愛知県振興部スポーツ振興課
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豪快なスタートダッシュに注目!
日本女子ボート界を牽引する大型スター

ピンチをチャンスに変え、陸上トレーニングに全力で励む!

 両手で1本のオールを持つスウィープと、両手に1本ずつのオールを持つスカルに大別されるボート競技。1人乗り、2人乗り、4人乗り、8人乗り、舵手付き・舵手なし、軽量級など、10を超える種目があるが、そのうち唯一の個人種目「シングルスカル」で、米川志保選手は東京2020に挑む。3月に行われた日本代表選考レースで1位になったのは、オリンピック延期が発表される2日前。代表の切符をほぼ手中におさめていただけに、その衝撃は大きかった。「これからどうなってしまうんだろうという不安が一番大きかったですね。でも同時に、チャンスだとも思ったんです。もう1年あれば、もっと速くなれる。そんな手応えがありました」と、当時の心境を語る。
 しかし、続いて緊急事態宣言が発令され、水上練習ができなくなる事態に。それでもめげることなく、その分を陸上トレーニングに当てた。「ボートは脚力と体幹がものを言うスポーツなので、陸上トレーニングも重要です。ウエイトトレーニングや陸上で漕ぐ動きができるエルゴマシンのほか、この機会に心肺機能や筋持久力を高めるワットバイクにも初挑戦しました」。
 水上練習に戻れたのは6月になってから。埼玉県戸田市にある練習場「戸田ボートコース」に繁殖した藻を刈るところからのスタートだった。徐々に感覚を取り戻すと、陸上トレーニングが功を奏し、10月に行われた全日本選手権で米川選手は見事シングルスカルでの初優勝を飾った。

世界を目指して、水泳からボートに転身

 米川選手がボートを始めたのは、旭丘高等学校1年生の春。最初は水泳部に入ったが、179cmの長身に目を付けたボート部の顧問から熱心に誘われたのだという。入部の決定打になったのは、「世界を目指せる」という言葉。「競技人口が多い水泳は狙えてもインターハイ。でも、まだ競技人口が少ないボートなら世界を目指せる。これは魅力的でしたね。名古屋市で唯一ボート部がある高校に入ったのも、運命だと感じました」。それまでボート経験はなかったが、初めて乗ったその日から輝きを放ち、瞬く間に世界レベルに到達。恩師の目に狂いはなかった。
 もうひとつ、米川選手を「本気」にさせたのが、実際に世界へ羽ばたいた選手の存在だ。ボートに出会った2012年は、ロンドンオリンピックが開催された年。そのシングルスカル種目に、旭丘高等学校ボート部出身の榊原春奈選手(当時早稲田大学1年生)が日本人女子として初めて出場したのだ。その活躍に奮い立った米川選手は、憧れの先輩の背中を追うように早稲田大学に進学。全日本学生選手権で2度の総合優勝を飾るなど、充実の4年間を過ごした。

“先行逃げ切り”に磨きをかけ、再度のチャレンジへ

 卒業後は榊原選手と同じトヨタ自動車に入社。戸田ボートコースで練習に打ち込む日々を送っている。練習場近くでのひとり暮らしも6年目を迎え、最近は食事に気を配るようになったという。「私は体重制限のない種目なのですが、脂肪がつきすぎると動きが悪くなるので、野菜を多めに取るようにしています」と普段の食生活の様子を語った。好きな食べ物を尋ねると、「マグロの赤身と味噌カツ!」と即答。味噌汁も赤味噌派で、地元の愛知に帰ると必ずといっていいほど赤味噌を持ち帰るそうだ。
 また、中日ドラゴンズのファンでもあるなど、地元愛が強い米川選手。2026年には愛知県でアジア競技大会が開催されるが、「それまで現役を続け、ぜひ出場したい」と抱負を語る。だが今は、目の前に迫る東京2020への出場権を掴むことに集中する。そのために現在強化しているのが、持久力の向上だ。米川選手の持ち味はスタートダッシュ。そこからトップスピードをいかに持続させるかが、今取り組んでいる課題だという。
 最後に、ボート競技の観戦のポイントを教えてもらった。「2000mの距離をどう進むか、レース展開が見どころです。私は先行逃げ切り型ですが、後半伸びてくる選手もいれば、イーブンで刻む選手も。選手同士の駆け引きなどに注目してもらうと楽しめるかと思います」。東京2020のボート競技は、新設された「海の森水上競技場」で行われる。真新しい檜舞台で、速い飛び出しから一気にゴールまで駆け抜ける米川選手の勇姿を期待したい。

PROFILE
よねかわ しほ。1996年生まれ。愛知県尾張旭市出身。幼少期より水泳に取り組み、旭丘高等学校入学後にボートを始める。その後、早稲田大学に進学。全日本学生選手権で2度の総合優勝を果たし、4年時には主将も務めた。卒業後はトヨタ自動車に入社。昨年の全日本選手権で憧れの榊原春奈選手とダブルスカルに出場し優勝。今年10月の全日本選手権ではシングルスカルで自身初優勝を飾った。



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