いくつもの目標を追いかける
シェーファー アヴィ幸樹が身につけた“貪欲さ”
「僕は代表を通じて上手くなった」
東京2020から3カ月。トム・ホーバス新ヘッドコーチ(HC)のもと、新生バスケットボール男子日本代表が始動した。
11月15日には、2023年のFIBAバスケットボール・ワールドカップ、そして2024年のパリオリンピックに向けた新チームの初陣となるワールドカップアジア地区予選に向けた候補メンバーが発表された。2019年のワールドカップ、今夏の東京2020で日の丸を背負ったシェーファー アヴィ幸樹選手も、そのメンバーに名を連ねる。「僕が本格的にバスケをやるようになったのは、アンダーカテゴリーの日本代表に呼んでもらったことがきっかけですし、僕は代表を経験できたおかげで上手くなれたと思っています。それくらい代表に選ばれるということは自分にとってすごく大きなこと。これから先も代表で結果を残すために成長していきたいですね」。そう代表チームへの想いを語るシェーファー選手に、具体的な目標を尋ねると、「どこまで現役を続けられるかわからないし、どんどん新しい選手も出てくる。いつまで僕が日本代表のビッグマンの座を保てるかどうかわからないですけど、常に次のオリンピック、次のワールドカップを自分の中での大きな目標として動いていきたいと思っています」と語ってくれた。
高校2年生の秋から本格的にバスケットボールを始めたシェーファー選手は、わずか7年という驚異のスピードでオリンピックの舞台に駆け上がった。ジョージア工科大学を休学して、Bリーグに戦いの場を移すという決断を含め、ここ数年自国開催のオリンピックにすべてをかけて挑んできたシェーファー選手。大会が終了した後に“燃え尽き症候群”になるのではという心配が少なからずあったという。「でも終わってみると、もっと上手くなりたい、こういう選手になりたいと感じる日々が待っていました」。
「世界の舞台で戦って、どれくらい世界との差があるのか、何が通用して、何が足りないのか感じることができました。自分の武器であるディフェンスでハードにやるということに関しては、通用する部分がたくさんありました。3連敗という結果だったので満足はしていませんが、なにより2年前のワールドカップと違い、しっかり戦力として出場できたというのは、自分にとっての大きな財産になりました」。
日本代表チームを強くするためにも「ベスト5」を狙う
つかの間のオフシーズンを経て迎えたBリーグ2021-22シーズン。シェーファー選手は、レギュラーシーズンを通じて“最も優れた5人の選手”に送られる「ベスト5」という高い目標を掲げた。「日本人ビッグマンではまだ誰もベスト5には入っていないので、今年自分が勝ち取りたいと思っています。チームでは優勝。個人でも結果を出す欲張りなシーズンにしたいです」と、自らを鼓舞するように語る。
簡単に達成できる目標ではない。Bリーグでは、ベスト5に選出されるビッグマンは外国籍選手や帰化選手が占めてきた。しかも、Bリーグ開幕以降の6シーズンで外国籍選手のレベルは年々明らかに上がっている。今シーズンもここまで、高さと強さを兼備する外国籍ビッグマンの活躍が目立つが、だからといってこの状況を打破しない限りは、2年後のワールドカップ、3年後のパリオリンピックで世界の強豪国から悲願の「1勝」を上げることはできない。「ベスト5」とは、“日本人No.1ビッグマン”としてその壁を乗り越えるという強い覚悟の表明でもある。「レベルの高い外国籍選手とマッチアップできるのは自分にとってはプラス。自分の武器であるフィジカルをもっともっと強化して、ディフェンスをより良くして、僕のところでは負けないっていうぐらいの選手にならないといけないと思っています。リバウンドでは、平均7本をクリアしたいですね。自分は腕が長くないし、ジャンプ力も世界的に見ればそんなにはない。なので、ただリバウンドを取りに行っただけでは取れないんです。ポジション取りや予測など、もっと工夫しなければいけないので、そこは勉強しなくてはと思っています。でも、自信はあります」。大きな目標を掲げるシェーファー選手は、決意を秘めた様子で語った。
ⒸSeaHorses MIKAWA co.,LTD.
オリンピックを経て芽生えたリーダーシップ
オリンピアンとなったシェーファー選手。その言葉の端々からは、メンタル面での変化が感じられる。昨シーズンのシーホース三河では一番年下、東京2020の代表チームでは2番目に若かったということもあり、自身も「僕の性格的なところもあって、特にオフェンス面では(八村)塁や(渡邊)雄太さんがいる中で、遠慮していた部分がありました」と明かす。
今季のシーホース三河でも、“若手”であることに変わりはないが、「今シーズンは長年中心だった選手がチームを離れたので、僕が中心になって指示を出すくらいの気持ちでやりたいなと思っています。チームでは2番目に若い若造が何を言っているんだって思われるかもしれないですけど、代表として経験してきたすべてを還元して引っ張っていく存在になりたいです」と、リーダーシップを今シーズンのテーマのひとつに挙げている。
今回のホーバスHC率いる代表チームでも、西田優大選手(シーホース三河)と岡田侑大選手(信州ブレイブウォリアーズ)に次いで3番目に若いシェーファー選手だが、海外組不在の中でワールドカップとオリンピックの両方を経験しているのは、比江島慎選手(宇都宮ブレックス)と自身の2人のみ。加えてシェーファー選手は、U19ワールドカップにも出場しており、国際経験という点ではメンバーの中でもトップレベルだ。
「ワールドカップ予選は(NBAシーズン中の)塁や雄太さんが出られないので、日本にいる選手の中で自分が中心になって頑張れたらと思っています。しっかりと日本を引っ張っていける存在になりたいです」と意気込む。
東京2020で女子代表を銀メダルへと導いたホーバスHC。その戦いを見て感動したというシェーファー選手は、「自分も歴史的な快挙を成し遂げたいと、改めて思いました」と話す。自信、悔しさ、憧れ。この夏、様々な成長材料を得た日本No.1ビッグマンは、ここからどんな成長曲線を描いていくのか。そしてその軌跡はそのまま、シーホース三河、日本バスケの成長にも重なっていく。
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シェーファー アヴィこうき。1998年生まれ。兵庫県出身。アメリカ人の父と日本人の母の間に生まれる。ポジションはパワーフォワード/センター。高校2年生で本格的にバスケットボールを始め、わずか1年でU18トップエンデバーに招集される。2017年、八村塁選手らと共にU19ワールドカップに出場し、歴代最高の10位に。高校卒業後はアメリカに渡り、NCAA1部のジョージア工科大学へ入学。2018年に大学を休学し、アルバルク東京でプレー。2019年に滋賀レイクスターズに期限付き移籍。同年のワールドカップに八村選手と共に最年少で出場。2020年にシーホース三河に加入し、主軸として活躍する。東京2020は全3試合に出場した。
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