未来の“剣士たち”に期待を寄せて
加納虹輝が伝えるフェンシングの魅力

©日本フェンシング協会:Augusto Bizzi/FIE
フェンシングの楽しさや面白さをもっと伝えたい
東京2020で確実に知名度を上げた日本のフェンシング。男子エペ団体が金メダルに輝いた瞬間は、多くの人々が歓喜に湧いた。彼らの勇姿に憧れ、未来の剣士を目指してフェンシングに興味を持つ子どもたちも増えているという。
ますます盛り上がりを見せるフェンシングだが、「東京2020を経て、フェンシングを知らない人は少なくなってきていますが、体験したことのある人はまだ多くないことが課題です」と金メダル獲得の立役者のひとり、加納虹輝選手は話す。加納選手自身も小学生の頃にテレビで北京オリンピックのフェンシングを観たことからその魅力にはまり、地元・愛知のクラブチームに通い始めたというが、「フェンシングを体験できるスクールやクラブは、東京などの都市部には割とありますが、全国的にはまだまだ少ないです。もっと気軽に体験できる場を増やして、フェンシングの楽しさや面白さを伝えたいと思っています」。

©日本フェンシング協会:Augusto Bizzi/FIE
ルールや礼節、演出など見どころが満載
中世ヨーロッパの騎士達の剣技からスポーツへと発展したフェンシング。一見、ルールが難しそうに見えるが、「実はとてもシンプル。特にエペは単純明快で、先に突いたほうにポイントが入り、両者が同時に突いた場合は、両者のポイントになります。有効面も全身なので、観る側もわかりやすくて楽しいと思います」と加納選手は教えてくれた。その一方で、「シンプルだからこそ、奥深い。選手たちは常に相手の出方を見ながらディフェンスを行い、どこを攻めるか駆け引きをしています。その熱い攻防にも注目していただきたいですね」。
また、選手によって構え方や動き方が異なるのも見どころのひとつだといい、「私はオーソドックスで割とスピーディなスタイルですが、中にはトリッキーな構えの選手もいて、様々。階級がないので、私のような小柄な選手もいれば、2m近い選手もいて、それぞれ自分に合ったスタイルで勝負をしています。そういう多様性のあるところも観ていて楽しめる部分だと思います」。
フェンシングは紳士のスポーツであることもぜひ知ってほしいという加納選手。「格闘技の一種なので、どうしても試合中は戦いの雰囲気になりますが、試合は礼に始まり礼に終わり、日本の剣道や柔道のように礼儀がしっかりとしたスポーツです。今は新型コロナウイルス感染拡大の影響で省略されていますが、最後はお互いに握手もします。こうした紳士的な様子も、ぜひ見てほしいですね」。
さらに近年は、試合の演出面でも注目を浴びている。東京2020では、まるでコンサートが行われるような立派な舞台に、劇場的な空間を創出。大きなビジョンには選手の顔や競技中の心拍数が映し出され、LEDライトを使用するなど、さながら一連のショーを観ているような演出が行われた。今後も、こうした観客と選手が一体になって盛り上がるような演出に期待がかかるが、「私も気分が高揚しますね。『あんなすごい舞台でフェンシングをやってみたい!』と思ってくれる子どもたちが増えるといいなと思います」。

©日本フェンシング協会:Augusto Bizzi/FIE
未来の選手育成にも貢献していきたい
今後、日本のフェンシングが国際舞台で勝ち続けるには、「若手の育成が最も大切」だと断言する加納選手。「フランスを始めとする強豪国では、若手の育成に力を入れていて、次から次に強い選手が誕生していますが、日本ではまだそういう流れができていません。そのためには、若手を育てる環境づくりが重要です。まずは子どもたちの体験の場をもっと多く設けて、競技人口を増やすことが大切だと思っています」。
「フェンシングをしていてストレスを感じたことは一度もないんです。むしろ、ほかのことでストレスが溜まった時にフェンシングをするとすっきりするくらい(笑)」と笑顔を見せる加納選手から、本当にフェンシングが好きだという思いの強さが感じられる。特に自身のボルテージが一番高まる瞬間は、負けているところから点を重ねていくところだという。「『ここで勝ったら自分がヒーローだ!』と思っていつも戦っています。こういう瞬間を、ぜひフェンシングに興味を持っている未来の選手たちにも多く味わってもらいたいですね」。将来は選手の育成に関わりたいという夢も教えてくれた。「今も、子どもたちに教える機会がありますし、これからも普及活動に協力していきたいと思っています」。加納選手のように、世界を舞台に活躍できる選手が次々と登場し、さらに日本のフェンシングを盛り上げてくれることを期待したい。

加納虹輝
かのう こうき 1997年生まれ。愛知県あま市出身。2008年に行われた北京オリンピックのフェンシングをテレビ観戦したことをきっかけに、小学6年生から地元のクラブでフルーレを習い始める。山口県立岩国工業高等学校時代に出場したエペの大会での優勝を機に、エペに転向。2018年アジア競技大会フェンシング競技エペ団体で優勝、個人でも3位を獲得。2019年ワールドカップカナダ大会個人で優勝。東京2020フェンシング男子エペ団体では、全試合でアンカーを務め、金メダルを獲得。第74回全日本選手権個人戦では初優勝を飾る。日本航空所属。
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