選手、五十嵐圭選手、齋藤拓実選手、鵤誠司選手、笹山貴哉選手、宇都直輝選手です」と、全チームのポイントガードを挙げた。
「本当ありがたいことに、11試合を戦った相手チームには上手いポイントガードが揃っていた。それぞれに個性があって、本当に1位は決めがたいです。Bリーグのトッププレイヤー達は、自分の特徴を生かしてプレーしている。自分がBリーグに戻ってきた時には、今自分が感じているようなことを相手に感じさせられるようなプレイヤーになりたいと思います」。
日本を代表するポイントガードで、身長やプレースタイルが似ている富樫選手については、「本当にシュート力、得点力に長けている。これから日本代表を背負っていく上で富樫選手以上の力を持ち続けないといけない。得点力の部分もしっかりと磨きながら、チームメイトを乗せるプレーや、チームの流れをつくるようなパスメイク力、スピードを生かしたプレーなど、自分にしかできないことを追求していきたい」とさらなる成長を誓う。
11試合に出場して2勝9敗。1試合平均で12.6得点、2.0リバウンド、3.1アシスト、1.5スティール、フィールドゴール成功率は38.9%、3ポイントシュート成功率は37.3%。圧巻の活躍で約2カ月間のプロ挑戦を終えた河村選手は、この4月からバスケットボールの強豪・東海大学に進学する。
「フィジカルな部分はもちろん、大学バスケは高校バスケと違って戦術的なものがとても豊富で、Bリーグに近い部分があると思うので、しっかりと頭に入れたい。あとはやっぱり人との繋がりですね。東海大学には陸川章先生という素晴らしい指導者がいるので、人間的なところもしっかり成長できればと考えています。大学に行っても、オフシーズンには特別指定選手としてBリーグに戻ってきたいなと思っています。経験をたくさん積み上げて、日本代表のポイントガードになれるような実力をつけていきたいですね」。
スーパースター軍団の東海大学で壁にぶつかることもあるだろう。だが日本バスケの未来を背負う逸材は、どんな壁にぶつかっても挑戦し続け、その経験を糧に成長し続けていくはずだ。

PROFILE
河村勇輝
2001年生まれ。山口県出身。身長172cm、体重63kg。福岡第一高等学校出身。2018年度のウインターカップ、2019年度のインターハイ、ウインターカップと、3大会連続で日本一に輝く。2020年1月に特別指定選手として三遠ネオフェニックスに加入。B1最年少出場となる18歳8カ月23日でプロデビュー。U22日本代表候補。
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