季刊ハラスポ vol.2
スポーツ界を照らす、若い力の躍進
今年4月より放送を開始した原晋監督出演の『月間ハラスポ』が、『aispo!』に出張掲載するコラボ企画第2弾。
中京大学時代は陸上部で長距離選手として活躍。2004年に青山学院大学の長距離ブロックの監督に就任し、史上初の箱根駅伝優勝に導いた名将・原監督が、若い力の躍進や変わりつつある指導者の役割、学生スポーツの重要性、コロナ禍だからこそ実感するスポーツ大会への感謝について語る。

若きアスリート達の活躍から見えてきた変化
東京2020では、たくさんの学生アスリートが参加し、素晴らしい結果を残しました。これには学生アスリートの競技に対する向き合い方や、指導者の指導方法の変化が影響しているのではないでしょうか。大きな視点でいえば、スポーツ界にゆとり教育の良さが出てきた結果とも言えるかもしれませんね。これまでは絶対的な指導者の下でトレーニングや競技に打ち込んでいたのが、選手達が自ら考えて行動できるようになり、自分自身の力や意思で競技に向き合うようになってきた。同時に、指導者側も自身の持つノウハウを教えるだけでなく、選手の良さを見いだし、その強みを伸ばすコーチングを取り入れている指導者が増えてきているように感じています。
そのため、いまの指導者には「伝える力」が一層求められています。ただスポーツの専門用語を並べるだけが指導ではなく、指導者としての考え方、あるいは自身のメソッドを論理的に伝えることが大切です。今の選手達は「あれをやれ、これをやれ」というだけでは誰もついてきませんから(笑)。理想は、選手を支配するのではなく支援する「サーバント型」の指導者であること。よく「選手の自主性を尊重する」という言葉が聞かれますが、これは選手が好き勝手、自由気ままに練習することを容認するものではありません。きちんと教えるべきことは教え、それを定着させたら信頼して見守ること。それが選手の主体性を引き出し、自ら考え行動できる人間へと成長させていくのです。

学生スポーツを通じて得られる経験や能力の重要性
学生のうちからスポーツに携わることは、非常に意義のあることだと思っています。学生スポーツはプロとは違い、勝つことだけでなく勝利までの過程を重視します。もちろん勝利は求めますが、その過程における計画力や分析力、突破力、コミュニケーション能力といったものを身につけることが大切です。
そして、もう一つ必要なのは協調性を学ぶこと。スポーツをしていれば、その周囲には様々な環境下にいる人間が集まります。その彼らが共通の理念を持ち、共通の目標に向かって競技に取り組むとなれば、当然、どこかで自分の意に沿わないことも出てくるはずです。そんなとき、彼らは自分だけが特別ではなく、お互いを認め合う関係性を築くことの大切さを学ぶことになります。お互いの能力差を感じることもあるでしょう。その差を認め合うことこそがスタートなんです。これらを若いうちからスポーツを通じて経験することは、これから社会に出て行く彼らのためにきっと役立つことでしょう。
改めて感じる、スポーツ大会開催への感謝
コロナ禍で実感したのは、スポーツの大会が開催されることは当たり前ではないということです。色々な大会が中止や延期を余儀なくされている昨今、大会が開催されることがアスリートにとって非常に励みになっていたのだと気づかされました。アスリート達も、大会が開催されることのありがたみをコロナ禍以前より何十倍にも感じていると思います。競技に打ち込む者にとっては大会があるからこそ、そこを目標にして練習やトレーニングに取り組むことができます。そして、その取り組みが選手の能力向上に繋がるのはもちろん、結果として競技の発展にも繋がっていくことでしょう。
愛知県は産業界の基盤が強く、メジャーなスポーツからマイナースポーツまで、多種多様なスポーツが盛んですね。2026年には愛知県で第20回アジア競技大会が行われますが、こうした大きな大会の開催は、選手にとっても競技自体にとっても歓迎されるべきことですので、ぜひ成功してほしいと思います。私個人としてはその豊かな経済力を活かして、ぜひ世界陸上も愛知に誘致してほしいですね(笑)。
はらすすむ。1967年生まれ。広島県出身。青山学院大学 地球社会共生学部教授、陸上競技部 長距離ブロック(駅伝部)監督。中京大学3年生時には日本学生陸上選手権5000メートルで3位入賞。卒業後は中国電力の陸上競技部第 1期生となり、引退後は「伝説の営業マン」として活躍。2004年、低迷していた青山学院大学の長距離ブロック監督に就任。2009年に同部を33年ぶりの箱根駅伝出場へと導き、2020年には大会新記録で5度目の総合優勝を果たす。
毎月第4土曜日24:55より放送
※変更の場合あり
キャッチフレーズは「スポーツは人生だ」。様々なテーマに対し、ドキュメントや対談を通じて原監督が多角的に掘り下げていく。ナレーションは愛知県出身の人気声優・石田彰さんが務める。
www.ctv.co.jp/haraspo
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2025 / vol.47
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