個性派集団・ブレイヴキングスを率いる門山哲也監督
東京2020を機に、ハンドボールの発展を期待!
日本もお国柄と言えるくらいプレースタイルが確立すれば
ハンドボールがもっと根付くはず
ハンドボール競技は伝統的にヨーロッパ勢が強く、ヨーロッパではメジャーなスポーツのひとつとして広く浸透している。2012年に強豪国・デンマークのノアシェランに移籍し、ヨーロッパでプレーした経験を持つトヨタ車体ブレイヴキングスの門山哲也監督は、「デンマークでは、公園に行けばハンドボールコートにボールとゴールもあって、そこで当たり前のように子ども達が遊んでいました。夜にテレビをつければハンドボールの試合の様子が流れていて、日本でいう野球やサッカーと同じくらいに、ハンドボールが文化として定着していた」という。また、こうしたハンドボール文化が根付いたヨーロッパでは、各国のプレースタイルにそれぞれ特徴があると門山監督は話す。「スペインやフランスは身体の強さを活かしたプレーをします。デンマークなどの北欧のチームは、背は高いもののフィジカル面は他の国に比べるとそこまで強くないので、ボールを貰う前の動き出しなど、テクニカルな動きに長けています。東ヨーロッパの国々もまた異なる強みがありますが、プレーを見れば国がわかるというくらい、国によってプレースタイルがはっきりと確立されている印象があります」。これに対し、日本のプレースタイルについて、「日本はまだ国として“どういうハンドボールをする”というところまで確立できていない」と話す。「例えばデンマークだと、スケールの大きさや技術の差はあるものの、ユースからトップカテゴリまである程度同じプレースタイルを持っています。しかし、日本は代表チームですら、カテゴリによってそれぞれの代表監督の持つカラーが全く異なることがあります。日本もお国柄と言えるくらいプレースタイルが確立されれば、ハンドボールがもっと根付いていくと思います」と門山監督ならではの独自の視点でハンドボールへの想いを語った。
また、ヨーロッパと日本の違いという点では、こんなエピソードも。「ヨーロッパでは、手に付ける松ヤニで大変な目に遭いました。日本でもボールを持ちやすくするために使いますが、ヨーロッパの松ヤニは強力で。指の皮が剥けて、ボールが握れなくなるほど痛い思いをしました」と苦笑いで話してくれた。
個性派揃いのブレイヴキングス
ファンの皆さんに親近感を感じてもらいたい
ブレイヴキングスの選手達について、「個性派揃いで、プレーでもそれぞれの個性が出せる面白いチーム」だと門山監督は話す。チームの上下関係はあまり厳しくなく、時には選手同士が意見をぶつけ合うこともあるという。「言いたいことをちゃんと言えて、風通しがいいチームだと思います。今はコロナ禍でできませんが、オフの時には、夏にみんなでバーベキューをしたり海に行ったりもしましたね」と和気あいあいとしたチームの様子を語ってくれた。
ブレイヴキングスには、東京2020オリンピック日本代表に選ばれた吉野樹選手、杉岡尚樹選手、渡部仁選手をはじめ、肉弾戦を繰り広げるハンドボールを象徴するかのように精悍な顔つきの選手が揃っている。そんな選手達の魅力をファンに届けようと、ブレイヴキングスは積極的にSNS発信をしているという。「普段の試合で見せる選手達の姿は、日々の活動の中のほんの一瞬の部分を切り取っただけであって、その裏では多くの時間をトレーニングなどに費やしています。選手達のそういう試合以外の様子もファンの皆さんに見ていただいて、親近感を感じてもらえたらと思っています」。
東京2020では、男子は開催国枠で1988年ソウル大会以来33年ぶりにオリンピックに出場し、ポルトガルを相手に勝利した。門山監督は、「東京2020で、33年ぶりにハンドボール選手のオリンピアンが生まれたことはとてもうれしいです。オリンピックの試合を見て、自分もハンドボール選手になってオリンピックに出場することを夢見る子ども達がきっと増えてくれると思っています。そして、オリンピックに出場した選手達が、次世代のオリンピアンを育ててくれると期待しています」と日本のハンドボールの未来へ向けた期待を熱く語った。
今シーズン、日本選手権とリーグ戦の2つのタイトル獲得を目指す"門山ブレイヴキングス"。新たにどんな魅力をファンに届けてくれるのか、目が離せなくなりそうだ。
かどやま てつや。1983年生まれ。埼玉県出身。大学卒業後、トライアウトでトヨタ車体ブレイヴキングスに加入。2007年にはその年の日本ハンドボールリーグで得点ランキング4位となる110得点を挙げ、最優秀新人賞を獲得。2008年5月には北京オリンピック世界最終予選の日本代表に選出。2012年にはデンマークのノアシェランへ移籍。翌2013年にブレイヴキングスへ復帰した。昨シーズンをもって選手を引退し、今シーズンからは専任監督を務める。
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