愛知県振興部スポーツ振興課
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藤井淳志の
アツいぜ!ドラゴンズ

引退して思う、プロ野球選手の素晴らしさ

 昨年限りで中日ドラゴンズを退団し、プロ野球選手を引退したので、今の生活はこれまでからガラッと180度変わりました。
 現場を離れてつくづく思うのは、プロ野球選手はいかに恵まれていたかということです。大袈裟ではなく、プロ野球はヒットを1本打てるかどうかで、今後の人生が大きく変わる勝負の世界。ヒリヒリとするような緊張感は、一般の社会ではなかなか味わえるものではありません。ある意味とても厳しい世界ですが、その分やりがいはあります。結果さえ残すことができたら、ステータスとお金を手にすることができますからね。叶うなら、もう一度プロ野球選手をやり直したいと思います。
 現在は野球解説やスポーツジムの経営など、様々な仕事をさせてもらっています。解説をする時に心掛けているのは、私の個性を出すこと。ただ試合をなぞるだけの話をしても面白くないので、私にしか話せないような話をして視聴者のみなさんに楽しんでもらいたいと思っています。先日もある後輩から、「野球中継の解説で藤井さんがいいことを言っていたので参考にするようにと妻から言われました」とお礼の電話がありました。その反対に、「解説であまり厳しいことを言わないでください」と電話口でお願いしてくる選手もいたほどです(笑)。

数年後、ドラゴンズは間違いなく強くなる

 解説者という立場から観た今シーズンのドラゴンズは、成績こそあまりよくありませんが、先を見据えて野球をやっているという印象です。我慢して若い選手を起用し続けたおかげで、将来を託せる若手選手が投打に台頭してきました。そういう意味では、チームは良い方向に進んでいると思います。
 私が個人的に期待していたのは石川昂弥選手です。「今シーズンは彼のためのもの」と言ってもいいほど試合で使ってもらい、徐々に結果がついてきたところだったので、5月27日のオリックス・バッファローズ戦でのケガによる戦線離脱は大変残念でした。私は「ケガさえなければ、もっと活躍できたのに……」という選手を山ほど見てきました。石川選手にはそうならないよう、ケガをしないことがプロ野球選手にとってどれだけ大切なことかを知ってほしいと思います。
 また、今シーズン途中に根尾昂選手が打者から投手へ転向して、いろいろと話題になりました。根尾選手の意思を尊重して、立浪和義監督が決断したそうです。私がさすがだなと感じているのは、立浪監督の起用法。根尾選手を読売ジャイアンツの岡本和真選手など、各チームの主力打者とあえて対戦させている点です。良いバッターに全力で勝負を挑むことによって、根尾選手自身が急速に成長していると観ていて感じます。先発かリリーフか、今後どこで起用されるかわかりませんが、どちらにしても来シーズンはチームにとってかなりの戦力になるのではないでしょうか。

引退した選手が、野球で食べていく道を残したい

 解説の仕事のほかに力を入れているのが、スポーツジムの経営です。地元の愛知県から「世界で活躍するアスリートを輩出したい」という目標と、「子どものスポーツ離れを改善したい」という思いから、名古屋市天白区に「ATSH SPORTS」を設立しました。
 私が「ATSH SPORTS」を始めた理由は、大きく2つあります。一つは野球の基礎技術の底上げ。実はプロ野球選手の中にも、私から言わせてもらうと(身体能力だけでプレーしており)、野球の基礎技術がきちんと身に付いていない選手がいます。そういう選手は総じて1軍で活躍することができません。「正しい技術があれば、もっとすごい選手になっていたかもしれない」と歯痒い思いをしたこともありました。日本の野球全体の底上げにも繋がりますので、野球の基礎技術がしっかりした選手を育てたいと思っています。
 もう一つは、野球選手のセカンドキャリア。私と同じタイミングで現役を引退した選手の中で、メディアに出ているのは私しかいません。同じ日に引退試合をした山井大介さんはドラゴンズの2軍コーチに就任しましたが、多くの元選手は野球とは全く違う仕事に就かざるを得ないのが現状です。せっかくプロにまで上り詰めたのに、引退後にそのキャリアを生かせないのはもったいないと思ったので、このジムのコーチングスタッフには全てプロ野球のOBを採用しています。選手としては活躍できなかったとしても、コーチとしての才能を開花させてくれたらそれほど嬉しいことはありません。経営を軌道に乗せ、さらに拡大し、多くの選手のセカンドキャリアの受け皿にしていきたいと考えています。
 いつか、「ATSH SPORTS」で野球の基礎技術を学んだ選手がプロの球団からドラフト指名される日が来ることを夢見て、努力を続けていくつもりです。ぜひ、この活動を応援してください。
 
 

PROFILE
藤井淳志
ATSUSHI FUJII
ふじい あつし。1981年生まれ。愛知県豊橋市出身。愛知県立豊橋東高等学校、筑波大学、NTT西日本を経て、2005年のドラフト3巡目で中日ドラゴンズに入団。2006年の開幕戦にスタメンで出場するなど、走攻守三拍子揃った外野手としてドラゴンズの黄金期を支えた。現在は野球解説、スポーツジム経営など多方面で活躍中。

Twitter @atsushi_f_0520
Instagram @atsushi.fj4

Information
アスリート輩出×地域貢献
『ATSH SPORTS』

藤井さん主催のスポーツ教室。地元愛知県から世界で活躍するアスリートを輩出することなどを目標に、子どもたちの育成を行っている。
HP atsh4.com

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2023 / AUTUMN vol.38

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