愛知県スポーツ局スポーツ振興課
JPEN
instagram facebook twitter youtube
menu
page top
Pick Up記事カテゴリー
2024/08/30 特集記事

名城大学女子駅伝部 密着レポートvol.1
強豪校を育て上げた米田勝朗監督の「見守りながら育てる力」

伝統行事の夏合宿で、大会に向けた体づくりを行う

 秋の全日本大学女子駅伝対校選手権大会7連覇、冬の全日本大学女子選抜駅伝競走(富士山女子駅伝)6連覇という記録を更新し続けている名城大学女子駅伝部は、これまでに数多くの名ランナーを輩出してきた女子長距離競技のパイオニアである。パリオリンピックに女子5000mの代表として出場した山本有真選手も、同部の卒業生の一人だ。
 名城大学女子駅伝部を立ち上げたのは、同大学教授の米田勝朗監督。1997年に1年生の2人から始まって以来、30年近くにわたってチームを牽引している。

米田勝朗監督。富士見高原合宿所にて。

 取材に訪れたのは、夏の盛りである8月初旬。名城大学女子駅伝部はこの時、長野県の富士見高原で合宿を行っていた。約2週間にわたるこの合宿は、同部が設立した頃からの伝統行事であり、毎年、大学の前期試験が終わる7月末から富士見高原で行われている。その目的について米田監督は、「秋から質の良い練習ができるように、夏のうちにじっくり走り込んで基礎体力をつけることが重要なのです。また、この合宿所には上り下りのあるクロスカントリーコースがあるので、全身の持久力を高めながらメリハリのある足の運びも鍛えられます」と語る。
 天候に恵まれたこの日は、朝食前の朝6時から陸上競技場で10~15kmほど走り込み、昼前には体幹などを鍛える筋力トレーニングを行い、午後4時頃からはクロスカントリーコースに赴いた。それ以外の時間は休息や個別のトレーニングを行っている。

陸上競技場での朝練の様子。

選手にとって何よりも大切なのは、充実したサポート体制

 米田監督が重んじているのが、選手の自主性だ。相談を受ければもちろんアドバイスはするが、積極的には介入せずに見守り続けるのだという。「駅伝競技は判断の連続で、勝負強さも試されます。ペースの調整や同じ区間を走る選手との駆け引きなど、走り始めたらすべてを一人で考え、判断していかなければいけません。その習慣を身につけるのが目的です」。
 選手の自主性に委ねているのは、彼女たちの卒業後の未来を見据えてでもある。「実力が伸びる選手は、トレーニングを自分で組み立てる力があります。選手たちにとって大学時代の4年間は通過点でしかありません。実業団に入り、世界を舞台に戦えるランナーになるためには、今がその力を育むチャンスなのです。時には歯がゆい思いをすることや、手を差し伸べたくなることもありますが、彼女たちのポテンシャルを信じて見守っています」。
 そのため、競技力向上と健康維持のためのサポート体制にも余念がない。米田監督は、その体制を30年弱かけて整えてきたという。「体力づくりを始める準備段階から、しっかり食べてしっかりトレーニングに打ち込むことで、ケガも防げます。大会で起用したいと思っていた選手が直前になってぐっと調子が上がってくるのも、この体制あってこそです。アスリートにとって、環境が充実していることは何よりも重要なのです」。
 普段の食事は名古屋学芸大学の管理栄養学部の学生が交代で担うほか、合宿や大会にも帯同してサポートしている。また、弘前大学医学部の医師がチームドクターとして定期的に訪れ、フィジカルチェックも行っているそうだ。米田監督は、「チームスポーツである駅伝は、サポートしてくださる方々と一体となって取り組むことで、さらなるレベルアップが図れます」と、体制を整えることの重要性を教えてくれた。

学生が調理を行う様子。

理想的な駅伝のために、大会直前まで編成を練る

 名城大学女子駅伝部は今年、8連覇を賭けて10月27日(日)に宮城県仙台市で開催される「第42回全日本大学女子駅伝対校選手権大会」に臨む。周りからは記録更新への期待がかかるが、米田監督は記録にこだわってはいない。「学生スポーツですから、連覇といってもメンバーは毎年入れ替わります。それよりも大切なのは、このメンバーで戦う一度きりの大会を充実させることです」。記録のために走るよりも、チームの伝統や空気を次のメンバーにつなげていくことで、同部はその力を積み上げてきたのだろう。
 大会に登録できるメンバーは10名まで。10月上旬に登録選手が決定し、最終的な走者6名は大会前日に決まる。米田監督の中ではすでに、大会出場の候補選定と編成プランの策定が始まっている。「駅伝は大会ごと、走る区間ごとによって特徴があります。選手たちの持ち味を生かして一番速いタイムでゴールするには、どの順番で並べるべきか。この合宿でも選手たちの様子を見ながら、編成案を練り続けているところです」。
 また、勝負のポイントとなる区間は経験値の高い上級生を、つなぎとなる区間には勢いが盛んな下級生を起用するのが理想的な駅伝だと米田監督は考えている。「この7年間は、事前にイメージしていたとおりの駅伝ができています」と語るように、全日本大学女子駅伝対校選手権大会に向けても視界良好な様子だ。

 次回のレポートでは、駅伝シーズンに向けた選手たちの意気込みをお届けする。

昨年の全日本大学女子駅伝対校選手権大会で7連覇を飾った名城大学女子駅伝部。

PROFILE
米田 勝朗
よねだ かつろう。1968年生まれ。宮崎県出身。日本体育大学卒業後、同大大学院体育学研究科修士課程を修了。1995年に名城大学へ着任し、1997年に女子駅伝部を設立。法学部教授として体育科教育学・運動方法学(陸上競技)の研究と指導を行いながら、女子駅伝部を強豪チームに育て上げた。


シェア:
twitter
facebook

aispo!マガジン最新号

2024 / 10周年特別号

PickUp記事