愛知県振興部スポーツ振興課
JPEN
instagram facebook twitter youtube
menu
page top

楽しみながら、自分を高めて技術を磨く
世界で飛躍する選手を目指す若きクライマー達

登りきった時の達成感を味わいたくて、日々練習に励む

 東京2020の実施競技となり、昨今人気が高まるスポーツクライミング。文字どおり壁を登るスピードを競う「スピード」、複数の課題(コース)に対して主に完登できた数で競う「ボルダリング」、12m以上の高い壁をどこまで登れるか競い合う「リード」の3種目があり、高度な技術はもちろん、課題攻略などの頭脳戦も求められる魅力的なスポーツだ。また、老若男女誰もが気軽にチャレンジできるとあって、全国各地にクライミングジムが増加。刈谷市にある「クライミングジムLUNA」にも、未来のオリンピック選手を目指して練習に励む若者がいる。刈谷市出身の倉菜々子選手(21歳)、東郷町出身の石井未来選手(20歳)、東郷町出身で現在豊明市在住の佐野大輝選手(17歳)の3人だ。「登りきった時の達成感がなによりの魅力」と話す選手達が、スポーツクライミングを始めたきっかけや現在の練習内容、将来の目標を語ってくれた。

国内外の大会で活躍し、結果を残し続ける

 これから始まる練習を前に、にこやかな表情で取材に応じてくれた若い選手達。3人は年齢が近いのもあってか、「この3人で出かけるなら遊園地かな」「いや、海」「いやいや、普通に一緒に練習するほうが一番いいでしょ」など、お互いに冗談を言い合い、とても和気あいあいとした雰囲気だ。「3人の中で一番負けず嫌いなのは?」と尋ねると、「菜々子ちゃん!」と即答する佐野選手と石井選手。そんな2人の返答に笑顔を見せる倉選手は、2020年のジャパンツアー(※)でリード、ボルダリング、スピードの3種目とも年間1位を達成。3種目の総合ポイントによるオーバーホールランキングでも1位となり女子4冠を達成した注目選手だ。倉選手がスポーツクライミングを始めたのは、幼稚園児の頃に大府市の「あいち健康の森」で壁登りの体験をしたことがきっかけだ。「子ども心に難しいルートを攻略したくて、何回も通って頑張りました」と、この頃から負けず嫌いを発揮していた倉選手。小学生になってからクライミングジムに入って本格的に練習を始め、数々の大会に出場した。「得意な種目はボルダリングです。ダイナミックな動きが得意なんです」と話す言葉どおり、全身を大きく使ってしなやかに軽々とホールド(突起物)を登っていく姿が印象的だ。
 石井選手は、中学生の時に家族と一緒に日進市のジムで始めたのがきっかけ。「私はダイナミックというより着実に登っていくタイプ。あと、横に動くより縦に動くほうが得意で、これが得意という選手はあまりいないので、そこが強みです」と話し、「大会で初めて見る課題にトライしていくのが楽しいんです」と、心からクライミングを楽しんでいるようだ。今年1月末に行われたボルダリングジャパンカップ(※)では、見事決勝まで残り6位という成績を残した。「2017年からジャパンカップに出場していて、ずっと準決勝に残ることが目標でしたが、準決勝で勝って初めて決勝に行けたことがすごく嬉しかったです」と喜びを語った。そんな石井選手は同大会での成績からボルダリング国際大会派遣選手に選出され、クライミングワールドカップ2021第2戦・第3戦アメリカ大会や第4戦オーストリア大会にも出場している。
 佐野選手もボルダリングが一番好きで、特に緩い傾斜(90度に近い壁)を全身のバランスを使って登るのが得意だという。「子どもの頃から木登りが好きで、小学校6年生でクライミングを初めて体験して、中学生から本格的に始めました」と語る。「ボルダリングは難解な課題を約5分間で解いて登りきらないといけませんが、それがすごく楽しい。予想と違う時もあるけれど、それもまた魅力のひとつです。経験を重ねるうちに自分のレベルが上がっていくのがわかるのが嬉しいですね」。そう笑顔で話す佐野選手は、クライミング歴3年半(当時)にもかかわらず2020年のボルダリングジャパンカップで見事決勝に進出し、6位に入った期待のルーキー。ボルダリング強豪国として知られる日本の中でも注目される選手だ。3人ともクライミングを楽しみながらも、国内外の様々な大会で活躍し、結果を残し続けている。

