愛知が生んだ世界の至宝
石川祐希
バレーボール男子日本代表は、今年の6月から7月にかけて開催された「バレーボールネーションズリーグ2023」で大会初となる銅メダルを獲得。9月から10月に開催された「ワールドカップバレー2023」では、自力でパリ五輪の出場権を掴み取った。そんな躍進の続く日本バレー界を牽引するキャプテンの石川祐希。地元愛知から世界を代表するスーパースターへ、着実に階段を上っている。
五輪出場権をかけた試合で
チームに流れを呼び込む大活躍
やはり頼りになるのはこの男—チームメイトもスタッフも、そして会場を埋め尽くす観客も、国立代々木競技場第一体育館にいたすべての人間がそう思ったに違いない。パリ五輪への出場権をかけた「ワールドカップバレー2023」の第6戦。FIVB世界ランキング4位(当時)だった日本代表は、同7位のスロベニアにセットカウント3-0のストレートで勝利すれば五輪出場権を獲得することができたが、序盤に5点のリードを許す苦しい展開に。そこでビッグプレーを見せたのがキャプテンの石川祐希だ。相手のスパイクをドンピシャのタイミングでシャットアウト。完璧なブロックポイントだった。のちに本人が「チームを救った会心の1本」と振り返ったプレーで、スロベニアに傾きかけていた流れを日本側へと引き寄せることに成功した。
このプレーで波に乗った石川はエースとしての本領を発揮。次々とスパイクを決めて、得点を重ねた。石川の中央大学の2学年先輩で、ジェイテクトSTINGS(刈谷市)所属のセッター・関田誠大も「彼ならなんとかしてくれる」との思いで石川にトスを集めたという。
そんな石川の活躍もあって、日本はスロベニアにストレートで勝利。2大会連続の五輪出場権を獲得した。前回の東京五輪は開催国枠での出場となるため、自らの手で五輪切符を掴んだのは2008年の北京五輪以来のこととなる。実に16年振りの快挙となった。
結果的に最終戦を待たずにパリ五輪の出場権を獲得することができた日本だが、その戦いは決して順風満帆にはいかなかった。初戦のフィンランド戦は簡単に2セットを先取しながら、逆に2セットを奪い返されフルセットにもつれ込む展開に。最後はなんとか相手を振り切ることができたが、不安の残る大苦戦のスタートとなった。その不安は続くエジプト戦で的中してしまう。フィンランド戦と同様に2セットを先取しながら、残る3セットを立て続けに奪われ、まさかの逆転負けを喫したのだ。 先のネーションズリーグで3位になるなど「史上最強」の呼び声が高いチームだっただけに、キャプテンを務める石川の心中は穏やかではなかっただろう。現にフィンランド戦の後に「自分自身に失望している」と話していたほど。エジプト戦の敗戦ショックは大きかったはずだ。
それでも最後はコンディションを立て直し、チームを勝利へ導く大車輪の活躍を見せたのはさすがの一言。大学在学中から単身イタリアへ渡り、世界最高峰と言われるセリエAで揉まれてきただけのことはある。
星城高等学校時代はリーダーとして
数々の栄光を打ち立てる
石川祐希は岡崎市の出身。小学4年生でバレーボールを始めるとすぐに力を伸ばし、星城高等学校時代に大きく花を開かせた。高校総体、国体、春高バレーの高校3大タイトルを2年連続で独占し、計6冠を達成。公式戦99連勝という、とんでもない成績を残した。まさに後にも先にもない伝説のチームである。2年生からエースとして活躍していた石川は、3年生ではキャプテンも務めるなど、まさにチームの大黒柱のような存在。竹内裕幸監督は、石川をキャプテンにした理由について、「協調性を大切にし、みんなの意見を取り入れようとするだけでなく、リーダーの資質を身につけてほしかった。もっと自分を出して、チームを引っ張っていってほしいと思っていました」と話している。高校卒業から10年。恩師の教えは今もしっかりと息づいているようだ。
「石川祐希は『唯一の光明』と伊メディアが評価」「石川祐希チーム最多13得点も報われず」…。ワールドカップの激闘の余韻も冷めないうちに、海の向こうのイタリアから石川に関連するニュースが飛び込んでくる。愛知から大きく羽ばたき世界のスター選手の仲間入りを果たした石川祐希。次はどんな活躍を見せてくれるのか楽しみは尽きない。
PROFILE
石川祐希
いしかわ ゆうき。1995年12月生まれ。愛知県岡崎市出身。小学4年生でバレーボールを始める。星城高等学校時代には前人未到の6冠達成に貢献。中央大学1年生だった2014年に日本代表入り。大学に籍を置いたままイタリア・セリエAへ短期留学した。大学卒業後はプロとなり、イタリアへ。2020年シーズンからはアリアンツ・ミラノでプレーしている。
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