背番号1の系譜を受け継ぐグランパスの新守護神
シュミット ダニエル

2010年以来のJリーグ制覇を目指す名古屋グランパスに心強い新戦力が加わった。
元日本代表のゴールキーパー、シュミット ダニエル選手だ。
楢﨑正剛さんやミッチェル・ランゲラック選手らクラブのレジェンドが背負ってきた背番号1を受け継ぎ、新守護神と呼ばれるに相応しい活躍が期待される。
5年ぶりに覚悟のJリーグ復帰
グランパスの伝統を背負う
昨夏からクラブが抱えていた“ネクスト・ミッチ”の答えはほぼ満点回答が出たと言っていいだろう。国内外を問わずランゲラックレベルのゴールキーパー(GK)を見いだすのはかなりの難問であった中、名古屋グランパスの出した結論は、ベルギーでプレーしていた元日本代表、シュミット ダニエル選手の獲得だった。
2026年に北中米の3カ国で開催されるワールドカップの出場を目指すシュミット選手の「とにかく試合に出られる環境を」という思惑とも合致してのWin‐Winな移籍となった。入団会見の場で新守護神は「もちろんチームでの競争を勝ち抜いて試合に出て、良いパフォーマンスを出せば、Jリーガーでも日本代表に食い込める」と高いモチベーションを見せている。
アメリカ生まれのシュミット選手だが育ちは日本で、宮城県の東北学院高等学校から中央大学へ進み、べガルタ仙台、ロアッソ熊本、松本山雅FCを経て2019年からはベルギーのシント=トロイデンVVでプレー。昨シーズンはステップアップのためKAAヘントへ移籍したものの出場機会に恵まれなかった。
以前から尊敬してきた楢﨑正剛さんが今季からグランパスのGKコーチとなり、早くも師弟関係を築いている姿が始動後のトレーニングで見られている。「自分に足りないところを本当に補ってくれると思うし、選手目線でもすごく相談しやすい。プレーのことだけじゃなくて、例えばこのチームを背負うことの意味なども積極的に話して、自分に染み込ませていきたい」という言葉からは、単なる移籍ではなくJリーグのオリジナル10の伝統をも背負う覚悟が伝わってきた。
あらゆる資質を備えた
高スペックの大型GK
プレースタイルはまさに規格外。197㎝の長身ながらステップワークは軽やかで、サイズを活かして自分の身体を壁のごとく使うブロッキングや、長い手足を利したセービングの“射程距離”もワールドクラスだ。かつシュートへの反応も素早くポジショニングも的確で、1対1の場面などではシューターとの距離を素早く詰めてシュートコースを消すなど、とにかくゴールを守る能力に長けている。
入団会見の場では「セービングもそれなりにできると思うので」と控えめに話していたが、その能力を疑う余地はない。さらに、中学生時代は中盤の選手だった経験もあり、足元の技術も非常に高いのが彼のGKとしての大きな利点になっている。大学選抜でともにプレー経験のある和泉竜司選手は「しっかりパスをつなげるのでポゼッションにも加われるし、キックの飛距離もすごい。そこも今季はひとつの選択肢になる」と、シュミット選手の加入による攻撃面でのプラスアルファにも期待を寄せた。
沖縄キャンプ中に右膝を負傷し、長期離脱を余儀なくされた。残念ながら開幕からその勇姿を見ることはできない。ただし、長く続く戦いの中で、背番号1の系譜を受け継ぐシュミット選手の力が必要になる時が、必ずあるはずだ。シュミット選手にとってはJリーグ経験の中で初めてのビッグクラブ所属ということで、「僕にとってもかなり大きなチャレンジなので、そこに対するプレッシャーは正直ちょっと感じている」と武者震い。楢﨑さん、ランゲラック選手と受け継がれてきた背番号1の系譜に連なる部分でも重圧は感じているようで、神妙な面持ちでこうも語る。
「ランゲラック選手がこのチームに残した功績は間違いなく大きいし、彼がどれだけ大きな存在だったかというのは本当にいろいろなところから伝わってくるんですよ。そこを埋めるだけじゃなくて、そこを追い越すような活躍をするためには、やっぱりリーグ優勝はひとつの目標と個人的に思っています。
チームとしても当然そうだと思いますけど、個人的にはグランパスをリーグ優勝に導ければ、自分がこのチームに来た意味はあるのかなと思います。そこにふさわしい選手であることを証明できるように頑張りたい」。
前述のように多彩な能力を持つシュミット選手に、GKとして一番大切にしていることを聞くと、「一番良いのはやっぱり“チームを勝たせられるキーパー”で、特徴がなんであろうと最終的にそこが達成できてないと意味がない」との答えが返ってきた。実はこれ、まさしく現役当時の楢﨑さんが貫き通した信念でもある。昨今のGK市場では攻撃面への貢献度が過度にもてはやされる傾向もある中で、「チームを勝たせること」に重きを置いているところは、グランパスの伝統を受け継ぐ適任者だと言えるだろう。
夢の舞台で試合のピッチに立つために、33歳のベテランはその願いを現実に変えるために名古屋にやってきた。「楢﨑さん、ランゲラック選手が守ってきたゴールを継げれば、自分にとっても大きなプレッシャーになって成長していける」。これは自らに課した試練だとシュミット選手は言った。その野望は15年ぶりのリーグ優勝を本気で狙うクラブの野望とも重なり、化学反応を起こして大きな力となるに違いない。

PROFILE
シュミット ダニエル。1992年2月生まれ。アメリカ合衆国出身。小学2年生でサッカーを始め、中学3年生までは守備的ミッドフィールダーとしてプレーした。東北学院高等学校時代にGKへ転向。中央大学時代には川崎フロンターレの特別指定選手に登録されている。大学卒業後の2014年にベガルタ仙台に入団。同年、育成型期限付き移籍先のロアッソ熊本でJリーグデビューを果たしている。日本代表に初選出されたのは2018年。代表戦では14試合に出場している。ベルギーのクラブを経て、今シーズン名古屋グランパスへ加入。新守護神としての期待がかかる。
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