メ~テレ 横井ゆは菜のフィギュアスケート最前線 第2回
みなとアクルス杯を観戦してきました!
aispo!をご覧のみなさんこんにちは!元フィギュアスケーターの横井ゆは菜です。連載第2回目は、7月に邦和みなとスポーツ&カルチャーで行われた「第14回名古屋市スケート競技会 みなとアクルス杯」の模様をお届けします。フィギュアスケートシーズンの到来を告げるみなとアクルス杯。私が注目する選手たちのプログラムについて解説していきます。それにしても、私が小さい頃からずっと通い続けてきた邦和みなとスポーツ&カルチャーで行われる大会をレポートできるなんて、なんて巡り合わせなのでしょう!
ジュニアの注目選手たちの新プログラム!
みなとアクルス杯は出場する選手たちにとって、今シーズンの新しいプログラムをお客さんの前で初披露する場となります。私もこの日を指折り楽しみにしていました。
まずはジュニア選手権女子より、今年2月の全国中学校スケート大会で初優勝を飾った岡田芽依選手(西尾市立吉良中学校所属)のSP(ショートプログラム)の新プログラム『NINE』をご紹介します。『NINE』は、映画監督と彼を取り巻く9人の女性が織りなす物語だそうで、芽依ちゃんは「タイプの違う9人の女性を演じ分けたい」と話していました。昨シーズンのキュートで可愛らしい曲からガラッと大人の雰囲気に変わって、まずはそこにグッときました。というのも私、イメチェンが大好物なんです(笑)。「こんな一面も見せてくれるんだ」って思わせてくれる選手にすごく惹かれちゃいます。だから、今シーズンの芽依ちゃんは昨シーズンまでとのギャップのある「艶やかさを感じる身のこなし」に注目してほしい! また芽依ちゃんはジャンプがとても上手な選手です。コンパクトで回転が速い。3回転-3回転は本来難しいジャンプなんですけど、クルクルっと軽々と飛んでいるように見えてしまう。そこも彼女の強みだなと思います。
続いては、同じく全国中学校スケート大会で2位となった和田薫子選手(名古屋市立前津中学校所属)。薫子ちゃんのFS(フリースケーティング)の新プログラム『Titanic』、私大好きです!冒頭のダブルアクセルに行く前のクロススケーティングはスピードがあって、ダブルアクセルも大きさを感じました。しかも着氷がピッタリと音に合っていてすごく気持ちよかったです。私、「音ハメダブルアクセル」が大好物なので(笑)。ループも高さがあって、すごくバネを感じましたね。薫子ちゃん本人も「ジャンプが良くなりました」と手応えを感じている様子でした。その自信をジュニアグランプリシリーズに持っていってほしいなと思いました。
あと、薫子ちゃんのストロングポイントはなんと言ってもスピンの上手さ。キャメルスピンのドーナツ姿勢の時に回転速度が落ちないし、逆回転コンビネーションスピンも見どころですね。逆回転はめちゃくちゃ難しくて、あまりやっている選手がいないので、プログラムの個性にもなっていますよね。
櫛田育良選手(中京大学附属中京高等学校所属)は、昨シーズンの世界ジュニア選手権で5位になるなど成長著しい選手。育良ちゃんは個性的なプログラムを自分の色で演じられる、ずば抜けた表現力の持ち主です。FSの『The Little Prince』は昨シーズンから持ち越しですが、最初のポーズで視線を変えるところがすごく好き。一瞬で彼女の世界に引き込まれます。曲の盛り上がりに合わせて幸福感の伝わってくるコレオシークエンス(ジャンプやスピン、ステップなどを最低2種類含んだ一連の演技)やツイズル(片足ターン)から入るレイバックスピン(上体を後ろに反らして行うスピン)など、細部に至るまで曲が表現されている。新しいSPの『SWAY』は手でカウントを取るところがあるんですけど、そこが「いくらワールドキター!」って感じで好きですね。育良ちゃん本人も一番気に入っていると言っていました。
テーマは社交ダンスとのことですが、フィギュアスケートとは違う社交ダンスの独特の鋭いキレの良さがしっかりと表現されていて、さすがと感心しました。ジュニアGPシリーズに向けて、さらにブラッシュアップされた演技が見られるのを期待しています。あとは、育良ちゃんにしか着こなせないんじゃないかと思うほど素敵な衣装にも注目してください!
