地元と家族の期待を背負い
テコンドーで世界の頂へ
兄も元日本代表!地元で鳴らした「最強の兄妹」
2020年2月のテコンドー日本代表最終選考会(女子49キロ級)を制し、東京2020への出場を決めている山田美諭選手。愛知県瀬戸市で空手道場を開く父の元で3歳からフルコンタクトの空手を始め、中学1年でテコンドーに転向。大学入学を機に地元を離れたが、生まれ育った瀬戸市への思い入れは強い。「子どもの頃は空手中心の生活でしたが、自然が豊かな場所なので、近所の川や森で遊んだり、家族で青少年公園に出かけたり、空手以外の時間は外を遊び回っていました。「せともの祭り」の花火や、小4の時に開催された「愛・地球博」も良い思い出ですね」と当時を振り返る。
とはいえ幼少期は人見知りで、「いつも2つ上の兄の後ろにくっついて歩いていた」と話す山田選手。それを変えてくれたのが、テコンドーだ。「空手では勝てなくなってきた頃、父の勧めでテコンドーを始め、「勝つ」喜びを知ったことは大きかったですね。それで、どんどん前向きになっていったような気がします。兄は上達も早かったので、「自分も負けないぞ」という気持ちでやっていました」。
その兄・勇磨さんもテコンドー男子58キロ級の元日本代表選手だ。地元では、「最強の兄妹」としてよく知られた存在だった。大学も兄の背中を追うように大東文化大学へ進学。4年間、2人で暮らした。「高校時代まではあまり競技の話をすることはなかったんですが、大学時代は同じ代表として一緒に海外遠征に出かけることも多く、本当に心強かったですね。兄はもう現役を引退し、地元でテコンドーを教えているのですが、今も大の仲良しで、アドバイスをもらったりしています」。
一緒にモーニングにも行く、大のおばあちゃん子
もう一人、山田選手の大きな支えになっているのが、実家に同居する母方の祖母だ。「子どもの頃はいつも一緒に寝ていたほどのおばあちゃん子。今91歳なんですが、すごく元気で、私が帰るたびに大好物のエビフライを揚げて待っていてくれるんです。味噌煮込みうどんやきしめん、味噌カツなど愛知の名物も好きなんですが、あまりお店には行かないですね。おばあちゃんの料理が食べたいので。一緒にモーニングに出かけるのも帰省時の楽しみです」と、「おばあちゃん愛」を熱く語る。もちろん、強靭な身体を授けてくれた両親も、山田選手を無償の愛で包んでくれる強力な味方だ。
そんな「家族の絆」を再認識させてくれたのが、昨年の緊急事態宣言。通常の練習ができなくなった山田選手は約3ヶ月、実家に帰った。「こんなに長くまた家族と過ごせるなんて、思ってもいなかったので、本当に不思議な時間でした。私自身も元気をもらいましたし、何より家族が喜んでくれたことがうれしかったです」と、心境を打ち明ける。
育ててくれたテコンドーに恩返しを
実家でパワーをチャージし、帰京後は夢の舞台・東京2020に向け、一段とギアを上げた山田選手。今は東京2020だけを見つめているが、選手としてその先も見据えている。「32歳になっていますが、身体さえ動けば金メダルも狙えるのでは、と思っています」。
そう意気込む山田選手だが、競技生活も15年を数える現在、次なる目標も視野に入れている。「引退後もなんらかの形でテコンドーに携わっていきたいですね。ただ性格的に指導者は向かないので、競技を広めるための普及活動と、スポーツトレーナーや栄養士など、選手を陰ながらサポートするようなことができればと考えています。そのための勉強もしていかなくては、と思っているところです」と目を輝かせる。
東京2020で頂点を極めたら、愛するテコンドーのために――、新たなチャレンジに踏み出す覚悟だ。
やまだ みゆ。1993年生まれ。愛知県瀬戸市出身。3歳の時に父が運営する道場で兄と一緒にフルコンタクトの空手を始める。聖霊中学1年生の時、テコンドーに転向。中学3年生で全日本テコンドージュニア選手権を制覇する。聖霊高等学校2年生の時に全日本テコンドー選手権初優勝。以降、2019年までに8度の優勝を飾る。大東文化大学卒業後は、城北信用金庫に入庫。仕事と競技生活を両立させている。
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