※ジャパンツアー:2019年に新設されたシリーズ戦で、ボルダリング、リード、スピードの各種目に年間ランキングを設け、上位選手は翌年に開催される各種目のジャパンカップに出場できる。大会は全国各地のクライミング施設で実施され、2021年はボルダリング8戦、リード6戦、スピード4戦が行われる予定。

※ジャパンカップ:公益財団法人日本山岳・クライミング協会が主宰するクライミングの全国大会で、ボルダリング、リード、スピード、複合それぞれの種目で大会が行われている。

それぞれの目標を乗り越えて、大きな夢の達成へ

 3人とも週に4〜5回は「クライミングジムLUNA」で練習を重ね、週末にはほかのジムへ遠征してライバル達と切磋琢磨し合う。たくさん練習をする中で、様々な課題に挑戦し、色々な形のホールドを触り、ライバルの技を見て学ぶ。そうして知識や経験を蓄えていくことが、次の大会で飛躍するために大切な要素でもあるのだ。それぞれのウィークポイントについて尋ねると、「下半身の強さは自信があるけれど、上半身が少し弱いので上半身や腰回りの筋肉をもっと強化して全身のバランスを整えたいです」と倉選手。石井選手は「瞬発力を鍛えるために、ジャンプのトレーニングで下半身の強化をしています」と話した。佐野選手は「傾斜が強い壁が苦手で、そのために必要なパワフルな動きができていないので、苦手なルートをあえて登ったり、懸垂や筋トレをして上半身を鍛えることに取り組んでいます」と話してくれた。
 そんな3人の直近の目標は、倉選手と石井選手は共に、「10月に開催予定のワールドカップ第5戦韓国大会の派遣選手に選ばれ、決勝に進出すること」、佐野選手は「2022年開催のジャパンカップに向けた予選を着実に通過し、自分のコンディションを上げていくこと」だという。
 目の前に掲げる目標を乗り越えて、3人が目指す先には2024年に開催されるパリオリンピック、そして2026年に愛知・名古屋で開催されるアジア競技大会がある。「苦手なリードを克服して、オリンピックもアジア競技大会も出場したい」と話す倉選手。石井選手も「今年初めて日本代表に選ばれたので、その重責に負けないようもっと練習を積んで、パリオリンピックもアジア競技大会でも代表入りしたい」という。佐野選手は、「まだ経験も浅いので、まずは5年後までにもっと経験を積んでいきたい」というが、もちろん最終目標は代表入りだ。大きな夢に向かって登り始めた3人の夢へのルート。様々な課題を乗り越えて、それぞれの頂点にたどり着くことを期待したい。

PROFILE
倉菜々子
2000年生まれ。愛知県刈谷市出身。天性の運動神経を活かしたダイナミックな登りは国内トップクラス。2019年世界選手権のボルダリングで6位、アジア選手権ボルダリング、リード共に2位入賞。2020年ジャパンツアーでは各種目で年間1位に輝き、オーバーホールランキングでも1位となり、女子4冠を達成。現在、ワールドカップでの決勝進出を目指して練習に励んでいる。

PROFILE
石井未来
2000年生まれ。愛知県愛知郡東郷町出身。スラブ、垂壁のバランス課題を得意とする。2019年の茨城国体ではボルダリングで優勝、リードも3位に輝く。2021年のボルダリングジャパンカップでは初めて決勝に進出し6位入賞。今シーズンはワールドカップでの決勝進出を目標としている。

PROFILE
佐野大輝
2003年生まれ。愛知県愛知郡東郷町出身。2020年のボルダリングジャパンカップではクライミング歴3年半(当時)ながら6位へ入賞するなど、急成長を遂げている期待のユースクライマー。現在は2022年のジャパンカップの予選に向けて、得意なボルダリングおよびリードで好成績を残すために猛練習中。



aispo!マガジン最新号

2024 / 10周年特別号

PickUp記事