ジュニアのトリを飾るのは、上薗恋奈選手(北名古屋市立西春中学校所属)です。今シーズンはSP『Voilà』、FS『鐘・CHRONOS』と両方とも新プログラムに挑戦しています。私は恋奈ちゃんの視線にすごく惹かれるんですよね。伏し目がちだったり、遠くを見ている感じだったりするところが好きで、それが今回のSPには随所に見られました。スピン中にジャンプをするのも、高レベルの評価基準を満たす条件の一つなのですが、シットポジション(片足を前に出してしゃがんだ形)でジャンプする選手がほとんどの中、恋奈ちゃんはキャメルポジション(上体を前傾させ軸足を伸ばしたまま片足を水平まで上げる形)でジャンプをしているんです。そんな選手を初めて見ました。とても面白い!
フィギュアスケートは演技の流れが大事だと言われているのですが、レイバックスピンからニースライドで出て、膝をついたままの姿勢でステップシークエンスの踊りを始める、この一連の流れが見事でたまらないですね。最後も長めのニースライドでアクセントになっているのも、私的「いいね!」ポイントです。恋奈ちゃんのコーチである樋口美穂子先生の振り付けは特徴的な動きが入ることが多いのですが、今回のFSにも振り子のような印象的な動きが入っていて、そこもすごく良かったです。あとは、後半の怒涛の音ハメジャンプ! 全てのジャンプが音にピッタリとはまっていて、「そこまで合わせますか、恋奈さん」とため息が出ました。またインタビューをして思ったのが、ダークなメイクが妖艶で、「これで中学2年生は嘘でしょ!」って(笑)。『クレヨンしんちゃん』が大好きというギャップにも萌えます。
シニアの高レベルな演技に期待
最後に紹介するのは、選手権女子部門より優勝を飾った松生理乃選手(中京大学所属)。理乃ちゃんはSPもFSも新プログラムに挑戦。「SPの『Ain’t We Got Fun』は昨シーズンと真逆な明るい曲調で、どちらかというと不得意な分野。でも自分が楽しんで滑れば見ている人も楽しいと思ってもらえると思うので、楽しむことを意識しています」と話してくれました。FSの『Lux Aeterna』はローリー•ニコルさんの振り付けです。「曲にあまり変化がないので、どうしたら観ている人を飽きさせないかを考えています。上の方を見る振り付けは“教会で十字架に向かって対話しているようなイメージで”など、それぞれの動きのイメージについて細かく指導をいただいているので、自分なりに曲を解釈して表現するようにしています」とのことです。
今シーズンはGPシリーズのカナダ大会とフィンランド大会に出場することが決まっている理乃ちゃん。「選ばれた時にはすごく嬉しくて。このような素晴らしい機会をいただいたからには最高の演技を見せられるよう、自分を追い込んでチャンスをものにできるよう頑張りたいです!」と力強い決意を聞かせてくれました。
まだシーズンが始まったばかりなので、どの選手もいろいろと試している段階です。ここからどこまでブラッシュアップされていくのか本当に楽しみですね!
次回はGPシリーズの見どころをお届けする予定です。お楽しみに!
第14回名古屋市スケート競技会 みなとアクルス杯 結果
●ジュニア選手権女子
1位 上薗恋奈(北名古屋市立西春中学校、トータル196.24ポイント)
2位 櫛田育良(中京大学附属中京高等学校、トータル183.81ポイント)
3位 和田薫子(名古屋市立前津中学校、トータル183.58ポイント)
4位 岡田芽依(西尾市立吉良中学校、トータル177.66ポイント)
●選手権女子
1位 松生理乃(中京大学、トータル176.73ポイント)
2位 河辺愛菜(中京大学、トータル153.30ポイント)
3位 森実愛(名城大学、トータル142.59ポイント)
PROFILE
よこいゆはな。2000年5月生まれ。愛知県名古屋市出身。2013年のガルデナスプリング杯ノービスクラスで2位となるなど、ジュニアの頃から注目を集める。初の国際大会出場となる2018年の世界ジュニア選手権では6位入賞。ジュニアでキャリアを重ね、2021年よりシニアに転向。2022年には目標の一つであった四大陸選手権に出場して7位に入賞。中京大学卒業と共に引退。現在はメ~テレのイベントコンテンツ部でフィギュアスケートをはじめとした様々な事業に挑戦中。
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